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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
15/88

15話 やって来た

「もちろん。それにしても…。天十郎って夏梅と同じスッポン体質じゃないか?似ているところがある」

「どこが?」

「二人とも自分から身を引くことはないだろう、まして自分の身を売ることはしても、無償で差し出す事は絶対にしたくない。悪い事じゃないさ。夏梅も天十郎もしつこい訳ではないし、ないものねだりはしない。ただ、自分の好きなものが手に入ったら、決して離さないだけだからな」


「そうか?そうだな。天十郎がここに引越をしてくれば…」

 僕は馬鹿にして鼻で笑った。

「ほんとに学習しない奴だ。僕がいる限りお前がどうあがいても、お前の望むようにならない」


 蒲の顔色が変わった。そのとき天十郎が、オープンサンドを持ってやって来た。

「なんの話?よく聞こえなかった。あれ、蒲、体調が悪い?大丈夫?」

 蒲を覗き込んだ。


「いや、何でもないよ」蒲は言葉を濁した。



【天十郎と一緒の生活が始まった】


 荷物の移動は大騒ぎになった。二階を上がったすぐの夏梅の寝室は、天十郎と蒲が占領した。その部屋とサンルーフで繋がっている夏梅の仕事部屋は、蒲と天十郎の衣装部屋に変身した。


 既製品の女性服にはほとんど縁のない夏梅は、天十郎のおかげで沢山の男性の洋服をゲットした形になって、密かに喜んでいる。蒲の洋服を黙って借りては、うるさい事を言われていた夏梅も、うんざりしていたところだ。それだけでも、夏梅の収穫は大きく、嬉しそうに洋服を選ぶ姿は、僕の安定剤にもなる。


 夏梅のスペースは、一階のソファベッドが置いてあるサンルーム部分だけになった。仕事用の資料や書籍を持ってくると、かなり狭くなったので、一階の家具と二階の家具の交換をすることになったが、蒲は面倒がって動かない。少しずつ、夏梅は天十郎を動かして自分のスペースを確保していた。それも楽しそうに…。

 

 食事や掃除は当番が決まっていないが、誰ともなくやっていた。不平不満に思う人もいなかった。それぞれが自分のやりたいように、過ごす日々が続いた。天十郎と蒲はどこでも、ベタベタとくっついていた。それを大型ペットのじゃれあいを見ているように、夏梅は特に気にもせず、目を細めて、ほほえましそうにみていた。


 引越のドタバタから、落ち着きを取り戻してきたころ



【一階の夏梅のソファベッドの上でくつろいでいた蒲が】


 天十郎に聞いた。

「新しい携帯を買って来たか?」

「明日、行って来るよ」

「どうだ?」

「何が?」

「結構、いい生活だろ」

「思った以上に快適かも」

「だろう、やっぱり」

「こんな生活が長く続くといいけど、そうは、いかないよね」

「おい、天十郎、俺たちの物にしたらいい」

 

 後ろから夏梅が、急に、二人の間に割り込んで聞いた。

「俺たちの物にするってなにを?」

 蒲が驚いたように

「聞いていたのか?」

「だから、なにを?」

「人の話を聞くな」

「ちょっと、私のソファベッドを占領して、二人で大きな声で話をして私に聞くなっていうの?」

「ああ、そうだ、俺たちの話に口を挟むな」

「そう、わかった。そこどいてよ、私のソファベッドからどいて」

 そういいながら夏梅は寝ころんでいる蒲に乗っかった。それを見た天十郎が

「何すんだよ」

 蒲から夏梅を引きずり降ろそうとした。


「あんたは人が好過ぎよ」

 すると、天十郎に夏梅が顔を近づけた。何か察知したように蒲は

「そこで内緒話なんかをするなよ。夏梅、余計な事を言うなよ」

 夏梅は蒲を無視して、天十郎の耳元に唇を寄せ

「蒲って、子供みたいな優しい顔して、頼もしくてかっこいいけど、結構怖いタイプの人だから」とささやいた。


「そんなことしないよ」と蒲がニヤニヤした。

「否定したわね」

 今度は夏梅が天十郎に抱きついた。蒲は反応し


「おい!夏梅やめろ」

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