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救助、絶望

前半はギース視点、後半はラグナ視点になっています

 「ちょっと、ギース、ラグナ様の寝所に行くとか急にどうしたのよ」


 全力でラグナ様のねぐらに走っている俺を息を切らせながら妻が追いかけてくる。


「お前も見ただろう。ラグナ様の寝所から放たれた光をあそこに入った密勇者が何かやったんだ。見に行かねば」


 俺達の村はラグナ様の寝床の近くにある。小さな村だ。だが今まで魔獣の襲撃や盗賊に襲われたことの無い村だ。


 この村があったのはラグナ様が近くにいたからだ。俺達の村で大きな事をしようとすることは必然的にラグナ様の近くで暴れることになる。基本ラグナ様は寝床から動かないがそれでも若いながらも世界最強の一角に数えられる竜だ。そんな危ないところで大騒ぎを起こす奴はいない。


 ラグナ様本人を狙っている以外の奴は。


 国としてはラグナ様に不干渉を貫いてはいるが欲深い金持ちどもは別だ。国内外問わずラグナ様の鱗一枚、角一本でも手に入れようとしている。他の竜は居場所が詰めていない。しかし、そこそこ腕の立つ密猟者程度ではラグナ様は殺せない。そこで使われているのは公式には存在しない密猟者では狩ることの出来ない魔獣や魔物を殺す勇者、密勇者だ。


 今まで数々の密勇者がラグナ様に挑み散って行った。しかし今日はいつもの閃光が火口から見えた後に謎の稲妻が走っていた。


 その光を見た時俺は無性に不安になった。今まで見なかった光だ。ラグナ様に何かあったんだろうか


 そう思った時には足が動いていた。ラグナ様は寛大だ。万が一寝床に入っても敵対行動をせずにゆっくりと下がれば襲われることは無い。度胸試しでラグナ様の所に入っていく子供を連れ戻す為の方法として村の皆は熟知している。大丈夫だ。


 たどり付いた。ラグナ様の寝所にラグナ様はいなかった。あったのは山のような鎧と剣、恐らく密勇者の遺品だろう


 そしてボロボロの剣の下敷きにされて、あおむけでもがいている全裸の青髪の少女だった。

なんだこの光景。


 一瞬、あっけに取られたが、ラグナ様がいないことを確認すると急いで少女の元に行く。密勇者の仲間かは分からないが事情を知ってそうだから助けねば。


「おい、大丈夫か」


 そう言って剣をどかし肩をゆする。反応はあるが、口をパクパクするだけだ。年としては俺の娘と同い年くらいか?


 見たところ無傷で倒れている。筋肉もない密勇者がラグナ様の気を引くための囮として買った奴隷か?見るからに汚れだらけでお世辞にも綺麗とは言えない。


「あ……うぁ……おー」


 多分、密勇者とラグナ様に何かあったようだ。顔が真っ青で恐怖に引き攣っている。ショックで正気を失っているようだな。よほど怖い事があったのだろう。


 ラグナ様も気になるがまずはこの少女を助けねば。


「大丈夫だ!俺のいる村に連れて行く。そこなら俺の仲間もいる。もう安全だ」


「い……あ……ああ……うう」


 俺の言葉に理解したのか安堵の涙を流す少女の頭を軽く撫で上着を被せて担いでいく。

剣は離さないのか。


































 ゆ、勇者だぁ


 男と女の勇者だぁ


 やばい死ぬ逃げねば。立て、立つんだ俺の後ろ脚!!何で動かない。プルプルしてる場合じゃないぞ!


あ、駄目だぁ。目の前に来たぁ。ええいこうなったら殴ってやる。


 おり……剣邪魔ぁ!


 うわぁ肩揺さぶられた。俺はここで死ぬんだぁ。


 え、大丈夫か?だって?


 大丈夫じゃないけど問題ない。


 そうだ今の俺の姿は勇者、話せば分かり合える。よし、まずは敵じゃないと伝えなければ

いくぞ


「あ……うぁ……おー」大丈夫俺は敵じゃないよ


 ……口動かしずらい!!


駄目だぁ。殺される!


 え、大丈夫、連れて行く?村?村って何?仲間?勇者の仲間?勇者がいっぱいいる所に連れていかれる?


 …………嫌だぁ!!竜の俺ならともかく今の俺が勇者に勝てるわけがない。殺される。連れて帰った後で勇者達に今まで殺した勇者の数だけ殴られるんだぁ。


抵抗しないと


「い……あ……ああ……うう」


 駄目だぁやっぱり言葉が出せない。


 終わったぁ。涙久しぶりに流してる。そんな状況なのにこの勇者、満面の笑みで頭撫でて来たぁ


 こうなったら攻めても抵抗してやる。勇者達の所に着いたらこのやたら重いボロボロの剣を振りまわしてやる。こんな物いつも片手で振り回している勇者達にすれば小さな抵抗かもだけど、仮にも勇者を一杯殺した竜の底力を見せつけてやる!!!


 覚悟してろぉ!!


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