竜、人になる
さらに何回か日が昇った後に勇者が来た。早速殺して食べた。
よし、やるぞ
まずは姿を変える。剣に魔力を流し込み力を発動させる。本当は力を奪ってから姿を変えるのが順番なのだが、少し怖いから力は奪わないで姿だけ帰ることにする。
瞬間、体から色々抜けてくような感覚が襲ってくる。バキバキと音を立てて翼が無くなっていく、鱗が無くなり勇者達と同じ肌になっていく、頭の角が無くなり毛が生えてくる。人の姿になる時にどんな姿になろうか考えた時があった。しかし、俺には勇者の良し悪しなんてわからない。どの勇者も勇者だからだ。
考えて考えた末に俺が選んだのは、このボロボロの剣を使っていた青い髪の勇者だ。この剣使ってたみたいだし丁度いい。イメージもしやすい。
俺の鋭い爪が柔らかい皮に置き換わる。顔は変わっているか分からないけど多分変わっている。尻尾も無くなり姿が完全に変わる。もう俺を竜だと分かる要素はない。
大きさ以外
そう、まだ力が奪われてないから大きさは元もまま、鳥たちから見ればデカい勇者が寝転がっている状態だ。
デュワッチ
流石にこのままだと不味い。俺と同じ大きさの勇者なんていなかった。急いで力を奪われて小さくならねば。
……それにしても、
勇者の姿に変わった体に目をやる。こんな細くて小さい腕や手であんな重い剣をブンブン振っていたのか、勇者は凄いな。パット見ても思い出しても他の勇者に比べて肉も無かった。それでもあの剣を使えるのだから侮れなかったな勇者。改めて剣に再び魔力を流す。
先ほどとは違い魔力を流した瞬間から体から力が抜けていく。と同時に体から閃光や稲妻が放たれて徐々に小さくなっていく。
最初はいいと思ったが、段々力が取られていく事に意識が遠のいていく。不味いと思った時にはもう体が十分に縮んでいた。それでも剣は俺から力を奪おうとしてきたので強引に腕を離した。
……もう力が奪われる感覚はない。稲妻もなくなった。
多分大きさも、縮み過ぎた気もするが分からない。
とりあえず成功した。
俺は勇者と同じ姿を手に入れた。そう思った時俺の口が大きく開いた。それが笑顔であると気が付いたのは少ししてからだった。笑ったのは久しぶりだ。
いくぞ勇者達の事をもっと知るんだ。
さて、ひとしきり笑った後外に出ようとして気が付く。勇者の体の動かし方が分からない。
確か勇者は後ろ足で立っていたな。うん、後ろ脚で立つのは竜の時に何回かやった。いける。
駄目だった。尻尾と翼でバランスが取れないからすぐ転ぶ。
なにか支えに出来るものは……
目の前にボロボロの剣があった。少しツンツンしてみたが力を奪われる感覚もなかったので安心して支えに出来る。
よし、少し後ろ脚が震えているが何とか立てた。後はどうにかして外へ
……うん?足音?まさか勇者?!
不味い。俺はまだ勇者の体に慣れてない。今の状態で戦えば殺される。に、逃げねば。
とりあえず、剣を抜いて逃げねば。
ズボッ
あ、思ったより簡単に抜けた。
ドサッ
……俺の馬鹿ぁ!まだ後ろ足で立てないから剣を支えにしてたんでしょ。ど、どうしよう剣も一緒に倒れたから支えに出来ない。
あ、もう来てしまう。嫌だぁ、まだ死にたくない!