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俺たちの青春は非日常である  作者: ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
第1章  錯覚世界
3/14

「朝の海だよ。ほら、朝からサーフィンを久しぶりにやろうかなって思っているんだよ。昔、良くやっていただろ?」


「ああ、冷たいんだよなぁ。朝の海に入るのは……。それに今はまだ、春だしな……」


 俺はやりたくないオーラを出すが、光一はそんな事御構い無しに俺を誘ってきやがる。ここ、南国の県は、サーフィンの聖地としても有名であり、毎年九月上旬ごろになると、国際大会が行なわれる。この国際大会には世界中のトッププロ選手が集まり、熱い戦いをしているのだ。


「そこを何とか? 朝から俺に付き合ってくれるのはお前しかいないだろ?」


 と、俺に手を合わせて頼んでくる。


「まぁ、海は一人で来るものじゃないからな」


 俺は、チラッと光一の方を見る。光一はそれを見越して、追加オプションを付けてきたのだ。


「分かった。帰りにコンビニで何か奢ってあげるから……」


「決まりだな。忘れるなよ」


 交渉成立。ま、これぐらいの礼はしてもらわないと困る。朝サーフィンは、趣味でやっている人も多く、朝から結構な人を見かける。それに今日の日差しは、明日も続くらしい。天候は良好だ。海で泳いでいても問題ないだろう。


 そう思いながら、俺は弁当の中身を全て食べ終えた。




     × × ×




 翌日−−


 俺はサーフボードを背中に背負い、朝の五時頃から近くの海に直行していた。空はまだ薄暗く、東の地平線上から太陽が少しだけ顔を出していた。海には、十数人のサーファー達が、朝から冷たい海に入り、波に乗っている。時計を確認し、辺りを見渡すが光一の姿が見当たらない。奴から誘ってきたのにその当の本人が居ないのはどういった心境だろうか。少し待つが、姿が見えない。十分、二十分、待っても光一の姿は一向に見えない。


 そして、三十分が過ぎた頃−−


 光一はここに現れなかった。太陽も昇り始め、日の出時間も過ぎている。俺は電話を掛けてみるが、繋がらない。つまり、音信不通の状態だ。今まで、こんなことはなかった。急用が出来た場合は、連絡を必ず入れてくる奴だ。一体どうしたのだろうか。気になってしょうがない。心配だ。


 仕方なく、そのまま何もせずに帰ることにした。


 家に帰り、朝食ができるまでの時間、もう一度眠りにつく。目覚まし時計が鳴り、再び起きると、太陽は昇っていた。すぐに制服に着替え、朝食を食べ終えると、弁当をバックの中に入れ、家を出る。自転車を漕ぎ、二十分後には西高に着いていた。


 いつもの時間帯にたどり着く、いつも通りの生活が送れるという事なのだ。今朝の事を除いては−−−−


 教室に入ると、いつもと同じくらいのクラスメイトが教室の中にいる。その中に光一の姿もあった。俺は自分の机の横に荷物を置き、席に座る。すると、光一がやってくる。約束を破った人間が、朝っぱらから笑顔で友人Bに話しかけてくるのはどうであろうか。


「よっ!」


 挨拶してくる光一。


「…………」


 俺は不機嫌であり、ヘラヘラしている光一を睨みつける。


「ど、どうしたんだ? 朝から不機嫌そうだぞ、お前……」


 と、何もなかった風にいってくる。誰のせいだ、誰の……。


「不機嫌そうな顔をしているならば、それは真実なのだろう。誰のせいなのか、いって欲しいものだねぇ。なぁ、光一君」


「何を言っているんだ?」


「お前、昨日のことを忘れたとでも言うのか? お前が、俺に今朝、サーフィンに誘ったんだろうが!」


 俺は、光一にはっきりと言った。反応を見ると、光一の奴はキョトンとした顔で首を傾げている。可笑しい、俺の聞き間違いではない。昨日、帰りに飲み物も奢ってもらった。はっきりと覚えている。だが、なぜだ。何か、違和感を覚える。


「俺が? なんでお前に? そもそも、俺はサーフィンなんてしたことがないぞ」


「え……」


 今、なんて言った? Whe? 俺自身、何も分かっていない。俺の聞き間違いだろうか。サーフィンをした事がない? 可笑しい、中学から一緒に暇があれば一緒に行っていた記憶は確かにある。しかし、光一はした事がないって言った。どうしてだ。明らかにおかしい。俺をからかっているのか? いや、朝からそんな冗談はないはずだ。


「いやいや、冗談はよしてくれよ。お前は、俺と一緒に中学の頃からサーフィンに行った事があるぞ!」


 俺はスマホを取り出し、去年の夏の写真を探し始める。


「う、嘘だろ……」


 俺は自分の写真ファイルを見て、驚愕する。そこに写っていたのは海辺をバックにピースサインをする俺と光一だったはずなのだが、俺の隣に光一の姿はなかった。他の写真を見ても、俺だけの写真がたくさんある。なぜだ。どうしてだ。どうしてこうなっているんだ。頭の整理がおいつかない。


 額に手を当てて、顔からは汗が流れる。


「なぁ、光一」


「なんだ?」


「俺の頬を抓ってくれないか?」


「それはいいけど……」


 と、光一は俺の言われた通りに頬を抓る。


「痛っ!」


 現実だ。嘘偽りの無い、現実だ。どうしてこうなった。俺だけが可笑しいのか?


「だ、大丈夫か?」


「おい、一緒に行った事があるよな!」


 光一の肩を揺さぶり、俺は光一に言い寄る。だが、光一は俺の変な行動に対して、驚いている。


「ねぇーよ。俺はお前がサーフィンをしていた事自体、初耳だ!」


 ハッキリと言われる。


「は……ははは! 嘘だよな。こんな事が起こってたまるものか……。どうなってやがるんだよ。おかしいだろ? 夢なら覚めてくれよ……」


 俺は授業が始まるまで薄笑い続けた。


 それから俺は放課後になるまで一日中、授業の内容が全く頭の中に入らなかった。




 放課後−−


 夕日色に染められた教室に俺はポツンと、座っていた。教室内には下校する生徒や部活に行く生徒、課題をしている生徒に別れていた。


 朝から訳の分からない現象。自分では何が起こったのかもいまだに実感が湧かない。ただただ時間が過ぎるだけだ。


「帰るか……」


 俺は荷物を持って家に帰った。


 一日中考えたせいなのか、今日はいつもより睡魔が早く襲ってきた。段々、眠くなってくる。気付いた頃には、眠っていた。そして、朝がやってくる。




 世界線が変わってから一日目−−


 俺は昨日のことがうそであることを願って学校へと登校した。


 そして、もう一度、光一に昨日の話をしてみる。今度は優しめに話し掛けて−−。


 だが、結果は変わらなかった。おまけにクラス内がおかしな事になっている。昨日まで居たはずの生徒がいないのだ。その代わりに知らない生徒がいなくなった生徒の席に座っている。人数も減り、周りの人間は、それに気付いていない。

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