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5話 ゴブリンと狂気の女シラメ



街を出て、地図に示された森までは街から直線で15分の場所にあった。


「ゴブリンってのはこの森にいるみたいだけど、パッと見では見つからないな」

俺とシラメは森に入るり、お互いが離れすぎないように、視界の端に納めるようにしながら、動いていた。


俺の武器は先ほどの剥ぎ取り用と、渡された武器だが、武器が何もなく、スキルも魔法も攻撃に役立つものは無いので、ナイフを抜いて持ち歩いていた。


「森の中に潜んでるとなると、探すのに時間がかかりそうだな」

...

......

「ゴブリンってのはどのくらいのサイズなんだろうな。写真だと判断つきにくいな。俺達より大きかったらどうする?」

...

......

先程から声をかけていたのだが、全然返答が無いので、先程までシラメがいた場所を見たが、シラメの姿はなかった。

「シラメ!?どこ行った!遠くに行き過ぎるなよ!」

遠くに行くなよって、小さな子供が親に言われる台詞だよな。

それを歳上に使ってるっていうのが変だ。でもシラメになら仕方のないことなのだが。


「どしたん?」

俺の声が聞こえたのか、シラメが木々の間から顔を覗かせた。

シラメが俺の方へ歩いて来たのだが、その顔やドロドロだったワンピースに、緑色の液体が大量に付着している。

そしてシラメさんが手に何か持ってらっしゃる。


緑色の肌に、目と口と尖った鼻と尖った耳が付いたモノ。

そしてその顎の下の部位からは少しだけ、首らしきモノがあり、その部位からダラダラと緑色の液体を流していた。


「な、なんでしょうかソレ」

俺はそのなんとなく察しは付くが、そうでないと願いそのブツが何なのか、緑色の頭らしきモノを指差して問うた。


「へ?だからゴブリンじゃん?見てわからないとかウケる」

「ですよねえ」

ふふと笑いながら、シラメはゴブリンの首を持ちながら、俺の隣まで来た。


「はいやって」

シラメは首を俺の隣に置くと、何かをやれと命じて来た。

「何を?」

「は?だから魔石取りじゃん。フツーわかるじゃん」


俺はそう言われ、咄嗟に己が間違えているのかと思い、ズボンの後ろポケットに入っている、紙を見た。


そこにはハッキリとこう書かれていた。


[ゴブリンの魔石は人でいうところの、心臓付近にありますので、その付近をそのナイフで切り裂いてくださいね。新人さんお二人の活躍を期待しています]


受付嬢さんより、メッセージが書かれていたのだ。シラメは説明を受けたはずだ。それを忘れるなんてあるだろうか。

そしてこのメッセージ。心臓付近を切り裂けと書かれており、本来は狂気的なメッセージな訳だが。


「目の前にこれだもんなぁ」

頭をガッチリと掴み、持ち歩いてくるシラメの影響か、心臓付近にある魔石取りという言葉は割と簡単のように思えてしまった。


「何よ?」

「魔石は心臓付近にあるそうだ。だからこの......頭?じゃ無理」

「えぇ!まじぃ。ショックだわ。仕方ない。胴体も取ってくるか」

この人から発せられるワードが全て、聞き馴染みの無い言葉なんだが。

胴体も取ってくるかなんて、怖すぎる。


「ああそれと。マコトも働いてよね。魔石取りは任せるけど、せめて1匹くらいは倒してね」

シラメは手を振りながら、先程首を持って来た方へ歩いて行った。


1匹というよりも、俺もこの世界に馴染むためには数匹は倒したいところだが、見渡してもゴブリンの姿が見当たら無いのだ。


参考までに見学してみるか。


既に1匹狩っているシラメがどのようにしているのか、それを見るために俺はシラメが去った方へ足を進めた。


少し進むとすぐにその姿は見つかった。


俺は木の後ろに身を潜め、シラメを見学することにした。

ストーカーみたいだが、仕方ない。これは勉強の為でもあるのだ。


しかし周りを見てもゴブリンの姿はない。

何処にいるのだろうか。


すると突然、木の上から人影がシラメめがけて飛んで行った。

シラメはそれを目の端で捉えたのか、すんでのところで避けると、それは地に着地した。

布の服を着て、銅色の短剣を持ったゴブリンだった。


うん?武装してるじゃん。


俺、剥ぎ取り用の武器しかないのに、勝てるわけなくね?

シラメのやつも危ないんじゃ......


「キタワァァアアアアアアア」

シラメさん......。

シラメは発狂と共に、その手が鋭く尖る。スキルによる硬化だ。


「グガァ」

ゴブリンが声を出して、剣を振り上げた。

その瞬間だった。


ゴブリンの剣を持つ腕が飛んだ。


「首を飛ばそうとしたのに、動かないでよね。腕を振り上げるからズレたじゃん。まあいいけど」

パッとシラメが腕を横一文字に振り抜くと、ゴブリンの首が落ちた。


「あぁ魔石は胴体だったわね。ややこしいなあ」

一回首を持ったシラメだったが、それを離して胴体を抱えて歩いてきた。

首がお好きなんですね......。


「後そこに隠れてる奴。バレバレよ!」

スッと俺の目の横を鋭利な剣が通過した。


「ヌワァ!!」

シラメが先程ゴブリンが持っていた剣を、俺が隠れていた木めがけて投げてきたのだ。

俺が声を上げて立ち上がると、シラメは驚いたような顔で見ていた。


「マコトじゃん?何覗き見?趣味悪ぅ」


謝れとは言えないか。うん?言えないよな。隠れていたのは俺だし、敵の可能性だってあるわけだ。仕方のない行動だ。

もうそういうことにしておこう。


「見学だよ。どんな風にやってるのかなって」

「あーそゆことね。丁度良かったわ。こんなキモいの運ぶの嫌だったから、魔石取り出しちゃって」

俺の前にゴブリンの胴体。右腕と首無しが置かれた。


「わ、わかった」

俺は受付嬢のメッセージ通り、胸に剣を突き立てると、ゴブリンの死体が消え、その代わり紫色の石が出てきた。


「消えた!?」

「消えたわね。どうなってるのかな。その剣で刺すと魔石になるって事ことかな?」

二人で少し驚いたが、まあそうなっているんだろうという結論に至り、1個目の首に突き刺して見た。


「反応無いわね」

「つまり、核となる部位。ゴブリンなら胸を突かないといけないわけか」

「面倒ね。1匹目はその辺で倒したのだけど、そいつを探してたら別のゴブリンと出会えたし、さっきの1匹目は忘れましょ」

シラメはそう言うとまた木々の間に、消えて行った。



「よし。俺は俺らしくだ。死体探そう」

危険だ。危険。あの女平気で首をはねやがった。

普通剣を振り上げている相手に向かって、こちらも攻勢に出れるか?出られるとしてもそれはある程度の場数をこなした者だろ?


あいつ数時間前まで、地球で彼氏作ったり、して結果自殺した女だぞ?

まあ自殺する女だから、死に関しては平然としていられるのか?

...

......


「そんなはずはねぇ!」

近くに落ちていた、ゴブリンらしき緑色の胸に剣を指した。

先程と同じように紫色の石が出てきた。


「やはり条件があるみたいだ。すぐ近くにあるじゃん」


それに遠目で見たのと、首が取れたやつしか見ていないが、それでも背丈的に俺の腰下くらいだったから、俺でも戦える可能性はあるが、油断は禁物だ。


それとある程度の防具と武器を装備していると、考えるべきだな。

あとは奇襲対策か。奇襲されたら元も子もな


「イッ」


突然、脇腹を襲う激痛。

脇腹を見てみると、そこには短剣を俺の脇腹に刺しているゴブリンがいた。


「奇襲されとるがな」


関西弁っぽいものが口から出たが、心は冷静でいることができた。

そりゃね?短剣が刺さっているのですから、驚きますよ?痛みもあります。

でもね?


「こちらとら手で腹を貫かれてるんだよ。これくらいなんともねーわ!」

おもいっきりゴブリンの顔面を殴り、倒れたゴブリンの頭に、我が身に突き刺さっている短剣を抜刀し、突き刺した。

ゴブリンから緑色の血が吹き出して、絶命した。

「それでも痛いんだよ!傷口広がってるじゃん」


自分の身体を鞘に見立てて、抜刀してみたものの、短剣を抜くと同時に腹が切れてすごく痛い。

「ヒール」

「ヒール」

「ヒール」

3回脇腹を触りヒールを使うと、痛みは消え、傷口も消えた。

何度か使うとその分、回復もできるわけだな。

忘れないようにゴブリンの胸に、貸し出されたナイフを突き立て、ゴブリン魔石に変えた。


「何で鞘を持ち歩かないかな」

ゴブリンが俺に突き刺した短剣を持って、そう呟いた。

刀身が裸のまま持ち歩くなんて物騒だよな。

鞘があれば持ち帰れるのだが。


「おつー。やればできんじゃん、ほいこれ」

シラメは俺の戦いを見ていたのか、褒められた。

そしてシラメの腕から降ろされた物体達。

6つの胴体。


「いやー戦士ってジョブのせいか力が湧いてくるのよねぇ〜6匹でも持てちゃった」

てへと可愛く舌を見せるシラメさん。

身体中緑色の返り血を浴び、全然可愛くない。

むしろ怖い。


それに6匹なんていらないのだが。

「まあ経験値になるみたいだからね。倒しておいたの。まあ売れば魔石はお金にはなると思うから、多いに越したことはないでしょ?」

すごく真っ当な事を言われたのだが、シラメから言われると間違った意見のように思えてしまう。


俺は6匹全てを魔石に変え、報告のためギルドへ戻ることにした。


「ちなみにシラメはさ、今レベル何?」

帰り道に俺は気になったので、シラメに聞いてみると、シラメはステータスを発動し、それを見て答えた。


「3ね」

「上がりすぎじゃないですか?ほらゴブリン計8匹しか倒してないじゃん?」

「え?」

シラメは何言ってるのこの人って顔で、俺を見た。

「私、15匹くらい倒したわよ?持っていけないから、持てる分だけ持ったの」

「あー。あー。はい。左様ですか」

もうこの子はお茶目さんなんだから!

はははと笑いながらも、俺はこの先が不安で仕方ないのだった。


もうホント仲間増やそうかな。こいつの面倒を一人で見るのは無理がある。


ああ。誰か一緒にシラメの面倒見てくれないかな。

明日も7時に投稿します。

よろしくお願いします。

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