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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
5/88

5話 一緒にお風呂?

「俺が引越をして来た頃かな?」

 蒲は意味ありげに笑った。天十郎はイライラしたまま蒲に食いついた。

「引越って、いつ?」

「五月終わりくらい。かな?」

「今年のか?一カ月以上も前か?あいつ何?」


「言葉とかを話したくないみたいだ、自分の気持ちとか悟られたくないと、聞いても答えないから、こっちが理解してやるしかない」

「面倒だ」

「俺たちにとってはそれくらいがちょうどいい。わからないって理由で無視できるだろ?」

「それでいいのか?」

「いいだろ?あいつの自由だ。それより飯!」

 蒲は天十郎の頭をなでた



【二階にひとりで上がったと思った夏梅が】

 

バスルームで盛んになにか叫んでいる。食後に、僕の膝元でゴロゴロしていた、蒲と天十郎が、頭をもたげて玄関ホールを挟んで反対側にある、バスルームの方を見た。

「おい」僕が蒲に声をかけると、

「行って来るよ」蒲はニヤと笑って僕を見た。

「どこに?」天十郎が焦った声を出した。


「夏梅を洗いに」

「おい」

「焼いているのか?可愛い奴」

「おい」

 

 声を荒げて蒲の腕を掴む天十郎。


「夏梅って普段は体温が低くて汗をかくことがあまりないけど、風呂に入って血行がよくなると面白くなる」

 フフっと意味ありげに蒲が笑う。

「どういうことだよ」


 さっき、食事終わりに

「蒲、お風呂!」と夏梅が言っていた。蒲は、夏梅や天十郎の方を見ないで「いいよ」と答えていた。それを思い出したように天十郎は

「おい、まさか、夏梅と一緒に風呂にはいるのか?ありえないだろ」

 悲鳴に近い声を出した。


「俺たちの習慣だから気にするな」

「気にするだろ、いい加減にしろよ」

「気になるなら、一緒に来ればいいだろ」

「嫌だよ、女と一緒に風呂なんて嫌に決まっているだろ」

「じゃあ、待っていろ」

「お前がやめろ」

「気にしなくて、大丈夫だぞ。そういえば、お前は仕事で女性の事を知っていた方がいいだろ?」

「うるさい。仕事は一瞬だけ我慢すればいい。だから女の事を知らなくても問題は起きない。それにあの女は危険だ」


 バスルームでは相変わらず、夏梅の声がしている。


「そろそろ行かないと、夏梅がゆでタコになる。のぼせると介抱が大変だからな、あいつは長湯が出来ない。離せよ」

 天十郎の腕を払った。

「おい」まだ食い下がる天十郎に顔を近づけ


「しつこいぞ、夏梅がのぼせたらお前に介抱させるから、それでもいいのか?」

「うゅっ、それは嫌だ。蒲が介抱するのも嫌だ」

「だよな、わかっているよ。いい子だ」

 立ち上がると、バスルームへ向かった。


 バスルームの方から夏梅の「待ってたとー。のぼせそう~」という声が反射した。思わず、立ちあがった天十郎はバスルームへ駆け寄った。僕はそのあとをついていった。



【広いバスルームに、大きめのバスタブ】


 その中には、真っ赤な顔をして、手足に力なくバスタブに沈みそうな夏梅がいた。蒲は「待たせたな、天十郎が放してくれなくて」と笑っていた。


「ごちそうさんです」力なく夏梅が答えた。蒲は、パンツ一つになると、バスタブに沈みそうな夏梅を引き上げ、湯船から出した。

「おい、扉を閉めろ」

「えっ、なんで」

「夏梅のからだがすぐに、冷えるからだよ」

 天十郎がバスルームの中に入って閉めようか、それとも外で待とうか、迷っていると。


「酔っぱらい。昨日はお風呂に入った?一緒に入ったら?」と、夏梅が言う。

「そうだな、お前も風呂に、はいれよ」蒲も普通に言う。二人のまったく問題はないよ。というような雰囲気の会話に飲み込まれ、天十郎は「そうか」と、いいながら全裸になった。

 それを見て、蒲と夏梅が小さく噴き出しそうになった。

「なんで、こんな状態になる」

 納得がいかないのか、天十郎はぶつぶつと言っている。


 バスルームに、はいってくると、バスタブに腰掛け、夏梅を抱きかかえるように膝の上に乗せて、夏梅の背中を手際よく垢すりをしている蒲をかなり不愉快そうに見て苛立ち

「なんで、一人で洗わないかな」天十郎が夏梅を小突いた。

「このやろう!」僕は思わず立ち上がった。それを見て蒲が「まあまあ」と、天十郎をなだめた。


 天十郎がぶつぶつ言いながら湯船にはいるのを見て蒲は

「おい、洗ったか?」

 

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