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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
38/88

38話 おじごく

「なんか、可哀想だな。俺も男地獄を味わっているから、わかる。美術館であった美来もそうだからな」

「おじごくって、なんだよ?」蒲が聞いた。



【夏梅はソファベッドから口を挟んだ】


「男地獄とは!江戸時代の浮世草子などに表現されている、女にもてあそばれる男。男めかけ。男色を売る者という意味だな」

 天十郎は嫌そうな顔したが夏梅の声は意地悪くもなく、軽蔑した感じも微塵もしなかった。


「さすがライター!天十郎も苦労したからな」

 蒲はなぜか、はしゃいでいる。その蒲の様子を見た夏梅は鼻で笑い。呆れ返ったように「お茶でもしようかな」ソファベッドの正面にあるキッチンに向かった。


 天十郎が蒲に「嬉しいのか?」突っ込むと

「俺の胸に抱かれていれば、そんな事は忘れさせてやるから」

 蒲が天十郎の頭をなでた。

 

「途中でいなくなったよな。夏梅にはやはり勝てないのか?夏梅ってすごい奴だ」

「元カノか?」蒲が聞くと天十郎が頷いた。

「お前の演技もすごかった。やっぱり役者だな」

 蒲の誉め言葉に天十郎は嬉しそうに笑ったが、その件に関して僕は非常に面白くないままである。


「美来や茂呂社長などあの部類の女たちの興味は、男に対する夢や要望を形にして偶像をひたすら求める。こっちの気分なんか気にも留めない女の欲が薄汚すぎて反吐が出る。夏梅もそれと似通った立場だよな」

「そうだな」

「オレはそんな女達を利用して、仕事にありつくためのパトロンだと考えられるが、夏梅は元々そんな世界で生きる事を選んだ訳でもないし、欲望がある訳でもない。そういう事だろ?過酷だな」

「過酷か?」

「正直、俺、夏梅のすること、なすこと、腹立たしくて顔をみるのも嫌だったけど、その部分については共感できると言うか」

 言いながら、天十郎はキッチンに向かった。



【蒲が僕を見て何か言いたそうだ】


 僕は蒲に聞いた

「蒲は天十郎に、夏梅の何を見せたかった?」

 蒲は、天十郎が思いのほか夏梅に同情していることに気が付き、機嫌が悪く黙っている。

「女嫌いの天十郎に、女の本性や、男を惑わすところを見せたかったのか?そうだとしたら、とても成功したとは思えない」

 僕はため息をついた。


 僕らが話し込んでいると、キッチンから、夏梅と天十郎の言い争いが聞こえてきた。

「だから、これは私のだから、あんたには使わせない」

「ふざけるな、蒲が使っていいって言った」

「冗談じゃない、蒲、蒲」叫び声のような夏梅の声がする。


「おい、今度はなんだよ」僕はキッチンを覗きに行った。戻って来ると蒲に


「二人してティーカップの取り合いをしているぞ、まるで幼児の兄弟げんかだ。早く、お前がなんとかしろよ」

「嫌だよ」

「あの二人、波長が全く合わないのか、手加減なしで騒ぐな。勘弁だぜ。天十郎の言い分も父親とか母親の取り合いみたいだし、おい、蒲、早くしろ」

「嫌だよ」

「お前が原因だ、さっさと終息させろ、頭が痛くなる」

 僕が蒲にきつく言い渡すと

「お前に頭なんかあるかよ」

 蒲はため息をつきながらキッチンに向かった。

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