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俺たちの青春は非日常である  作者: ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
第1章  錯覚世界
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「一年四組、綾瀬日菜あやせひなよ。よろしく〜」


 少しチャラそうな元気の良すぎる少女であり、左の髪には、黒のシュシュで髪を結んでいた。どう見ても、この中で二十四時間何かの耐久レースを競ったら、最後まで残りそうな気がする。


 そして、最後に−−


「二年六組、真壁仁まかべじん


 眼鏡をかけた最後の一人は、またしても一学年上の先輩だった。


 ここに集まったのは二年生が二人、一年生が四人、合計六人だ。三年生がいなかったことには、何よりも救いだっただろう。ここに一人でもいたら気まずい。学生というものは、そういう生き物だ。学年が離れているほど、話しかけにくい。何年以上も一緒にいれば話は変わるが、この状況でこの少人数で良かったとも言えるだろう。


「俺が考えるには、この状況の中、この六人がなぜ集められたのか。ここ最近、身の回りで起こったことを話してくれないか?」


 真壁先輩は、話のネタを提案する。この先輩は、案外話の通じる人なのかもしれない。この状況でも冷静になって、安全運転で皆をまとめようとする。


「俺は記憶と人の入れ替えですかね。隣の氷童同じだと思いますよ。同じクラスですから」


 俺が言うと、氷童は小さく頷く。


「俺も同じだ」


「私も同じです」


 と、全員が同じことを言うが、綾瀬だけは違った。


「あのー、私の所は何も無かったわよ」


「そうか、綾瀬さんの所だけは無かったと……これじゃあ、俺と一緒だね。全てが同じとは限らないか……」


 真壁先輩が考え込む。ここで二つの別れ道ができた。身近で起きている人間とそうでない人間。確率に直すと3分の二の確率になる。これは、始まりに過ぎないのだろう。今度は何が起こるのか分からない。


「今、ここで悩んでも前に進まないんじゃないですかねぇ」


 俺は言った。本当の事だ。考えても今すぐに結論が出るわけではない。


「今日は家に帰って、明日、もう一度、ここに集まりましょう。もしかすると、次は違う世界になっているかもしれませんし……」


「それもそうね。私にはどうでもいい事だけど、ここは一度お開きにした方がいいわ」


 氷童が反省してくれた。他の奴らもそれに賛同してくれる。


 後に聞いた話によると、あの部室は俺たちの部室となっているらしく、なんと、入部届の証明書まであるのだ。


 部の名は、科学部。名前からしてみればマッチングしている。科学部に似たような部活がこの学校にもう一つある。理科学部だ。だが、その名は現在では抹消登録となっている。そして、代わりにできたのがこの科学部らしい。やれやれだ。どこかで俺たちを見ているであろう神様は、俺たちに試練を与えたのかもしれない。いや、考え過ぎかもしれないな。どうやら、俺の頭の中までおかしくなってしまったようだ。今日は今日、明日は明日の風が吹く。明日に『これは夢でした』、と願いたいものだ。




     × × ×




 翌日の朝−−


 俺は目を覚ますと、見覚えのない天井が自分の視界に入り込んできた。体を起こすと、見覚えのない布団、どうみても女物だ。辺りを見渡す。俺は自分の目がおかしくなったのかと思い、目を擦る。そこには、西高の女子制服だ。俺の部屋にはないものだ。おまけに部屋自体が全て違っている。俺は近くにある縦長の鏡の前に急いで立った。俺は言葉を失った。


 そこにあるはずの姿形はどこかに消え去り、性別すら変わっていた。この顔は俺じゃない。


 俺ではないが、俺なのだ。


「この顔は……」




 今日は早めに学校へつくと、すぐに俺と同じ状況であろう人物の元へと歩み寄った。


「ちょっと来い!」


 俺はそいつの手を引っ張り、人気のない場所へと移動する。この時間帯、教室から近い場所といえば、南校舎の二階の東の位置する場所ぐらいしかない。


 手を握ったまま、渡り廊下を渡り、いいところで足を止める。


「はぁ……」


 ため息を漏らす。


「どうやら早速起こってしまったみたいね」


 俺がようやく口を開いた。俺というか、その中にいる人物が言ったのだ。声は俺なのだが、口調が全く違う。俺は女喋りなどしない。そして、俺もまた、女声で男喋りをしているのだ。


「ああ……。まさか、こんなにも早く、次の現象が起こるとは俺も思っていなかったよ」


「そう。それにしてもなんで、あなたと私が入れ替わっているわけ?」


「それは俺の方が知りたいね。俺は何もしてねぇーし、何か起こした記憶なんてない」


 と、俺は答える。


 目の前には俺が、俺の前には氷童の姿があった。


「それはともかく、このままの姿で授業に出るのはまずいだろう」


「私は別に構わないわよ」


「俺が困るんだよ! よく、俺の姿で平然といられるなぁ?」


「平然じゃないわよ。私だって、少し驚いているわ。なんで、あなたのような人の体に入ってしまったのか。今でも後悔しているもの……」


 氷童は額に手を当てて、困っている様子を見せた。


「こっちはこっちで、授業中にサボれないんだよ。普通に窓の外を見ながら、ゆっくりと授業を受ける。そんな感じが好きだったのにどうすればいいんだよ……」


「真面目に勉強すればいいじゃない」


「いや、そうなんだけどさぁ……」


 俺は、氷童に本当のことを指摘されて落ち込む。


「とにかく、今日一日はこのままで過ごすしかないな。この姿だったら周りから話しかけられることもないだろうし、その点は大丈夫だが、俺の方は、男だからな。話を合わせるのは面倒だろうが、何も行動を起こすなよ」


 本当にこれでいいのだろうか。俺は、悩みに悩んで事の重大さをこの後、もっと思い知らされるとは思ってもいなかった。




 昼休み−−


 俺と氷童は教室を抜け出して、科学部の部室へと弁当を持っていった。扉を開けると、昨日の二人が集まっていた。不破と一ノ瀬だ。二年生の二人はまだ姿を現していない。部屋の中央には、テーブルが置かれており、それを囲うように俺たちは座る。俺の向かい側に氷童が座り、右横に不破が座っている。不破の向かい側には一ノ瀬が座って、弁当を食べ始めていた。


 少ししてから残りの二人もこの部屋に顔を出し、ようやく六人全員が出揃う。


 俺は間を開けてから口を開いた。


「少しいいですかね?」


 氷童の姿で手を上げると、皆が注目する。無理もない。昨日とおかしな点があるからだ。


「氷童さん、何かあったのですか?」


 不破が聞く。


「ああ、今朝、俺と氷童の姿が入れ替わっていた」


「え?」


 不破が驚く。周りの奴らも驚いた。どうやら、まだ見分けがついていなかったらしい。声は、氷童だから仕方がない。


「つまり、俺と氷童は別々の体に入れ替わっているんだよ。今朝、起きたらこうなっていたんだよ」


 俺が、氷童を指差して言う。

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