23、閑話 悩める辺境伯令嬢
呆然としてしまった。
レッドドラゴンを一刀のもとで倒すとは。
恐ろしいほどの強者だ。
敵になれば絶対に勝てない。
敵になってはいけない。
貴重な薬草ハイフレアライトも無料で分けてもらった。
すごく優しい?
それとも天然か。愚者か?
はじめて会う人間を信じるものではないというのこの世界の常識だ。
ある能力を持っていなければ。
それは相手の本質を見る能力。
私の魔眼のように。
そして私は知っている。彼の本質は『善』だ。
裏表もなく純粋に私を助けようとしてくれている。正義を貫くものだ。
ただ私たちが自分の正義に沿うものと彼は判断できたのか。
強者の彼を利用しよう考える者とと疑わないのか?
もっと彼のことを知りたいが今は一刻も早くミナオサへ戻りたい。
私、アリサ フォン ミナオサの勘が正しければ彼は恐らく・・・・。
「斥候に命じて彼を監視するように。町への入場も優遇、身分証も持っていないだろうから用意しておくように。」
彼はミナグ商会の商隊と共にミナオサに入ってきたという。
それも盗賊に襲われていた商隊を助け盗賊の一味を拘束してきた。
最近、街道に出没していた盗賊には大変に困っていた。
騎士隊を出しても見つからず難儀していたのがこれほど簡単に解決してくれるとは。
やはり彼は・・・・。
これほどの強者とこれからどのように接点をもったらよいのか?
大変に悩ましいところだ。
彼から譲り受けて薬草で作った薬で父母や兄弟姉妹も回復に向かっている。
辺境伯である父が完全回復するにはまだ時間が必要だ。
それまでに彼がどこかに行ってしまうと困る。
彼が自己の事しか考えないような人物に囲い込まれても困る。
ここは私が動かなければいけない。
「アリサ様」
「どうでしたか。」
「はい、タカシ様はこの町で魔道具店を開こうと考えていられるようです。」
「ということはこの町に滞在してくださるということですね。」
「はい、商業ギルドに登録されたようです。」
「あれほど強いのにハンターギルドでなく商業ギルドですか。まあ、魔道具店を開くには商業ギルドに加入するのは当たり前でしょうが。」
「今はミナグ商会の協力で魔道具店開店の準備にかかっているようです。」
「わかりました。それとなく開店に向けてサポートしていきましょう。彼ほどの人物を他の町に取られるわけにはいきません。」
「わかりました。」
正直に言えば彼を当家に取り入れたい。しかし選択を間違えるわけにはいかない。
聖女様の予言が正しければ彼こそこの世界の救世主だろうから。
お読みいただきありがとうございます。




