ヴァルと征爾は服の違い?
ちょっと甘々…多分…(ちょっとじゃない…?いやいややっぱりちょっと…?)
ラヤーナはヴァルテリと共に、コリファーレへ向かう準備を進めている。
薬に関しては、現在でもある程度の在庫は町の店舗やギルドの倉庫、空間魔法の倉庫に保管してあるが、コリファーレへ向かうと何があるのかわからない。出発前にできれば数年分は使えるような量を準備しておきたいと考えたラヤーナは、ヴァルテリにも手伝ってもらい、大量の薬を作っている。魔力も上がり、ヴァルテリという強力なサポーターがいるため、材料調達もスムーズに進んでいるため、順調に薬の作成が進んでいる。
ヴァルテリは常にラヤーナの側にいて、薬の作成を手伝ってくれ、甘えたくなると甘えさせてくれ、ラヤーナはふわふわと幸せな気持ちで過ごしていた。セヴェリの時もこうして手伝ってくれていたし、魔力切れを起こすと、抱きあげて寝室に運んでもらっていた。ヴァルテリとなって見た目はセヴェリと変わってしまったが、やっぱりここにいるのはセヴェリであり、ヴァルテリであり、そして日本で過ごした時にも側にいてくれた征爾でもある。そんなことを思いだし、嬉しそうにはにかんだ顔をヴァルテリに向けた。
ラヤーナのそんな表情を見てヴァルテリが言った。
「…アヤ…アヤは征爾の俺よりも…ヴァルテリの俺の方が好きか?」
「え…どうして?」
「今…アヤが俺にそんな顔を向けたから…」
「…?…どっちも変わらないけど?…っていうかそんな顔って…」
「アヤ…征爾の欠片もセヴェリの欠片もヴァルテリの欠片も全部一つになった俺の欲は強い。そんな顔を俺に向けると俺の抑えが効かなくなるぞ。」
「…抑え…って…なに?」
「アヤ…わかっているだろう?」
「あ…いやいや…うん…いや…あの…そ、それよりも…その…私がヴァルの方が好き?征爾さんよりも?そんなこと考えたことないけど…」
「セヴェリが入るともっとだろう?セヴェリの時にもアヤの俺への恋慕が伝わってきていた。我慢するのが大変だったんだからな。」
「そ、そう言われても…」
「征爾の俺と、セヴェリの俺と、ヴァルテリの俺と…アヤが知っているのはこの3人だけだが…アヤが好きなのは?やっぱり今の力を持った俺か?」
「えー…ヴァルは征爾さんだし、セヴェリさんだし、何も変わらないけど?みんなおんなじだよ?」
「変わらないのか?見た目は…だいぶ違うけどな。」
「だって…ヴァル…、絢音の時の私とラヤーナの私とどっちがいい?」
「どっちも変わらず愛している。どっちもアヤだ。」
「でしょ?同じよ。」
「そうか?…アヤにとって…今の俺と…征爾の俺と…セヴェリの時と…どう違うんだ?」
「えーと、そうねぇ…着ているものが違う?」
「着ているもの…?」
「そう。なんていうのかなぁ…中身は同じなんだけど、表面だけ違うの。服を取り換える感じかな?」
「…俺の本質は俺のままで…征爾の服やセヴェリの服、ヴァルテリの服を着てるっていうことか?」
「うん…まぁ、例えとしてぴったりなわけじゃないけれど、そんな感じかな。みんなヴァルだよ。ヴァルも、セヴェリさんもだけどみんな心配性で、征爾さんも、日本にいた時にすっごい心配性だったでしょ?さっき、それをちょっと思い出しちゃった。」
「…それであんな顔を…?…俺が心配性なのは…それは…」
「私、いつも征爾さんに守られて、嬉しくて、セヴェリさんにも守られて、やっぱり嬉しくて、ヴァルに守られて、いつも愛してもらって、すごく幸せです。ありがとう。」
「アヤ…」
「あ、服って言えば…」
「何だ?」
「そう。征爾さんの時は…ウフフ…いつもかっこよかったけど…特にスーツ姿かっこよかったな~。もちろん普段着のラフな格好も素敵だったけどね。セヴェリさんの時はねぇ…騎士団の制服が…ね…似合いすぎてて…。それからヴァルはねぇ…ウフフ…昨日のヴァルも今のヴァルも明日のヴァルも全部好き。竜騎士の制服を着てくれた時があったでしょ?あれはもう眼福で…スマホがあれば撮っておきたかったくらい。ヴァルは征爾さんでもセヴェリさんでも1つってわかってるから…。特にどれっていうのは全然ないの。セヴェリさんの時だって…まだヴァルがセヴェリさんだってわからなくて、征爾さんだってわからなくて。でも私はいずれいとし子をこの世に生み出さないといけないから誰かと番わなくちゃいけないって思ってたの。その時…征爾さんにまた会いたいと思ったけど無理だと思ってたから、せめて…征爾さんみたいな私大事にしてくれる人ならいいのになって思ったの。」
「………」
「そうしたらセヴェリさんに会って…セヴェリさんだったらいいのになってずっと思っていた。そうしたら、セヴェリさんは征爾さんで、征爾さんはヴァルでもあって…魂は同じ人なんだってわかったら、やっと理解できたの。私は征爾さんの、セヴェリさんの、ヴァルのものなんだって。それがとっても嬉しいの。」
「アヤ…」
「私、森神人で良かった。ヴァルの番で良かった。ローラ様、ありがとうございます。」
「アヤ…ありがとう、アヤ。俺こそ…女神ローラに感謝だな。アヤが女神ローラを敬う限り、俺も同じように女神を敬おう。アヤの望みが俺の望みだよ。」
「ヴァルの望みは?」
「アヤは?」
「私?私はもちろんこの世界が平和になって、みんなと仲良く過ごすこと。いろいろお薬を作ってみたいの!この世界の人たちの助けるになるように。それと…」
「それと?」
「ヴァルと…ずっと一緒に居たいなって…」
「そうか。」
「うん。あ、ヴァルは?」
「俺の望みは1つだけだ。」
「1つなんだ。…なんだが私が欲張りみたい…」
「そうじゃない。俺はアヤと未来永劫番う、それだけが望みだ。」
「…ヴァル…」
「アヤ。もう俺からは離さない。未来永劫、永遠に俺の番だ。」
「うん。じゃ、ずっと一緒に居られるのね。」
「そうだな。」
「ウフフ…嬉しい。もう…征爾さんの時みたいに…悲しまなくていいのかな?」
「アヤを置いていくことは二度とない。そもそも…俺とアヤは今繋がりを作っているだろ?」
「あ、番のつながり…」
「そうだ。」
「でも、まだ完全じゃないから…」
「完全じゃなくても繋がりができ始めているのはわかるだろう?」
「うん…」
「感覚もだいぶつながってきたしな。」
「う…うん…」
「可愛いアヤ…」
「ヴァル…」
「俺が今どんな気持ちか…今のアヤならわかるだろう?」
「うん…まだ…何となくだけど…」
「俺もわかるよ、アヤ。」
「…ヴァ…ル…」
「このつながりが完全になれば…心の臓も繋がる。そうすれば、何があっても俺たちは1つであり離れることは無い。アヤは神の配偶者、妻となる。まぁ…そこまで繋がるにはまだ時間がかかるけどな。」
「ヴァル…私…そんな大役…」
「俺にもアヤにも、どんな称号がついても、どんな力を手に入れても、アヤはアヤで、俺の妻であり、俺の番、ただそれだけを知っていればいい。
「うん…」
「アヤ…俺が…今何をしたいか…わかるよな。」
「…うん…」
「アヤも…俺と同じだ…」
「うん…」
「寝室へ行こう。深くつながればつながるほど、何度も繋がればつながるほど、番の絆も強くなる。」
「う…ん…」
「アヤ…顔が赤い…可愛い…」
「だ、だって…ヴァルが…」
「俺が?」
「…う…うぅ…」
「そんな顔をしたら…また朝になっても離せなくなるだろ。」
「…い…いいもん…それでも…朝…ヴァルの…腕の中に居たいから…」
「アヤ…」
ヴァルテリがラヤーナを自分の方へ引き寄せ、頭をしっかりと抱えながらキスをする。ラヤーナは嬉しそうにそれを受け止め、ヴァルテリに自分の身体を預けた。そのままヴァルテリはラヤーナを抱き上げ、森の家の寝室に入っていった。
この日も、甘く深くつながりあう夜が待っている。