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35話 アージ&シラメ

スキル 鋭利化と視認力強化を発動させ次の攻撃を見逃さんと、シラメはクチの動きにのみ集中する。

シラメは何度も魔物を倒したり、人を半殺しにしたりしたためレベルが数段階上がっており、前よりもさらにスキルを増やしていた。


1秒。クチは飛び出す。それに合わせてシラメが動く。

シラメはクチのハサミの突きを少しだけ掠るが、避けきることができた。

(良かった付いていけてる)

シラメは内心安心する。


2秒。シラメは己の手をクチの心臓めがけて突き出す。

クチはそれを避け回し蹴りをシラメの太ももめがけて放つ。

シラメはその蹴りを直で受けてしまう。


3秒。シラメの足を直撃した足は、攻撃したりクチがよろめく結果に終わる。

「硬化スキル......流石に硬いわね」


4秒。クチは態勢を立て直すべく一歩下がろうとするもシラメは即その距離を詰める。


「なっ」

「逃げてばかりだと思った?おばさん」

「おば!?」


シラメはクチを煽り、若干の怒りを産み付ける。

クチの心に生まれた怒りはクチの思考を拘束した。


「はい5秒交代」

「おう!助かったぜ新人」

「シラメよ。覚えろアジサイ」

「アージな。覚えろ新人」


そのタイミングでシラメとアージが入り変わり、シラメは後方に下がった。


「鬱陶しい人間だこと。2人まとめて切り刻んであげるわよ」

クチはハサミを構え、突進する。

その瞬間クチの周囲が爆破する。


アージの手が赤く光っているところを見ると、アージの攻撃だろう。

クチは回復魔法を使ったのだろう。爆発の煙の中で青い光が見えて、無傷のクチがアージに接近してきた。

クチは本来のスピードではなかったため、シラメでも反応ができた。


シラメはクチの横から硬化と鋭利化で強化した手で切り裂きにかかる。

クチは咄嗟にハサミをこちらに向けたため、前方への警戒が外れる。

そこへアージのスキルが炸裂した。


炎流えんりゅう

アージはクチの腹に拳を打ち込んだ。

クチの体を焼くように炎がクチの身体を回る。

殴った腹から右足へ炎が流れ、次に左足、そこから背を焼き右腕、左腕を順に焼く。最後に顔面を焼き焦がして炎は消えた。


「ヌァアアアアアアアアアアア」

クチは最後に絶叫し倒れた。


「凄いわねスキルって」

「新じ......いやシラメこそナイスタイミングでのタゲ取りだったぜ」

「タゲ取り?何それ私知らないんだけど」


(まさか意識しないであのタイミング。あのタイミングで攻撃に入ったのか。それはある意味自殺行為な気がするが。ま、俺には関係ないか)

アージは少し考えたが、思考を放棄した。誰かの事なんて考えても仕方ないという事で、アージは再び拳を構えた。


「こいつ回復されたら厄介だから消し炭にしておくわ」

「趣味悪う。ま、勝手にすればー。私も仲間のところ行くわ。ちょっと心配だしね」

「おう!俺もこいつを倒したら団長のところ戻らねーとだしな。気をつけろよ」

「はいはい。うんじゃーね」


シラメはそう言って去っていった。


アージは焼け焦げたクチを見て呟く。

「全く。こんな魔族が動き始めてるってのは聞いてねーな。どういう事だよ」

「ホントだね。お兄さん。どういう事か説明してほしいな」


アージは咄嗟に飛び上がり、屋根の上に乗り自分がいた場所を見ると、いつの間に現れたのか金髪少女が現れていた。


(どういう事だ。背後を取られた?それに話しかけられなかったら不意打ちもされていた。何者だ)


「この人私の仲間だから返してもらうね」

金髪少女はそういうと、クチの身体を持ち上げる。そんな力がその小さな体のどこにあるのかわからないが、金髪少女は片手で担ぎ上げていた。


「いいやそうじゃねぇ!させねぇ!」

アージは屋根を蹴り、金髪少女からクチを取り返そうと動こうとするも動けなかった。


「なっ」

「動く事は許さないよ。私のスキル発動中は私の許可なく動く事はできないの。ごめんねお兄さん。勝負はお兄さんの勝ちよ?じゃあね」

そう言って女の子とクチはその場から一瞬で消えた。


「クソが!」

アージは1人残され己の膝を叩く。

その表情は悔しくてたまらないといった表情だった。


「勝ちだと?こんなの試合に勝って勝負に負けたような物だろ!死にかけの魔族1人と子供の魔族を取り逃がすとか最悪だ。あああクソガァ!」


アージは屋根から飛び降り、ギルドの方向へ向かい走り出した。

気持ちを切り替えてやるしかないのだと、本人が分かっている。

だからすぐに団長の元へ向かうべく足を動かした。


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