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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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13話 ベビースマイル

「そうだよ、だからこの家に天十郎を入れても、仕事を紹介しても問題は起こらないのさ」



【蒲は嫉妬しないの?】


「天十郎は女に行かないし、行かせない。他の男に気を取られたら許さないけど、あいつの場合は、男性生殖機能を持っている奴はあらがえない。本能だからな。しかし本能はあくまで本能だ、心とは別物。一過性の本能が心に勝つとは思えない、第一、夏梅はお前に本気にならない」

「どうして?」

「性格的にはおまえは確かにあいつのタイプだけど、容姿がな…。身長が高くて、大きいマッチョは嫌いだよ」

「えっ?」

「あいつは細マッチョで自分と目線が同じくらいの奴が好きだ。歩きながら、顎をちょっと上げれば、キスできる位置がたまらなく好きだ。だから、天十郎は安心なのさ」


 そうだった。夏梅は少し顔をあげ、僕にキスをする。それはとても嬉しそうに…。その姿を…思い出そうとすると体中に不快が走る。


 蒲の話を不愉快そうに聞いていた天十郎は呑気に

「おれが、夏梅と寝てもか?」と蒲に聞いた。

「そしたら、俺も夏梅と寝るさ、あいつと寝るのは簡単だよ。俺たちはあいつの許容範囲にすでに入っているからな」

 蒲は天十郎をじらすように不敵な笑みを浮かべた。天十郎は焦ったように蒲に迫る。


「寝たことあるのか?」

「フフ」

「おい、寝たこと…」

「お前だって、夏梅を抱きしめて、寝ていたろう?」

「それと、これとは違う」

「違う?男の俺に言っているの?女と話をしているわけじゃない」


「…」天十郎のイラつきは言葉を発せないほど、ピークに達しているようだ。そのイラつきをさらにあおるように蒲が

「男が無意識に相手を欲しているかどうかは、すぐにわかる。まあ、落ち着け、しばらくここに居れば?オレの事も心配だろ、いつ夏梅と寝ちゃうか、わからないからな」と笑った。天十郎は深いため息をついた。


「ふざけるな、お前は夏梅と寝た事もないし、これからも寝る事は出来ない。僕がそうさせない」

 僕は蒲に突っぱねた。蒲はそんな僕を牽制するように

「どんな反応するのか見たいしな。それに基本さ、裏切りたくないからさ、女とは寝ないよ。男オンリーのまま行くさ」


「誰に義理立てているんだ」僕は鼻で笑った。



 【翌日も翌々日も、天十郎は家にいる】


 夏梅は急ぎの仕事で徹夜が続いている。夏梅が起きて来ると天十郎が

「どうしていつも笑顔なの?ほらほら、こうだろ?」

「なにが」


「この顔!この顔でこうやって微笑むだろ。だからこっちも思わず微笑むだろ!やめてくれよ!人の緊張をほぐし、安心させ、笑顔を引き出すこの無防備なベビースマイル、いやらしいよ。嫌だな。ほんと」

「何を言っているのよ、あんたが先に笑うから、こっちも微笑んじゃうでしょ」

「違うよ、お前が先だ」


 こいつは夏梅に親しげで僕は気に入らない。ただでさえ、徹夜明けの夏梅は機嫌が悪い。さらにこうやって、天十郎がちょっかいを出すのでさらに、機嫌が悪くなる。


「微笑む?あたしが?微笑んでない。気持ち悪いわ」

「ほらほら、本人はしらを切りますよ」

「さっきから、なあに?絡むじゃないの」

 夏梅の言葉がとげとげしくなってきた。


「夏梅、いま 俺らをみてどう思った?」

「腹立たしい」

「そうじゃなくて」

「どう思うって?なにが」

「さっき目が合った瞬間に」

「うん?君たちがこっちを見ているから、なにか?って」

「そう思っただけ?」

「うん」

「その顔が微笑んでいるように見えるのだよ。この間も、取材の時にホテルの人にどんな状態でも、いつもニコニコして周りを癒す人だと言われて納得してなかっただろう?」

「ニコニコしていないもん」

「いや、ほらほら、この顔」

「どんな顔だ、わからないよ」


「写真に撮ってみるか?」

 天十郎が携帯を取り出した。携帯の画面を覗きながら、首をかしげた。

「違う、その顔じゃない。ああ、それグラビアを撮るときの表情?違うよ。もっと自然に」

「うるさいわね」

「夏梅、僕になにか尋ねてみてよ。そんな気持ちで僕のほうを見て」

「?」

「ほら、これこれ、この顔を写真にとって見てみると…。あれ?実際には微笑んでない」


 写真と実物を蒲と天十郎が二人で見比べている。

「ファインダーを通すのでは何が違う?」


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