25話 騙された
「楽しそうだな」
「そうじゃな」
尾行を続けること数時間。シラメとマリー(メリーさん)はルーファスの財布を持って、お店に入っては何かを食べたり、服屋で試着してみたりと何かと楽しそうだ。
他人のお金で遊んでるのだから、そりゃ楽しいだろうが、シラメの隣を歩く金髪の女の子はシラメが怖がっていた存在なのだがな。
そしてルーファスはシラメが店に入る度に、金を使うんじゃないだとか、さっき食うたばかりではないか!と嘆いている。
何故ルーファスの財布をシラメが持っているのか、不思議でならない。
「そういえば鎧はいつ頃戻ってくるんだ?」
「10日ほどじゃ」
「意外と早いんだな」
「当たり前じゃ。そこいらの鍛治師に頼んど訳ではないからの」
「そんな鍛治師がこの街にいるんだな」
「おらんぞ?王都まで行ってきた」
平然とそんな事を言うので、冗談かと思ったが表情から冗談ではないと伝わってくる。
「どう言う事だ?」
「テレポートした。妾をなめるでないぞ。神域魔法使いじゃからの」
急に有能な事できる発言をしたルーファスに、俺は呆気にとられていた。
ルーファスが有能なはずはない。
自爆するだけの変な奴だろ?
「ち、ちなみにだが、テレポートすると自身に被害はあるか?」
「そんな大してあるわけないじゃろ!あるとしても肋骨骨折、両足断裂、両腕骨折、内部損傷くらいじゃて。フルポーションを持ちながらテレポートすれば問題ないわ!」
......
「有能じゃねぇ!こいつのテレポートリスクが大きすぎやしねーか?
体がボロボロになってるだろ!
それを行きと帰りでやると?死ぬわ!」
「な!?有能じゃろ!フルポーションさえあれば問題ないんじゃ」
「フルポーションってのは何だ?聞かない名前だがポーションと違うのか?」
ポーションってのとハイポーションってのは店に置いてあるのを見たことがあるが、フルポーションってのは見たことがない。
「ポーションはヒールと同じ効果じゃ。ハイポーションはハイヒールと同じ効果。フルポーションはフルヒールと同じで、体の状態を全て完治させると言う効果じゃ」
つまり俺もレベルを上げれば習得できる可能性はあるだろうか。
「おい!シラメ達が次の店に入ったぞ!」
ルーファスに言われ意識を戻して、その店の前に行くと看板には
【奴隷専門店 キュラ】
と書かれていた。
「ど、れい。専門店?」
「何ともまあ変な店に入りよったのぉ」
そしてこの後店の中から聞こえる悲鳴を、俺達は聞き逃さなかった。
ーーーーーー
「何?このお店に入るの?」
私の隣を歩く金髪の女の子マリーは、私にそう聞いてくる。
そりゃそうだ。私が今から入ろうとしてる店の看板には【奴隷専門店 キュラ】と書かれており、女の子を連れて行く場所ではない。
「そうだよ!可愛い子いるかもしれないじゃん!」
「そ、そうなの」
マリーは困りながらも私の提案に乗ってくれる。
美味しい物を食べたり、服を試着したりと今日はマリーとたくさん遊んだ。
そしてマリー......いや。
メリーさんは私の演技に気付くことなく、自分が主導権を握り、私を騙せていると思っているだろう。
でも残念〜
だってさ、ベッドの下から出てきた金髪の女の子でマリー?
気付かないわけないわ!
という事で、私を騙したり怖がらせたりした罪は重いのよ!
「入りましょ」
「う、うん」
店は薄暗く、とても狭い。奴隷なんてどこにいるのかと考えるが、すぐにわかる。店の奥にカーテンで隠された場所があるのできっとその先だろう。
「いらっしゃっい」
入るとすぐに店員さんが出てきた。
店員は黒髪ロングの女性で、髪は蛇のようにウェーブがかかっている。目はタレ目気味で、手に持っている鞭がなんともいえない淫靡な雰囲気が醸し出されている。
「ええと、店員さんこんな品ありません?」
私は店員さんに紙を渡した。
その紙を見ると店員さんは「あらまあ」と手を私の頰に沿わせてきて、私の耳元まで顔を近づけるとこう呟いた。
「もちろん。まかせて」
そういうと店員さんはカーテンの後ろに入っていくと、少しして小さな箱を持ってきた。それを渡されたので、私は銀貨6枚を渡した。
「良い旅を」
店員さんにそう言われ、私はそれを受け取り箱を開けると、そこには金色の指輪があった。
私はその指輪を取り、自分の左手の親指を硬化させた右手で刺して指輪に血を注いだ。
血を吸い込まれるように指輪に染み込み、その途端指輪に赤色の宝石のようなものが出来上がった。
「え?」
マリーは店の薄暗さからか、白めが何をしていたのかわかっていなかったようだ。
そしてシラメに後ろから接近され、腕を後ろに回され床に押さえつけられて、初めて気がついた。
(この人、私が何者か気づいていた!)
「ダメよぉ〜お姉さんをからかっちゃ。ほらプレゼント。呪いの指輪をあげるわ。効果は簡単はお互いがお互いを傷つけることが出来ない契約を強制的に結ぶと言うもの。明日までに外せるといいわね。メリーさん」
シラメはメリーさんの指にその指輪をはめ込んだ。
指輪はメリーさんの指にスルリと入ると、入った途端、メリーさんの指のサイズぴったりなった。
「バイバイ」
シラメにそう言われたメリーさんは、大声で叫んだ。
「だまされたああああああああああああああ」




