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28.5話 その時のフィーア・ドラゴンズ


クチがマスクを外した時の隣の部屋。


「魔族の気配がするな」

「そうね禍々しい気配ね。どうする?行く?」

「もちろんだ。フル武装で行くぞ」


隣の部屋を借りたピュートとヒューラ。

本来は新人しか借りることのできないこの宿だが、2人は事情を宿主に話して特別にこの部屋を借りている。


「まあ準備といっても僕だけだけど」

ピュートはそう言いながら、鎧を身につけていく。

ピュートがこのように余裕なのは、ヒューラという優秀な回復役がいるためだ。

ピュートという男は正義感は強い。だがその過程はすっ飛ばしているので、結果死んでなければいいじゃないかという考えで動いているので、この辺は呑気なのである。


「早くしなさい。私でも死人は蘇生できないわよ」

「毒を飲ませて一時的にでも蘇れば、回復できるだろ?なら多少は大丈夫だよ」


ヒューラはそういう問題じゃないと言いかけたが、言わなかった。

(この人に言っても意味ないな)というのがヒューラの結論だ。


「ま、その通りね。早く着替えなさい」

「りょーか」


(殺気!)


ピュートは鎧を持ち上げそれを装備しようとした。

しかし次の瞬間にはピュートは鎧を投げ捨て、ヒューラの前に立っていた。


「硬化!」

「え?」


ピュートは咄嗟の事に盾を持てなかったため、己の肉体を硬化させ腕をクロスで組みガードの体制をとった。


「来るぞ!」


ピュートがそう言ったと同時に、壁がぶち壊され何かが飛んで来た。

マコト達の部屋から飛んで来た何かはピュートとヒューラを弾き飛ばして、部屋の壁をぶち壊し隣の部屋まで飛ばされていった。


「いってぇ。ヒューラ大丈夫か?」

「無事よ。優秀な騎士様のお陰で」

「そうか。それは何より、回復頼む」

「はいはい。ハイヒール」


ピュートは何かに弾き飛ばされ部屋の壁にぶつかる瞬間に、自分の後ろにいたヒューラを抱きしめ自分が後ろになるようにぶつかる事で、ヒューラを庇っていた。

そのため何かに当たった時の怪我と、壁に当たった怪我の二つを回復させるため、ヒューラはハイヒールというヒールの上位魔法を使った。


「とりあえず何が起きたのか確かめに行っ」

「ちょなに!?」


ピュートが立ち上がった途端、目の前を何かが目では追えない速度で通過した。

その結果起きた衝撃波によってピュートはバランスを崩し、ヒューラの上にのしかかるように倒れた。


「ご、ごめん。ヤバイのが通過したんだ」

「ああもう!いいから離れなさい!重い」

「わ、わかっ!」

ピュートが立ち上がろうとすると、また何かがピュートを弾く。

立ち上がろうとしたピュートは再び、ヒューラの上に倒れこむ。


「ナファッ!いったいわね!何のつもりよ!」

「ち、ちがうんだ!何かに当たって」

「言い訳しない!早く立ちなさい!」

「いや多分また何かが通ると思う」

「は?意味わからない事言ってないで立ちなさ......黒山羊!?」


『ぬ?良き心を持つ者達よ。私は悪を滅ぼす者だ』

そう言って隣の部屋から現れた黒山羊は、マコト達のいる部屋へ入っていった。


「とりあえず何が起きたのか聞きに行くわよ!ほら早く鎧つけなさい」

「わ、わかった。でもその前にヒールを」

「はいはい。ハイヒール」

「ありがとう」


ピュートもヒューラはこの後マコト達の部屋に向かうが、既に事が終わった後だった。




ーーーーーー


「んでよ、なんで俺らまで部屋取って護衛してるわけ?」

アージは部屋のベッドの上でゴロゴロしながら、同室にいる女の子に話しかける。


「仕方ない。任務だから。」

女の子は流すように返して、朝食としてパンを食していた。

この子はサラ。フィーア・ドラゴンズの精霊使いだ。


「団長が失敗することはないと思うけどなー」

「ある。ピュートは馬鹿。変な所で失敗する。」

あねさんもそれを見越しての俺達の配属だったみたいだけど、この部屋と団長の部屋で暮らしていた人達は追い出される形になったけどいいのか?」

「魔族来るかもっていたら逃げた。追い出してはない。」

「それを追い出したっていうんだよ」


アージはそう言ってベッドから起き上がると、皿に乗ったパンを手に取った。

パンを口に運びそのパンを噛みちぎった時だった、その悍ましい気配が隣の部屋から溢れ出してきた。


「来たな」

「警戒して。防御魔法使う。」

「了解」


サラは杖を持ち防御魔法を発動させた。

アージはパンを飲み込み防御魔法を発動した。


「さて行くか」

「うん。乗り込こ!逃げて。」

サラはそう言ってアージを突き飛ばす。

アージはサラに突き飛ばされ、突き飛ばしたサラの方へ目をやるとサラが何かにぶつかり、部屋の壁に叩きつけられるようにして当たり、床に倒れたところだった。

そして同時に部屋の左右の壁に穴が開いていた。


「サラァああああ!加速!」

アージは着地と同時に加速魔法を使い、壁を蹴り倒れたサラの元へ向かおうとした。


「今助け、なはッ」

「邪魔よ!」


壊れた部屋の壁から来た何者かが、加速するアージを捉えて床に叩きつけた。


「何者......」

その後ろ姿は朱色のワンピースを着た、女性であろう人だった。


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