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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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2話 訪問者

「ああ」蒲はニンマリと笑い答えた。


「ああ?家の場所を知っているの?」

「一度、来たから、夏梅は知らなかったの?」

「いつの間に…。準備万端、整っているのね。蒲のそういう所が嫌いだわ」

「そういう所って?」

「人を試したり、謀ったり、利用したり悪ふざけが過ぎるのよ」

「悪ふざけか…。今の夏梅にやったら何が起こるか、わからないな」

 蒲が僕を見た。


「蒲って、子供の頃からそうやって、私の男を奪っていくのよね」

 夏梅が牽制球を投げる。

「おい、あいつはオレのだ。お前のじゃない」

 蒲はすごんで見せた。しかし、そんな蒲の行動に少しも動じずに夏梅は

「ええ、そうですね。私の彼氏ではございません。塁~」と僕を呼んだ。


 僕はここにいるのに夏梅は遠くを見た。蒲が僕を見て複雑な顔をする。いつもの事だ。夏梅はため息をついてから

「ようは手を出すなって言う忠告も含めてなんでしょ。わかっていますよ。くわばら、くわばら」と、言いながら、黙っている蒲に向かって、夏梅は〈えんがちょ〉を切った。


「夏梅様はさすが余裕ですな」

「雄なんてみんな同じ。海は広いが釣れるポイントは決まっている」

 夏梅はそう言い捨てると、蒲がたたんでいた洗濯済みの山から、蒲のボタンダウンプルオーバーシャツを引き抜き、下着の上にひっかけて二階に向かった。


「あ!おい、それ高いやつだから返せ」

「はーい」遠くから返事だけ帰って来た。

「また、返事だけかよ」蒲がイラつき、僕を指さして

「おい、お前、塁、夏梅をちゃんとしつけろよ」と怒鳴った。

 また蒲は無理な事を言うものだ。昔から変わらない。



【ガチャ…】


 真夜中になって玄関から音がした。そしてドアが静かに開いた。天十郎だ。靴も脱がずに玄関に立っている。蒲の奴、玄関の鍵を閉め忘れたか?そのうち、僕の足元に座り込んで独り言を呟き始めた。

「今日はね、満月ですよ。夜の梯子酒もいいでしょ」

 かなり酔っぱらっている。

「満月がどうした」

 僕は暇つぶしに酔っぱらいの相手を始めた。


「僕はね。蒲が好きなのに女を抱きしめました。あー。なぜか嫌悪感がなかったのですよ。困りました。戸惑いますよ」

「夏梅の事か?」

「浮気をした気分。ただ抱きしめただけなのにね。どう思います?」

「どう思う?って、夏梅を抱きしめて無事にいられただけでも奇跡に近いけどな」

「あの女、ほんとに気持ち悪い、SEXをしたがる」

「夏梅が?」

「おい、茂呂社長って知っているか?」

「知らねえ」

「蒲がさ、蒲がいつでも、おいでって、優しいだろ?」

 

 家の鍵を玄関ホールの電球に照らして影をつくって眺めている。

「合鍵を渡しやがったな。蒲が?優しいね…。まあ、せいぜい気をつけなよ」

 僕はため息をついた。

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