44話 ジェーン家
「まったくのぉ。マコトに回復を任せたというのに死んでしまうとは情けないの。そのせいで妾まで死んでしまうとはこれまた情けない」
ルーファスはミョルニルをぶっ放し、死にかけたのだが、その後の回復を任せたマコトが死んだため、回復することができず死んでしまっていた。
「それにしても死んだというのに、神の迎えもないのかの。こんな何もない空間を漂うのは詰まらぬの」
現在ルーファスは魂だけの存在だ。
死んでから、この何もない空間を魂のまま漂っている。
本来なら神様が次の道天国や地獄、もしくは生まれ変わりを示してくれるのだろうが、誰もいない。
「誰もおらんのか?」
「ここにいます。連れてきてしまい申し訳ありませんでした。師匠」
ルーファスの中で誰の返事も期待していない問いかけだったのだが、それに返答が来てルーファスは少し焦った。
「なっ!?何者じゃ!」
「師匠。私です。メリン・ジェーンです。王都で神域魔法を使える魔法使いとしてルーファスさんに弟子入りをしたものです」
その答えを聞いてルーファスは少し、考えて思い出した。
その人物の顔を。何故なら魂だけのため、火の玉のような青い光しかないので、名前を言われてもわからないのだ。
「あああ!お主か!しかしここにおるということは死んだのじゃな?」
「ええ。その話を少ししてもいいですか?それに関わって私から師匠にお願いがあります」
「構わぬ。妾は今暇での。話くらい聞いてやる」
「ありがとうございます」
メリンはジェーン家の三兄弟の一番下の妹だ。
兄はベル・ジェーン。姉はカノ・ジェーン。三兄弟全員美人の家族だった。母親はディーザ・ジェーン。騎士団殲滅を計った狂乱の魔女である。
父親は元騎士団長のギール・ジェーン。
ディーザが騎士団殲滅を計ったのは、このギールの気をひくために行ったのだ。
そのためギールは騎士長を下されたのだ。
マコトと出会わせたいくらい狂った母親の子達は皆、どこか狂っており、その一番下の妹のメリンに至っては神域魔法を使えるという狂いっぷりだ。
そんなメリンが死んだというのはルーファスにとってとても面白そうな話であった。
「では少しお話しします。私達兄弟が死んだ理由を」
ーーーーーー
「お父さん、今日元気なかったね」
メリンの問いに一番上の姉カノは答える。
「森に調査に行くみたいよ」
「あーお父さん虫嫌いだもんねー」
「元騎士団長が笑えるわよね」
「私の神域魔法で虫くらいなら殲滅できるけど?
「けど何?ダメよ!神域魔法はそれに見合う対価を払わなければならないのだから、そーれーに!ルーファスさんが戻って来るまでは使わないって約束でしょ!」
「はーい」
メリンはそう言って机に並べられた朝食に手をつけた。
カノはそれを見ながら、妹のヤンチャっぷりに呆れて、階段を見る。
未だ眠り続ける馬鹿を起こしに行くか、遅刻させるか悩み中である。
「はあ。母さんベルは?」
「まだ寝てるのよ。起こして来てもらえない?今ちょっと手が離せないの」
料理を作っている母親に話しかけ、予想通りの答えにカノの額にシワがよる。
「はあっ。あの馬鹿まだ起きてないの!」
カノは階段をドンドンと音を鳴らしながら、上がっていく。
そしてベル。弟の部屋の前に来ると、2回ノックをして、返事がないためドアを開けると案の定ベッドの上で気持ちよさそうに、スヤスヤ寝息をたてている、可愛い顔が布団から出ていた。
「ベルッ!起きなさい!ちょっ!」
カノはベルから布団を奪い取ると、ベルはそのまま布団にしがみついてきた。
「この馬鹿!なんでそんな猿みたいにしがみつくの!ああもう!めんどくさい!」
カノはベルがしがみついた布団を少し揺らすが、ベルが落ちる気配がない、起きる気配がらないのを見て、外開きの窓を開けた。
そして部屋の中で布団を握りしめて、グルグルと回り始めた。
「うわああああああああああああああああああ!ヌァアアアアアアアアア」
大きなかけ声と共に、布団を窓から外に投げ飛ばした。
ハンマー投げの要領である。
飛ばした先を見てカノは満足気に笑い窓を閉め、手をパンパンと叩き部屋を出て、階段を降りていった。
「ねーちゃん。またやった?」
「ん?起こしただけ」
「ちょっと!カノ!近所迷惑でしょ!」
「近所の人達今更気にしないでしょ。狂乱の魔女の娘ならそれくらい普通かと思われるわ」
「狂乱の魔女って言わないの!照れるでしょ」
「褒めてないわよ!」
家族3人仲良さそうに、話している中家のドアを開け、一人の男が入ってきた。
「このクソ姉貴!落ち方、打ち所、など色々悪かったら死ぬッツってんだろ!」
可愛い顔なのにもかからず、男の子の少年が入ってきた。
真ん中の弟である。
「ベルおはよう。朝ごはんできてるわよ」
ボロボロで帰ってきたベルに、普通に対応する母。
「起きないからじゃないの?」
それを見ようともしないメリン。
「回復使えるんだからいいでしょ」
てきとーに流すカノ。
その穏やかな日常はこの日終わりを迎える事になる。
ーーーーーー
「おいちょっと待て!どこも穏やかじゃねーんだが!?つーか俺的にそのベルに同情するんだが?」
俺はカノからその話を聞かされ、なんでかそのベル君に同情してしまった。
「うっさい!話はちゃんと聞け!あと寝坊するやつが悪い!」
目の前のカノの中身がシラメに変わったのだと、すぐにわかった。
そりゃシラメはそっちの方を持つよね。
「ええと、話進めてもいいですか?」
「あ、すみません。お願いします」




