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4話 理解者ギルドマスター


「やっと起きた。おはよ」

目覚めると、ベッドの上にいた。

この場所がどこなのかはわからないが、運ばれたことは確かだろう。

俺は自分の腹を触ってみたが、穴はなく傷も無かった。


「あーそれ。ギルドにいた人が治してくれたわよ。感謝しなさいよ。マコトの回復魔法じゃ足りなかったんだって」

なるほど。ヒールにも種類があるということか。

俺の使えるヒールでは、擦り傷程度の回復という認識でいいのだろうか。


それよりもだ。


「俺の腹に誰が穴を開けたのかって問題だ。なあシラメさんや」

「私よ?」

この女。悪びれる様子もなく平然と答えやがった。


「お前と組むなんて、呪いさえなければ絶対組まないと断言できるね」

「残念ね。呪いがあるから一心同体よ」

「クソ。お前が彼氏に振られた理由もわかるな。お前人間として終わってる」

「なっ!あの人はそういうことで人を見る人じゃない!テキトーなこと言わないで!」


「お前という人間を見ているなら、別れるだろ普通。見た目は美人だが、中身が残念とか。お前と付き合ってくれる人なんて、見た目重視のアホくらいだろ。その人は見た目で見てないから別れたんだろうな」


「美人......。へぇ。美人ねぇ〜。ありがと」

シラメが照れながらモジモジとしだした。こいつアホすぎだろ。褒めてないんだが!?褒めてないんだが!?


「は?褒めてねーよ?シラメは中身が残念なんてレベルじゃねーからな!シラメの中身なんて人じゃねぇ!悪魔だ!悪魔!」


「なんと言われてもいいわよ。残念なことにマコトは私と共に生活しなければいけないのだから」

この女ァ!いけしゃあしゃあとしやがって!殺人未遂ですよ。シラメさん。もしかして地球でも、彼氏殺して無理心中だったとかじゃないですよね。

あんなに平然と人の腹に手を突っ込めるなんて、人じゃねぇよ。


「はぁ。最悪」

俺はため息混じりに枕に顔を埋めた。

寝よう。そして忘れよう。サイコ殺人未遂アホ女とこれから生活するなんて耐えられないよ。誰か助けてください。


「寝ちゃダメ!」

シラメはそう言って、俺から枕を奪い取った。

「せめて休憩を」

「ダメよ。ギルドに行って最終登録と謝罪しないといけないからね」

最終登録は......まあ血判事件があって最後までできなかったからわかるが。


「謝罪?」

俺じゃなくて、シラメだろ?俺は暴れまわるシラメを回復してあげて、受付嬢の狂気を回避して自分で血判やる覚悟をしたら、仲間(仮)から刺されただけですが。


「そりゃあね。ギルドカウンターをあんな血の海にしたら、謝罪しないと。むしろ謝罪だけで済んでよかった方だと思うわ。弁償もあり得たからね」

この女。血を出したのは俺だから俺が謝るべきって言ってるのか?責任転嫁もいいところだ。元凶はお前だというのに。


まあでも仲間が迷惑かけたら連帯責任というのは、わからなくもない。

シラメが迷惑をかけましたと俺が謝りに行くのか。

嫌だな。でもさあギルドの人達とはいい関係を築いていきたいし、ここは行くしかないか。


「行くぞシラメ。謝罪だ」

「はいはい。仕方ないから私も一緒に行ってあげるわよ」

ほんっと、ぶん殴りたいです。






【ムンタウンギルド ギルドマスタールーム】


「私がこのギルドのギルマス、シャニィだ。よろしくな青年」

赤髪の長髪をポニーテールで纏めた女性だ。目は若干のつり目で、堅物なのだろうという印象を受ける人物だ。


「俺はマコトと言います。今回は大変ご迷惑をおかけしました」

頭を下げて、謝罪をした。この場にいるのは俺だけだ。


シラメは一緒に謝りに行くと言っていたのに、受付嬢が「ギルドマスターがお呼びです」と言った途端に、冒険者登録してくると言って、逃げやがった。本当にクズ人間だ。


「頭を上げてくれ。報告書を見ている限り。君は大変面倒な女とチームを組んでいるようだ。私としては問題児をギルドには入れたくない。だが君はその服装を除けば、見たところ好印象だ」


「ありがとうございます」


「だから条件がある。あの女をどうにかマトモにしてほしい。アレはやばい。魔物でも仲間にこんな不意打ちはしないぞ」

シャニィさんは報告書であろう紙をバンバンと叩きながら仰った。


「こちらもできる限りマコト殿には、手を貸すつも」

「無理ですね」

即答した。


「え?」

「無理ですよ。アレは頭のネジが無いんですから」

「いやでもほら言って聞かせれば」

「そのレベルは遠に超えてますよ。

...

......

「だよねぇ」

シャニィさんは、頭を抱えながらため息をした。


「何でなんです!私のギルドには何でこんなにも問題児が集まるんですか!おかしいじゃないですか!ギルドなんて、どこの街にでも一つはありますよ!別の街で登録してほしいですよ!あぁもう!受付嬢もですよ。血判で指を抉るなんて頭おかしいんじゃないの!ああああああもう!嫌!辞めてやろうかしらギルマス......」

発狂なされた。

相当溜まっていたのだろうなぁ。


「受付嬢に関しては、採用しなければいいのでは?」

「このギルドの評判の所為で、そういう人しか来ませんよ」

「あ、あぁ。俺たち以外にもいるのね」

「はぁ」

沈黙が続いた。


「お互い頑張りましょう。理解者同士なんですから」

俺がそう言って手を出すと、シャニィさんは涙を流しながら俺に抱きついてきた。

胸に当たる柔らかな感触は忘れられないだろうと思いつつも、シャニィさんの背中を優しく叩いてあげた。


「ありがとう。本当にありがとう」

一体このギルドには何人の狂人がいるのやら。この反応的に1人や2人でないことは確かだろう。

関わらないようにしたいものだ。



マスタールームを出ると、シラメが待っていた。


「マコトの分の冒険者登録も済ませておいたわ!さ、クエストよ!クエスト!受けてきておいたわよ!」

そう言って渡された紙に書かれていた内容が、冒険者の説明を受けていない俺からしたら訳がわからない内容だった。


【 クエスト】ゴブリン5匹の討伐

【クリア条件】ゴブリンの魔石5つ納付

【失敗条件】3日以内に未達成

【失敗時罰】銀貨1枚

【報酬】銅貨5枚

【受注条件】冒険者ランクF以上


【ゴブリン参照写真】



クエスト内容が書かれた紙と、緑色の魔物が描かれた紙、そして地図を渡された。


「これは貸し出し用の武器だって、何でも魔石の剥ぎ取り?に使うらしいわ」

地図と写真とクエスト内容の紙を持っている俺に、シラメは黒色の鞘に収められた短剣を渡していた。


「それくらい持ってくれませんかね」

「え?」

シラメは男が持つのは当然とでもいったような反応をして、短剣を俺のズボンのベルト部分に無理矢理押し込んだ。


スーツのズボンにベルトを付けているので、落ちることはないが、不安定なことに変わりはない。


普通こういう転生ものってさ。無限収納ボックスみたいなものが貰えるのが普通だろ!あの神様はそれもよこさずに、あろうことか何ゆえ、呪いなんて付与してくれてんだ。


「それじゃ行くわよー!」

「はあ。了解」

3枚の紙を折り、地図以外をズボンの後ろのポケットに入れ、ナイフをベルトに挟みシラメの後ろを付いて行った。

次は明日7時に投稿します。

よろしくお願いします。

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