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8話 ムンタウンギルド総会


「では、今月のギルド総会を始めます。では先ず本日の要点を纏めた紙を渡しますので、各冒険者チームのリーダーさん取りに来てください」


現在、俺とシラメは冒険者ギルドのカウンター前に並べられた椅子に座っていた。

スライム討伐の報告をした後、チルさんに来るように言われた俺とシラメは何が始まるのか全くわからないまま在席していた。


俺達以外にも複数の冒険者がギルドに集まっており、椅子に座れなかった連中は後方で立っていた。

俺は朝早くから来ていたので、無事椅子を確保することができた。


「ねえマコトがリーダーだから取りに行ってきてね」

「はいはい。......?!俺がリーダー?」

「そうよ。私そういうまとめ役みたいなの苦手だから、登録の時にマコトをリーダー欄に記入しておいたの」

「はぁ。まあいいけどね」


正直シラメがリーダーを務めるよりはマシだ。

何故って?この子ったらもうギルドで随分と話題になっているんですもの。

悲しいよ。狂人なんて二つ名が付いてるんだよ?俺の仲間。

そんな奴がリーダーを務めるチームなんて、誰が入りたいんだって話だからな。

だから俺がリーダーである点は少し安心した。


「おはようマコト殿。来てくれて良かった」

俺が紙を取りにカウンターまで行くと、カウンターの向こう側に立つギルマスのシャニィさんに声をかけられた。


「おはようございます。まさかこのような会があるのは驚きました」

「そうか?必要だと思うがな。一ヶ月間の出来事を報告して現状このムンタウンのギルドがどのような状態にあるのかを把握する。まあ主に問題児が何をしているのかを把握するってことなんだがな。はは......はぁ」

「あ、あー。なるほど」


シャニィさんは普段は毅然とした態度で、歴戦の猛者のような雰囲気を感じさせる人なのだが、俺の前ではなんとも素の部分を見せてくれているようで、親しみやすい。

まあそれもこれも問題児を監視する立場にあるという、共通の難題があるからなのだが。


「マコト殿。この後私の部屋で飲まないか?色々と溜まっているものがあってな」


シャニィさん。お誘いは嬉しいですが、そのなんというのでしょう。その言い方は誤解を招くというかなどと言えるはずもなく。


「この後は予定がありますので、別の機会に是非」

と答える俺だった。

まあ下心があっても俺は無理矢理はしない。了承の上でなら是非行きたいが、クエストをこなさないと金が無く、食事ができないのだ。

ここ数日は、飯をほぼ食べておらず飯の話題を俺もシラメも自然と避けている。


はあ。誘われたら飯食えるかなぁ。飯かぁ。日本にいた頃が懐かしい。毎日食べられていたもんなあ。

シャニィさんにご馳走してもらえないかな。


「うっわ。キモ。なんでそんなにニヤニヤしながら戻ってくるわけ?」

「なっ!に、ニヤニヤなんてしていない」


危ねぇ。顔に出ていたか。

席に戻り速攻でシラメにそう言われて、俺は顔をパンパンと手で叩き、気持ちを入れ替えた。

というか、飲みに誘われた事より飯の事でニヤニヤしているというのはどうなのだろうか。


「では皆さんに行き渡ったということで、先ずは1つ目の題からです」


ムンタウンギルド総会【春】


【1】達成クエスト状況

Sランククエスト0

Aランククエスト1

Bランククエスト3

Cランククエスト18

Dランククエスト56

Eランククエスト78

Fランククエスト119


「知っての通り、新人冒険者はFランクから始まります。そして今月は新人さん達が数名ギルドに入って貰ったこともあり、Fランククエストの達成率が非常に上がっております。しかし逆に上位のクエスト達成率が少ないです」


こんなに一つ一つ丁寧に話して行くのか。本当に会議みたいな感じだな。

というかFランクが最低ランクなんて初耳だぞ。シラメが勝手に登録して来て、その時の説明を俺にしてくれないからその辺の情報が抜けてしまっている。


「上位のプレイヤーがこの街にはいません。ですから後日王国から1チームこちらに派遣してもらう事になりました。来ていただくチームは【ヴァジュラ】の皆さんです」


チルさんがそう言った途端、ギルドに集まっていた冒険者連中からオォという声上がっていた。


「有名な人?」

「知らん。でも周りの反応的に有名なんじゃないか?」

「使えないわね。ねえトサカ。そのヴァなんとやらは強いの?」


シラメは自分の後ろの席に座る冒険者チームカスタネットのリーダーのトロンゴに話しかけた。

トロンゴは金髪モヒカンという髪型をしており、それをシラメはトサカというあだ名で呼んでいる。


「ん?ああヴァジュラは実際には見たことはないが、相当強いらしい。なんてったってAランクの冒険者チームだからな」

「ふーん。Aランクね。まあこの達成率を見ても上位の人は必要そうだからね。調子乗ってたらぶっ刺しちゃうかも」

「おいヤメろ」

「冗談に決まってるじゃない。マコトは冗談も通じないの?」


もうこの子ったら。前科ありはもう冗談じゃないからね。

実行に移る可能性が大いにあるんだから、それもAランクの先輩になんてやったら絶対殺される。


「ゴホン。煩いですね。黙らないと口を縫っちゃいますよ?」

チルさんが笑顔で、待ち針を取り出した。


その一言で、雑談をしていた冒険者達は黙り込んでしまった。


うっわ怖ッ。

チルさん......待ち針で固定してから、しっかり縫う気かよ。

シャニィさんが頭を抱えてらっしゃる。


「では2を見てください」

笑顔で続行。

シャニィさん本当にこんな人しか、雇う人いなかったのかな。


【2】今月の問題点

・血判で悲劇事件8回

・服を切り裂く通り魔

・街の外で女を引きずる男

・テレポート魔法誤爆

・ギルド血塗れ事件

・銭湯の薪風呂釜に不純物投入



「一月でこの数は問題だと、ギルマスであるシャニィさんが言うのですが、問題点......無いですよね。では次で最後です」


は?無いですって?あるあるよ。問題点。まあでもこの中の半分くらいが心当たりがあるんだよなぁ。

銭湯の薪風呂釜に不純物投入ってまさか、昨日のスライムの事なんじゃ。


隣を見ると、シラメが肩を震わせて笑いを堪えていた。


「あります!問題点!あります!チル、スルーをしてはいけない。さあ問題を少なくするために対策を考えましょう」


シャニィさんがそう言うも、ギルドの冒険者連中は何言ってんのこの人っていう顔で見る人と、今その話をするのは危険だと判断した者で別れ、誰1人としてその話に乗る者はいなかった。


俺も目を逸らして、話題が変わるのを待った。

狂人連中がこの中にもまだいるのであれば、それはそいつらがいない時に話す事だと俺は思うわけだ。


【狂人対策会】のような物を作らないかシャニィさんに今度相談してみよう。




「最後はこちらです3を見てください」


【3】魔王軍

・動き無し


「という事です。平和で何よりですね。では今回の総会はこれにて終了。みなさんご参加いただきありがとうございました」


チルさんが最後の挨拶を終えると、冒険者達は続々とギルドを出て行った。

総勢30チームくらいがあり、残ったのは4チームくらいだった。


俺は最後の言葉に引っかかっていた。


「やっぱり魔王いるのね。まあ定番ちゃ定番だが」

「魔王ってさ、目的なんなんだろうね。ゲームとかでも結局なんとなくで倒すけど最初から自分で行動したらそうはならなかっただろうし、仲間と連携すればもっと強いと思うの。1人にこだわって結果勇者に負けるって自業自得じゃない?」

「ゲームだから仕方ないだろ。そんな変な事言ってないで、俺達もクエスト行くぞ。金が無いんだから」

「いいけどさ、戦うの私よね?だからはい」


シラメは俺に剣を渡してきた。

鉄で出来た鞘。剣を抜くと綺麗な剣身が光った。

シラメが先程から剣を椅子の下に置いていたので、シラメが買ってきたのかと思ったが、まさかの俺用だった。


「正直これに関しては嬉しい。ありがとう」

「素直にありがとうでいいのに。まあ私は手で戦えるけど、マコトは回復担当だからね。買っていたの」

「いいけど、言っとくけど。ゲームとかだったら回復担当は杖を装備したりするんだからな?」

「え?私は昔やってたゲームで回復担当のキャラに槍を持たせていたわよ?引きこもって回復だけしていればいいなんて甘えだから」


なんというか、シラメは全キャラ前で戦わせたいのだろうか。

槍なんて渡されても使い方知らねーし。剣も知らないが、雰囲気で振り回せば強そうだから。

無いよりはあった方がいい。


まあでも俺は回復だから杖とかスティックが欲しかったんだけどね。


俺は剣を腰のベルトにはめて、帯剣した。

しっくりはこないけど、やっと冒険者らしくなったよな。

後はこの背中面がオープンしている服だけだな。


「んじゃこれ受けてくるね」


そう言ってシラメがカウンターへ向かった。


え?何を取った?


【コボルトの討伐】


【 クエスト】コボルト5匹の討伐

【クリア条件】コボルトの魔石5つ納付

【失敗条件】3日以内に未達成

【失敗時罰】銀貨2枚

【報酬】銀貨1枚

【受注条件】冒険者ランクF以上


【コボルト参照写真】



そこには2足で立ち、手には剣を持った犬の顔をしており、身体は人に近いモンスターだった。

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