表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちの青春は非日常である  作者: ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
第1章  錯覚世界
4/14

「どうなっているんだよ。どう見てもおかしいだろうが……」


 俺の頭の中は混乱する。次から次へと、おかしな現象が起こっている。この状況を打破する手などあるはずがない。授業が始まる。担当教師もまた、クラスの奴らと同じように記憶を書き換えられているようだ。だとするならば、いなくなった人間に気づくはずだ。誰だ、一体誰がこんな世界を創った。


 混乱する中、俺は机の中を漁る。中に見覚えのない紙が入っていた。手にすると、二折りに畳まれており、俺はゆっくりとその紙を開ける。




『午後三時半、南校舎4階、元かるた部部室』




 と、書かれてあった。


 どういう事だろうか。これ書いたのは誰なのか。どうしてこれを俺に渡したのか。訊きたい事は山程ある。もし、仮にでもこの言葉を信じて行くとするならば、命の保証はないと思っていた方がいい。俺には今までの記憶がある。勝手に誰かに書き換えられていないのだ。この世界を支配してしまった野郎にしては、俺はイレギュラーと言っても過言ではない。だとするならば、この手紙は殺害予告を意味しているのだろうか。馬鹿馬鹿しい、そんなはずがある訳ないだろう。


 俺はその受け取った薄っぺらの手紙を皺くちゃに丸めて、学ランのポケットの中に入れた。


 犯人は一体誰だ。魔法や魔術なんて、こんな世界にありえない。そんな非科学的な現象は、作られた物語の中だけで十分だ。錬金術、陰陽も同様して選択肢の中から削除する。最後に残るとするならば、催眠術、宇宙人、マジック。しかし、どれも今の状況に当てはまるものなんて一つもない。


 どうする。時間が過ぎて行くばかりだ。対策しようなんてない。


 そんな事は繰り返し、繰り返し考えながらいつの間にか放課後になっていた。




 この学校は、月・水・金の三日間は、授業が五限目で終わる。


 下校の準備を終え、荷物を持つと手紙に書いてあった指示に従い、南校舎の指定された場所へと向かう。指定時間まで残り二十分。まだ、余裕がある。元かるた部の部室の前まで来ると足を止める。


 ここは数年前までは、本当に競技かるた部がいたらしく、全国大会まで出場したとか、しなかったとか、そんな曖昧な歴史がある。ドアノブに手を置き、回し、ゆっくりとドアを開けた。


 しかし、そこには驚く光景があった。いや、驚くというのは本当であるが、『俺』、一人ではなかったのだ。俺以外にも他の生徒がいたのだ。その中に一人、知っている人物がいた。意外だった。そいつの名は−−−−


 氷姫こと、氷童姫花。


 一体、何故彼女がここにいるのか、不可解な点がいくつかあるが、ここに集まったのは俺を合わせて五人という事だ。おそらく、彼らは俺と同じようにこの場に集められた人間なのだろう。


 時間まで残り十分。すると、もう一人、この教室にやって来る。


「す、すみません。し、失礼します!」


 時間ギリギリに滑り込んでもう一人女子生徒がやってきた。合計でこの場にいるのは六人。もう、時間的にこの人数で確定したと言ってもいいだろう。俺以外に男子三人、女子三人。バランス的には、丁度いい。そして、この六人の共通点を挙げるとするならば、この手紙を受け取った事と記憶が書き換えられていない事。この二つだろう。まだ、確認はしてないが俺の推理はあっているはずだ。


 六人全員は、一言も話さずに時間になるのを待つ。


 ジリジリジリジリジリジリジリ−−


 時間と同時に時計が鳴り出す。そして、目の前にあるパソコンが勝手に起動し始めた。


 俺はパソコンに表示される文字に注目する。




X:ここに六人全員が残っているはず。


 俺はパソコンの目の前に座り、謎のXと名乗る人物からのメールを読み、返答を返す。


『いる。あんたは一体何者だ』


X:ここに集まってもらったのは気づいているだろうか。


 俺の質問を無視するらしい。


『俺の質問は無視か?』


X:さて、話を本題に移そう。


 くそ、これじゃあ、話し合いにならねぇーじゃないか。


「退いて、私がするわ」


 と、俺からマウスとキーボードを奪ったのは氷童だった。俺よりも遥かに早いタイピングで文字を打って行く。


『本題とは?』


X:気づいているが、この世界は今までに見た事がない現象が起こっている。


「記憶と人が変わった事か?」


 俺はつい、言葉を漏らしてしまう。


『それは起こるはずのない事が起こってしまったって事?』


 氷童は俺の言葉を聞き漏らさずにそのまま自分の言葉で返信した。


X:そうだ。これは君達の世界でこの現象は起こるはずのない現象。これから先も起こるだろう。


『それを解決するためには?』


X:君達の無事を祈っている。Believe in you.


 そして、一方的にパソコンの電源は切れた。氷童は、もう一度電源を入れるが、起動しても画面は変わっていた。


 最後の言葉は、『君達を信じる』という言葉だ。どういう意味だ? 誰を信じているんだ? 俺たちがどうしろという。何もわからないまま難易度の高いゲームをクリアしろと言われているようなものだ。


 氷童は電源を消し、六人は畳の上に座り込む。沈黙が続き、一人の少女が手を挙げた。


「あのー、これって……どういうことなんでしょうか?」


「そうですね。これは簡単に言えば超次元現象とでも言ってもいいかもしれませんね。いや、認めなければならないでしょう」


 隣に座っている男子生徒がそう言った。


「そうね。あり得ない事があり得るようになっている。これはどう考えてもひっくり返せない。私達にこの状況を打破する策がない。それが真実よ」


 氷童が言った。


 ま、そうなるだろう。


「まずは自己紹介でもしないか? 話をしようにも名前を聞かなければ、話し合いにもならないだろ?」


 俺はさりげなく提案してみる。俺からしてみれば誰が誰なのか、判りもしない。ここで名前を訊いておけば、後で訊かなくてもいいだろう。


「そうね。そうしましょうか」


 氷童は、俺の提案に乗る。


「まずは俺からだ。一年三組、真田伊織だ」


「同じく、一年三組、氷童姫花」


 俺から時計回りに順に自己紹介をしていく。


「一年一組、不破真也ふわしんやと言います」


 さっきの優男が挨拶をする。身長とルックスは、光一と同じレベルでこっちの方が女子に人気がありそうにも見える。髪の色が少し茶色が入っている。多分地毛だろう。母親の方が、元々茶色だったらDNAで子供にもその影響を受ける事がある。


「二年二組、一ノ瀬志穂いちのせしほです。よろしくお願いします……」


 意外だった、彼女はなんと、一つ上の二年生らしい。どう見ても俺たちと同じ一年生か、中学生に見える容姿であり、髪も肩の位置まで伸ばしている。人を見た目で判断してはならないというのはこういう事だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ