47話 禁呪の神域魔法
「その師匠ってのはとんでもねえ魔法を教えたものだな」
俺は話を聞き終えて、そう口にしていた。
命を対価に発動できる神域魔法だ?そんなうちの馬鹿くらいしか使わない様なものを弟子に教える師匠ってのはよっぽど馬鹿だ。
「ルーファスという前まで王都にいた神域魔法使いの方よ。メリンは後悔はしていないと思う。復讐できた訳だから」
カノはそう返して来た。
俺は一瞬固まり、思考が追いつき確認をする。
「ん?ルーファスって言った?」
「そうじゃ!妾が教えたのじゃ!」
バン!と部屋の扉を勢いよく開け、青髪のくせ毛の女の子が入って来た。
もうなんとなく察したが、一応は聞いておく。
「どちら様?」
「うーむ。肉体はメリン。心はルーファス!その名もルーファス・メリンじゃ!」
バン!と格好つけて腕を組みながら、宣言された。
ルーファスinメリンというわけか。
「つーか俺達のパーティーメンバー揃ったじゃねーか」
「そりゃあの。メリンが妾との縁を辿り、そこに無理矢理、カノとベルを繋げたからの。妾もそれに対する魂を差し出す必要があったため、マコトとシラメを差し出した訳じゃ。死なずにすんでよかったじゃろ?」
つまりこいつの所為で、訳の分からん転生をした訳か。
動かしづらいし、視線も低いしそもそも声が違ったり違和感しかないんだが。
「というかの。回復任せると言うたのに、なーに先に死んでくれるんじゃ」
ルーファスは俺の頭をバンバン叩いて、文句を言って来たが、俺だって言いたい事がある。
「金槌落として死んでいったやつに言われたくねーわ!」
「たわけ!死んどらんわ!すぐに回復を貰えば死なずに済んだのじゃ!」
「アホか!こちとら敵を押さえつけてたんだから、回復なんてできるわけねーだろ!」
「なぬ!?お主まだ遠距離ヒールもできんのか?」
遠距離ヒールって何だ?
遠くにいる人を回復させるヒールって事か。
そういえば試した事無いな。
毎回直接触れてるし、それに魔力を外に出すって感覚がわからない。
「これは妾の失策じゃな。まあ良い。肉体ももうすぐ戻すからの。今はそれまでの器としてこの肉体を使っておる」
「は?」
「メリンと妾で禁呪をもう一つ発動させるのじゃよ」
「え?ちょ、メリンがそんな事言ったんですか?」
ルーファスの言葉に反応したのは、カノだった。
「変わろうか。メリンよ、お主の言葉で話すが良い」
ルーファスがそう言って目を瞑った。
「というわけで、私が話します。今からするのは私達の記憶を所持している全生物を対象に記憶を書き換えます。ルーファスさん、マコトさん、シラメさんが私達だった事に」
?
「なんて?」
「メリン、何言ってるの?」
俺とカノは頭の中にクエスチョンマークが溢れかえっていた。
ああ。この子の師匠がルーファスと言われて納得できるわ。
何言ってるのかが全然わからん。
「ええと、神の息吹っていう神域魔法を使うんだけど、それの効果は私達3人が元から師匠達であった事にするんだ。記憶の改竄みたいなものだけど、そうすると私達の生きた証すら無くなるんだけど、姉ちゃんはそれでいい?あ、対価は私の魂を捧げるから姉ちゃんは関係ないよ」
俺の思考じゃ到底理解が及ばない内容だ。
「理解できない。けどま、死人に口なし記憶なしってね。良いわよ。好きにやりなさいな」
「え!?良いのか?」
俺はすぐに納得したカノに驚いた。
妹が何やら怪しいことをしようとしているのに、許可するのか。魂やらなんやらと物騒なワードもいくつか出ていたのだが。
「じゃ、やるよ。あ、マコトさん?だっけ馬鹿みたいだから簡単に説明。君達3人は母さんの子供だった事になります。全人類から私達の記憶とマコトさん達の記憶を結合と消去をするから、マコトさん達は前までの知り合いは知らない人になる。私達の知り合いだった人は顔見知りになる。でもマコトさん達は知らない。この辺は帳尻合わせてね。んじゃやるよーー」
ごめん。ぜんっぜんわからん。馬鹿に教えるために簡単に説明してくれたのかもしれないが、馬鹿以下なのかも知れない。
つまり
マコトはベルだった者して生きて行く。
でも名前や顔や声と言ったものが元から、ベルではなくマコトだったという記憶改竄を行うということでいいのかな?
その中で俺の生きた記憶が邪魔だから、そこは消し去る?って事か。
わからん。もうなるようになれだ。
「神の息吹!」
え?
メリンがそう叫ぶと、メリンの頭から白い発光体が飛び出して破裂した。
その瞬間発光体は壁をすり抜け世界へ降り注ぐ、流星群となり世界を覆った。
おいおい。世界規模の現象が起きてるんだが?
「これがメリンの最期の魔法じゃよ。あの発光体はメリンの魂そのものじゃ。見事であった」
「いや絶対バレるだろコレ」
俺は窓の外を見ながらそう言った。
空を覆い尽くす光の粒は、綺麗という表現ではなく、これは恐ろしいという表現が正しいだろうと思わせるほどの量を持っていた。




