48話 王と魔王
「なんだこれは!」
王都で一人の男が叫んだ。
それを聞いて、その男の隣に控えていた者が窓の外を見る。
「魔法......でしょうか」
空から無数に降り注ぐ光の粒は、人々の身体を打ち抜いていた。
しかし打ち抜かれた者達はピンピンしているという。
粒は窓を通過して、城内にいる者達の身体の中にも入って行っていた。
「王よ!お逃げください!これがなんなのか判明するまではここは危険です!」
男の前に一人走って来た、鎧を装備した男は汗をダラダラと流しながら王と呼んだ男の前に頭を下げた。
王と呼ばれた男は、玉座に座り、筋骨隆々な肉体に鎧を装備しており、無精髭を生やした中年男性だ。
「馬鹿者が!王が民を放って逃げるなんてできるわけがなかろうが!何なのだこれは」
王は玉座に座して、その光景を見ていたがやがて王にも光の粒子が降り注ぐ。
「マジックディフェンス。マジックプロテクター」
王がそういうと、王を守るように光の壁が出現した。
王の身を守るように王の身体に薄い光の膜が張られ、王は魔法に対する耐性を作った。
「解析の魔眼」
王の目の色が赤く変色し、王は飛び交う光の粒子を見た。
「ふむ。なるほどな」
「王よ、ここは私が身代わりに」
「よい。タッザよ、一つ覚えておくことを命じる」
「は!どのようなことでしょうか」
「今日あった事を覚えておけ!必ずだ」
「承知!」
「フハハハハハハハハハハハ!神域か!神域魔法とは誠に常識を知らぬよなァッ!ルーファアアアアス!見たぞ!我は見た!小娘いつか今日の礼をしに参る!覚えておくがよい!」
王は両手を広げ、笑いながら叫んだ。
そして王の身体に光の粒子が打ち込まれた。
そして王は今日という日に起きた出来事や、彼等に関する情報を忘れた。
ーーーーーー
「それで、各地に派遣した支部はどうなっていますか?」
薄暗い部屋の中、円卓を囲み座る男が対面する女に尋ねた。
「ウチに聞かないで。あーでもウチんとこの幽霊支部は崩壊。たく。最後まで使えない奴ら」
紅い瞳の女はウェーブのかかった金髪をくるくると指で巻きながら、気怠そうに答えた。
「アスタロトよ。お主は部下の管理がなっていない。支部組織をいくつ壊滅させれば気がすむのだ」
円卓を囲んで座る角髪の髪型の男が、口を出した。
「ヤマトうるさい。田舎暮らしが長過ぎてウチらの美学がわからなくなったんじゃない?」
「何?部下の幹部を失った者が言えたことではないな。幹部を失うことが美学というのであれば、私はその美学とやらは美とは思えぬな」
その一言をキッカケに、アスタロトと呼ばれた女は宙に無数の魔法陣を展開させた。
それに応える用にヤマトと呼ばれた男は、腰に携えていた黒剣を抜いた。
「へえ。神器を抜くんだ。ま、いいけど。それは本気で殺し合うって事でいいんだよね?」
「お主こそ、神域魔法を多重展開と範囲展開を同時に行って、殺すつもりはないとは言えたものではないぞ?」
二人が纏うオーラが高まり、一気に弾けた。
「多重合成砲撃」
その瞬間、全ての魔法陣から様々な属性の光の光線がヤマト目掛けて発射された。
「甘いですね。八咫の鏡」
ヤマトがそう叫ぶとどこからともなく、丸い鏡が出現した。
その鏡は魔法を一点に受け止めて、搔き消した。
「お返ししますよ。反射・天源」
鏡の中に吸収された魔法達は原初の形、魔法として形を変える前の魔力の素へと戻り、魔力の塊が収束し一気に解放される。
「ちっ!めんどい!」
アスタロトはそれを跳躍して避け、体を数度回転させ壁に着地した。
壁の上に床のように立ち。
アスタロトはヤマトを睨む。
「殺す気だったわね」
「何故お避けに?魔法を反射できるだろうに」
「魔法じゃないからよ。魔力の塊なんてくらったら、流石にただじゃすまないっての」
「お前達。その辺にしておきなさい」
最初に派遣の話題を出した、男が二人の間に立ち、戦闘を止めに入った。
「ルシファー。あなたのところの支部が退職届けを出して全員辞めたばかりというのに、余裕だよね。一番焦るべきじゃないの?」
ルシファーと呼ばれた男は眼鏡のフレームを、指でクイっと上げてキメ顔でこう言った。
「本当にどうしましょうね。いやはや惜しい部下を失うというのは辛いですね。アスタロトさんお互い気持ちのわかるもの同士仲良くしまし」
「遅刻遅刻ぅーーー!!!!」
ルシファーがアスタロトへ握手を求めた瞬間、何者かがルシファーとぶつかりぶっ飛ばした。
ルシファーが先程までいた場所には、黒髪で黒い瞳。ツノが二本頭には生えた女だった。
「ウロボロス殿。前を見て走ってください」
「ヤマトやっほ!4魔王最後の一人、ウロボロス・ルイン遅れて登場です!」
イエイ!とピースをヤマトに向けてしたウロボロスは、手を額に当て、何かを探すように部屋中をキョロキョロと見始めた。
「どうされました?」
「ルシファーまだ来てないの?私が最後だと思ったけど、ルシファーが遅刻なんて珍しいね」
ヤマトはハァとため息をして、壁を指差した。
「何?穴?え、まさか!襲撃された!?」
「はい、襲撃はされましたね。敵ではなく仲間にですけど」
壁の穴から、ボロボロのルシファーが姿を現した。
「お、ルシファー!おっはよ!ん?仲間に襲撃された。裏切り者は誰!?まさか、ヤマト貴方が!?」
ヤマトは再びため息をして、ウロボロスを指差した。
「うえ?誰?誰もいないよ?」
ウロボロスは後方を確認して、そう言った。
「ヤマトさん。もういいです。ウロボロスにいくら言っても無駄ですよ。定例会議を始めましょう」
そう言って、ルシファーが円卓に座ると、ウロボロスの明るい顔が曇り、こう言った。
「私の因子を分けたワームがやられた。それも人間側に送っていた個体が」




