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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
17/88

17話 男を集める女

「日美子さん私、蒲にマタタビ女って言われるの」

 ザックッと話題を変えた。



【天十郎の為に夏梅が自分の身を切った?】


 いつも僕の言いなりである夏梅が、誰かを助けるために自分を投げ出すのは初めてだ。僕の感情が波打った!全身が膨張して、はじけ飛び崩れ落ちるような感覚だ。蒲も夏梅の言葉に驚いていたが、それよりも僕の豹変にひどく怯えた顔をした。


「えっ、マタタビ女?なにそれ」

 黒川氏が食いついた。黒川氏も、日美子さんと吉江の強引さが気になっていたのか、タイミングよく大きな声を出した。僕を気にして自分から乗らないが、黒川氏が食いついたこの話題に蒲が乗らないはずはない。

「こいつ、マタタビにネコが集まるみたいに男を集めるのですよ」さも、嬉しそうに蒲が笑った。


 日美子さんは、険しい顔で話題自体が嫌そうに「それは昔からでしょ」と深いため息をついた。

「そんな事、あり得ませんよ」吉江が事実否定した。

「夏梅、お前ってあり得ないのだってさ」

 クックと笑う蒲は、吉江に向かって、

「本当なのだ、吉江さん見てみたいと思わないか?」

 夏梅を見ると目が怒っている。


「それ以上話題を膨らますな」僕は蒲を怒った。それを無視して

「とりあえず、検証しないか?」嬉しそうに蒲が言った。

「いいけど、どうやって?」吉江は蒲に調子を合わせた。


「色々なパターンで、外に連れ出して周辺の観察をするとわかるよ?」

「そうね。まずは、洋服を着せようよ。女物を着せよう。こんなブカブカの男物ではない可愛い洋服。きちんとお化粧して」

「化粧はしない」夏梅は完全に怒っている。

「えっお化粧をしたことないの。化粧品がないの?なにならあるの?」

 吉江は完全に見下した言い方をした。



【リップクリームならある】


「恐ろしい、今時、こんな人がいるのね。蒲さん美容室に夏梅さんを連れて来てください」

「吉江さん、それくらいにしておきなさい」

 日美子さんが止めた。蒲はその声を無視して

「今度、黒川さん美容室に夏梅を連れて行きますから、こんな男物のダラダラの洋服じゃなくて、女性ものを着せて、化粧して街を歩かせてみましょうよ。なあ、天十郎も見たいだろ?一緒に見に行こうぜ」


 天十郎は面倒くさいように知らん顔をしている。

「うちに来るのは構わないけど…」日美子は口を濁している。


「天十郎が夏梅の事をよくわかってないからいい機会でしょ。日美子さんいつがいいですか?明日にでも、みんなで行っていいですか?」

「嬉しい!皆さんで来てくれるのですね。楽しみ~」

 吉江が悪のりしている。吉江が媚び、まったく夏梅の存在がないように無視をして、蒲と天十郎を誘い始めた。天十郎は一言も言葉を発していない。


「皆さん、お酒飲まれますよね。私、お酒が好きでいつも飲んでいます。事務所の近くの自宅で明日、丁度、仲のよい男性仲間と飲み会があるから、帰りでも一緒に飲みませんか?」

「いいですね。いつも男性と飲むの?」

「殆どは独り飲みですけど…。飲み仲間は全部男性です。私、男性と一緒の方が気楽なのです。ぜひぜひ、お二人も…」 

「いいですね」

 蒲がにこやかに答えた。


 夏梅は表情一つ変えずにいる。

 ほとんど強引に蒲と吉江で話を進めている。黒川氏と日美子さんは顔を見合わせ、気まずい雰囲気を醸し出している。

「そうだな、明日はお店が休みだから、みんなで、おいで。待っているよ」 

 黒川氏がしかたなさそうに話をしている間にも、蒲は吉江にすり寄っていた。ぴったりくっついて、僕に聞こえないように小さく耳元で何か話している。


 吉江は嬉しそうである。絶対に勘違いしているだろう。多分ろくなことではない。


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