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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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70話 吉江の顛末

「だから、なにかしてくれって、いう事じゃなく、私たちも同じ気持ち。そうであって、欲しくないと話しているの。貴方が疑問に思っているから、私たちが知っている事はすべて話そうと、思っているだけなの」



【でね。もうひとつ、スタッフの吉江さんが】


「暴行にあった時の話を、蒲から聞いている?」

「翌日、警察に事情聴取されたけれど、あの時はよく覚えていなくて…」

「いつも男ばかりの吉江さんの飲み会に、夏梅を連れて行き、鍵をかければ夏梅に、吉江さんの気持ちを、わからせることが出来るって言ったのは蒲なのよ」

「そんな…。アルコールが入った男ばかりの所に夏梅を連れて行ったら!」

「そうよね」

「吉江さんは、あの事件で妊娠したの。蒲に、言われた事を録音していたわけでもないし、蒲に勧められてお尻が半分でたスカートを履いていた事は、誰も証明できない。さらに、夏梅がいたことで起きたという立証が出来ないでしょ。結局、男ばかりの飲み会に、お尻丸出しの格好でいたのは、吉江さん自身の意志だと言う事で、淫乱女のレッテルを貼られて、子供はおろしたの。

 世間で話題にもなったので、うちにもいられなくて、今はどうしているかわからないけど、死ぬまで立ち直る事は、ないでしょうね」



【天十郎は何も言い返さず、沈黙した】


「あの子の件は私たちも責任があると思っている。吉江さんがうちの美容室で働き出したのは離婚したてでね。どういう事情がわからないけれど、一度もご主人とSEXがなかったそうで、別れたご主人は他に沢山の女性がいたみたい。で、スレンダーな彼女は、自分には女性的な魅力がないと思い込んでいた。反面、男性の本能だけを求められる人を、男の人がチヤホヤしてくれる得な人生だと勘違いしていたの。

 私はね。二人共両極端な位置にいて、カードの裏表みたいだったから、ひょっとしたら、互いを知れば相乗効果があると思ったの。本当に私って傲慢よね。

 夏梅は、自分の環境を避けるように、自分の殻に逃げ込んでいたけど、吉江さんはSEXに過大な期待をしてSEX=愛される事と勘違いしていた。だから、勘違いの大きさがそのまま妬みの大きさになってしまった。蒲はその吉江さんの欲を見逃さなかったのよね。夏梅と吉江さんを会わせなければ良かったと今は思っているの」


 天十郎は不快感を露わにして聞いている。僕はその話を聞いて複雑だった。当然、予想通りの結果だったからだ。面白くもない結果だ。蒲が一方的に悪者になっているが、確かに蒲は、吉江という女を利用して夏梅と僕を潰そうとした。


 しかし吉江にも非がある。人の女を便所呼ばわりしただけでは、気が済まずに陥れようとしたから、その代償を払ったのだ。そういう結果になるとは思わなかったと、いう吉江にも言い分はあろう。



【恐ろしい事とは形が見えないものである】


 それも、自身で手を伸ばさなければ、その見えない恐ろしい事と出会う事もない。蒲と同じように彼女もまた、自分で引いた引き金で、負傷したのである。


 一番可哀そうなのは、何も知らずに、雄の本能を揺すぶられた、自制が効かないアルコール漬けの男達である。多分、状況がつかめないまま、悶々とこれからの一生を過ごすのであろう。愉快ではない。いたたまれない。それぞれの業の深さに嫌気がさす。


 天十郎は、一連の話に納得ができないような顔つきだ。黒川氏はそれを察したように


「天十郎君、もう一人。詳しい人がいる」

「誰ですか」

「立花編集長だよ」

「立花編集長?」

「ああ、彼は釣りで知り合ったけど、塁がとっても慕っていた。結婚するときも色々と相談していたみたいだから、彼からも聞いてみるといい。僕らと違う見解を持っているかもしれないから。それに、ほら、昔のタイアップ記事の事、僕らが聞いた話と少し違うから、その辺も聞いてみるといいよ」

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