表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

01

 灰色の雲ひとつなく、夜空には綺麗な満月が輝いていた。セシリアは部屋の窓を開け、窓際にそっと鞘を抜いた短剣を置く。磨かれた刃は鏡のごとく、空を映し出す。


 剣の角度を微妙に変えて、刃の部分で月を捉えた。それを見て、セシリアはおもむろに瞳を閉じる。


 どうか皆、無事でありますように。


 細くて艶やかな金の髪が外からの風によってゆるやかになびく。目を開けて剣を見れば、捕まえていた月がいない。


 ぱっと空に視線を移せば、先ほどまで、まったくなかった薄雲が月を隠そうとしていた。


 月の光が弱まり、輪郭がぼやけていく。にわかに息遣いを弱めるのと同時に心臓が不規則に打ち出した。


 この胸騒ぎはなんなのか。意味も根拠もない。きっとそうだ。自分に言い聞かせ、セシリアが胸元の夜着の布をぎゅっと握った。


 しかし彼女はこの後、本当に意味も根拠もないのは、ただ遠くで願うだけの自分のこの行為だったのだと、嫌というほど思い知ることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ