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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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55話 ウエットティッシュとUSBの隠し場所

 夏梅達のテーブルにも、料理が運ばれて来た。綺麗にデコされたキウイサラダだ。日美子さんが声を上げた「盲点だった」その声に黒川氏がテーブルを見た。



【キウイだ】


「なに?」和樹が黒川氏夫婦に聞いた。日美子さんが「あの子キウイが大好きで、子供みたいになっちゃうの。聞けば気の毒、見れば目の毒なのよ」夏梅はお皿の上のキウイをひたすら集めて食べている。


 黒川氏が「つまり、何事も見たり聞いたりすると欲望が起こって心身の毒になる事だな」和樹がフッと笑って「たかがキウイに大げさですね」というと「いや、夏梅のキウイのスキが偏っていて、あればあるだけ食べようとするんだ。腹痛に下痢してもとまらないほど好きだ」


 日美子さんがイライラして

「ちょっと、どっちがウエットティッシュを持っているの?」

「夏梅です」蒲が答えた。

「まさか、胸の谷間に入れたままじゃ」

「どうしたの?」黒川氏が慌てている日美子さんに聞いた。

「いや、待合室で…。それどこじゃないわ。夏梅ちゃん、ウエットティッシュを先に取り出しなさい」もぞもぞ、夏梅が胸元を覗き込んだ。


「あー俺がやる」天十郎が挙手した。蒲が「やめろ」天十郎の腕を掴み、天十郎ともみ合いになった。「ちょっと揉めている場合じゃない。ドレスが…」日美子さんが天十郎と蒲の間に入りとめたが、天十郎は日美子さんの手を振り切って、胸元のウエットティッシュを探し始めた。


 Vカットのドレスの豊かな胸の間に手を入れて、ウエットティッシュを探している光景は、なんとも言い難い。

「どこまで深く入れた」

「この辺」とドレスの上から指さした。

「入れすぎだろ」二人で会話をしている。


「あー、もーいい。このテーブルナフキンでいいでしょ」黒川氏が耐えきれずに、自分のテーブルナフキンを差し出した。同時くらいに天十郎は、ウエットティッシュを夏梅の胸から取り出した。

「痛い!ウエットティッシュの角で傷ついた」

「沢山、血が出たか?」天十郎はまた覗き込んで「大丈夫そうです」答えながらウエットティッシュで、夏梅の口の周りを拭いている。


 蒲は不愉快でたまらないように、顔を歪ませた。


 自分のお皿が終わると、他のお皿が気になるようだ。夏梅はきょろきょろしている。それまでおとなしく座っていたのにフォークを離さず、中腰だ。天十郎のお皿にあるキウイに手を出し始めた。


「離せ、キウイを離せ。後で買ってやるから離せ」天十郎と夏梅がもめ始めた。


「あの子、本当にキウイ好きなのよね」日美子さんがため息をついた。

「マタタビ科だからな」蒲は無視している。

「蒲、何とかしなさいよ」

「なにをやっているんだか…。放置すればいい」

「天十郎の未来が、かかっているのよ」

 

 蒲はしかたなく、天十郎から夏梅を引き離し、かばうように腕を回して耳元にささやく。「夏梅、帰りにゴールデンキウイ三箱でどうだ」夏梅は両腕を、蒲の首にからませ、嬉しそうに頬をよせ抱きついた。蒲と夏梅の、その動作に、天十郎が夏梅を引っ張った。


 そして、自分の元に引き寄せると、抱きしめて、夏梅の目と耳の間にキスをした。夏梅の表情が硬直して、天十郎を見つめた。



【二人は長い事見つめ合った】


 僕は不愉快だった。夏梅に目と耳の間にキスをするのは、この僕だけだ。その様子に、蒲が苛立ち、夏梅を挟んで天十郎に顔を近づけ、小さな声で

「今、キウイの在庫がある限り持って来てもらうから、これ以上夏梅を使うな」

「何を言っている?お前は夏梅に触るな。小芝居がばれる。お前忘れたか?」

「それでも、むかつく」蒲が殺気立った。


 キスで、僕だと勘違いした夏梅はその会話を聞いて、我に返った。


 夏梅がひどく落胆した顔をして首元からチェーンを取り出した。

「キスしたな!デカマッチョなんか蒲に殺されてしまえ、頭に来る。いい加減にしろよ!このUSBが見えないんか?」


「なんだ?USB?」蒲が驚いたように

「まさか…、どこにしまってあった」天十郎が青ざめた。

「胸」勝ち誇ったように、夏梅が得意げに答えた。

「だって…」天十郎はしどろもどろだ。

「お前なんかに見つかるか!いくらだって隠せるわい!」蒲と天十郎は固まった。

「はい!モネを見に行った時の交換条件でしゅ~よ~。隠し撮りましたでしゅ~。ね~。ウフフ。今日は記者さんたち多いでしゅね~」なぜか、赤ちゃん言葉の夏梅は悪魔のように見える。


「いつの間に」天十郎が焦った顔をした。天十郎と蒲の焦り具合が尋常ではないので

「どうしたの?」日美子さんが聞くと二人とも同時に

「なんでもない!」強く否定した。


「夏梅、安心しろ、帰ったら絶対にゆるさないからな」蒲が毒づいた。三人ともにこやかに絡み合っているが、流れて来るムードは険悪だ。

「まあ?いいでしゅね~。その言葉使い~!」


「外から見れば、お嬢様を挟んで執事が二人でいがみ合っているように見えるな」

 立花編集長が笑いながら三人を止めた。しかし、完全に二人とも夏梅に飲み込まれているような気がする。


 特に蒲には驚いた。あいつ、男性オンリーを貫くはずではなかったのか?…。遠巻きにしている男性群は聞き耳を立てて居る。蒲はフッと笑うと夏梅から離れ、立花編集長に「ご希望に添えて何よりです」と丁寧なお辞儀をした。

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