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ヴァルと呼んで欲しい


ヴァルテリが覚醒しラヤーナ達を救ったすぐあとに、精霊の森で女王、レーリナ、ギルド長たちと話し合いをした後のお話です。




精霊の森で話をした後、ラヤーナとヴァルテリは外森の家に戻ってきた。

今ラヤーナは森の家のソファの上に座っているヴァルテリに抱きかかえられているところだ。


「ヴァルさん」


「なんだ、アヤ?」


返事をしながらヴァルテリはラヤーナの身体をぎゅっと抱きしめた。


「…あの…ヴァルさんは…」


「アヤ?」


「征爾さんだっていうのも、セヴェリさんっていうのもちゃんとわかるんだけど…」


「…不安なのか?」


「…そういうのではなくて、何て言うのか…、征爾さんの時とは話し方が違うなって思って…」


「………」


「征爾さんなのに、話し方が違うから…何となくまだ変な感じがするの…」


「…アヤは…嫌か?」


「あ、嫌とかそういうのは無いの。まだ慣れなくて…、でもヴァルさんはそういう話し方だって何となく思ってて、征爾さんは征爾さんの時の話し方なんだっていうのもわかってて…同じ人なのに不思議だなって思っちゃうのよね…」


「まぁ…生活環境が違ったからな…その界で馴染むためにはそこで話されている話し方になったんだろうな。」


「そうよね…。あ、でも、日本にいた時に今のヴァルさんみたいな話し方をする人もいたわよね。でも、征爾さんはもっと柔らかかったから…」


「征爾の俺は上に兄もいたし、俺の家は患者本人も含めその家族へのあたりは優しく丁寧に、話を聞き出しやすく、相談を受けやすいようにっていうのがあったからな。」


「そういえばお兄さんたちも、お義父さん、お義母さんたちも、皆さん話し方は柔らかかったわね。」


「あぁ…アヤはこんな風に話す俺は苦手か?」


「苦手とかは無いの。ただ、まだ慣れていないっていう感じだと思うわ。ヴァルさんは…竜騎士なんでしょ?いろいろな人たちを守るために戦ってきたんでしょ?だから、話し方も戦いの世界に身を置くような人たちの話し方なんだなって思う。日本は平和だったものね。」


「そうだな。アヤは…征爾の俺の方が良かったか?それともセヴェリの俺か?」


「え?みんな同じでしょ?同じ人なのに、どの人の方がいいって変よ?征爾さんもセヴェリさんもヴァルさんも、何も変わらないわよ。あ…話し方がちょっと違うくらい?」


「アヤにはどの俺も同じだっていうのは当たり前の前提なんだな。見た目はだいぶ違うと思うが?」


「見た目?…あぁ…そうなんだろうとは思うのよね。」


「アヤはそう思わないのか?」


「うーん…見た目が違うだけで中身一緒だし…まぁでも…確かに征爾さんは日本人だったけれど、セヴェリさんとヴァルさんはどう見ても日本人ではないわよね。そういう意味では私も見た目は前と全然違うから…」


「アヤは…俺の見目の違いは気にならないのか?征爾とももちろん違うが、日本人ではないというカテゴリで一緒にしているセヴェリとヴァルテリは大きく違うだろ?」


「え?…うーん…一般的にはそうなんだろうけれど…私からすると征爾さんはやっぱり地球にいたから雰囲気がもっと穏やかだけれど、セヴェリさんとヴァルさんは戦いが常にある世界に身を置いていたからかしら、違うって感じないわ。雰囲気は同じだと思うし。それに…気にならないっていうよりも…気にしたことが無いっていうか…そこに意識を向けたことが無いっていうか…そこはあまりどうでもいいかなって…。だってセヴェリさんはヴァルさんだし、ヴァルさんはセヴェリさんで征爾さんだから。」


「そうか…アヤは本当に、あの厳ついセヴェリの外見も全く気にしていなかったよな。」


「厳つい?…うーん…そう感じたことは無いのよね。セヴェリさんが近くにいると安心したっていうか、ドキドキするけど嬉しいっていうか…。でもそのセヴェリさんだって、まさか征爾さんと同じ人って考えないようにしていたからそう思わなかっただけで、セヴェリさんにいつもそばにいてほしいとは思っていたわよ。」


「あぁ。セヴェリのとき、征爾のとき、ヴァルテリの時、アヤが俺に寄せる気持ちはみんな同じだったからな。セヴェリの時はアヤを守るためだけに、アヤに触れるのを我慢していたからな。何度こうしたいと思ったことか…」


ヴァルテリは再びラヤーナを抱きしめて、キスを重ねる。ようやく取り戻したアヤをもう二度と手放さない気持ちを込めてラヤーナを抱きしめながら何度もキスを続けた。


「ねぇ、ヴァルさん。」


「…アヤ…。アヤは俺のことをこれからはそう呼ぶのか?」


「え?えーと…征爾さんって呼ぶのが一番呼びなれているけど…ここではその名前で呼ばない方がいいと思うのよね。皆さんが知っているのはヴァルテリさんであって征爾さんじゃないでしょ?」


「…あぁ。それはそれでいいんだが?」


「ヴァルさん、じゃだめ?」


「……『さん』は無しで…」


「え、だめ?だって征爾さんの時は征爾さんだったし…」


「アヤ…そのな…どうもそう呼ばれると…日本で暮らしていた時の大掃除の時に…」


「大掃除?」


「出かける前に仕掛けておいただろ。煙が出るようにして、帰ったら終わっているっていう…」


「煙?………あっ!あれね、G退治の。」


「そうだ。それがな…呼び方が…」


「……………似てるわね…確かに…」


「だろ?」


「…じゃぁ…どうしよう…えっと…ヴァル?」


「あぁ。それでいいな。うん。それがいい。アヤ、これからはずっとそう呼んで。」


「わかった。その…慣れるまで時々前みたいに呼んじゃうかもしれないけど、早くなれるようにするわ。」


「アヤ…」


ヴァルテリはラヤーナにキスをした後、ラヤーナを抱き上げて立ち上がった。


「え、ヴァルさ…、ヴァル?」


「さぁ、これからは夫婦の時間だ。早く絆を強くしよう。」


「え、キズナ…って。あ…」


ラヤーナの問いの続きはキスをして言葉を塞ぎ、ヴァルテリはそのままラヤーナを抱えて寝室へ入っていった。




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