17話 波乱の出会い
ギルドは騒音に包まれていた。
冒険者達が彼等を讃えるように、賞賛の声を上げる。それが重なり合い大きな音を作りだし、流石のシラメも食事どころではなくなっていた。
「何あれ」
シラメは少し膨らんだ腹をさすりながら、ガラスのコップを手に持ち、水を飲みながらこちらへ歩いて来た。
「知らん顔じゃの。この街の者では無さそうじゃな。冒険者チームに入れてもらうためにこの街の冒険者はほぼ全て把握しておる」
ルーファスもシラメの後をついてこちらに来た。
フードを珍しく外しており、初めてルーファスの髪を見た気がした。
髪は濃いピンク色をしており、ショートボブヘアーだった。
アイドス・キュエネーだったっけ。認識疎外というのは気が付かないことに不信感を抱かせないって効果もあるのだろうか。
ルーファスの髪が何色かなんて全く気にしなかったよな。
それとなんとも悲しい事を聞いた気がしたが、気にしないでおいた。
「王国のSランク冒険者チームなんだと」
「へーまあ興味ないけど」
「興味無いってなあシラメも冒険者やるなら、大先輩なんだ少しは気にしてもいいんじゃないか?」
「いや。同じ部署の先輩に気を使うのも面倒なのに、知らない部署の先輩まで覚えられないっての。あー。そうだ今にして思えばどうせ自殺するなら禿げの山下も殺しておけば良かったかも」
「同じ部署云々は何となくだけどわかるが、最後の方は絶対ダメだからな」
シラメと別の部署の先輩の禿げの山下さん。助かりましたね。悪魔はもうそちらの世界にはいませんよ。
「なんじゃと。。。Sランクとな。妾が神域魔法使いといえば仲間にしてもらえるじゃろうか......」
全く。ルーファスさんは何を言ってらっしゃるのだろうか。
「お前。このチームに入ったばかりでもう心変わりなのか?っていうのと、お前なんかじゃ絶対無理っていうのどっちを言ってほしい?」
「マコト。二つとも言ってんじゃん。ほらルーファス泣きそうじゃん」
「ぢ、ぢがうんじゃ。妾は、わらわは強い者らの仲間になって技術と道具を盗めたらなと思っただけじゃ」
うん、涙を流しながら何を言ってるのかな?
絶対行かせたらダメじゃねーか。
「相変わらずの面子ですね」
「あ!チルちゃん!」
カウンターから声をかけられたので、そちらを向くとチルさんがいた。
口にはケチャップのようなものが付いており、昼食中だったためいなかったのだとわかった。
「休憩中だったんですけどね。騒がしくて何事かと思って来てみれば、そういう事ですか」
「チルちゃんお弁当付いてる」
「え?」
シラメはサラッとチルさんの頰に付いていたケチャップを、指で取り自分の口へ入れた。
「おいし」
「なっ!!!!や、あの!え.、、と。ありがとうございます」
「いえいえ〜」
なんなのこれ。シラメさん何でチルさんにはいつも優しいの?好きなの?恋なの?無意識なの?どちらにしてもチルさんは顔を真っ赤にしてるぞ。
「皆さん!初めまして!王国からやって来ました冒険者チーム【フィーア・ドラゴンズ】です!よろしくお願いします!」
俺達がチルさんと話していると、ギルドの中央に立った鎧を装備し盾を持った男が挨拶をした。
「お!シフォンちゃーん!おひさ〜!」
フィーア・ドラゴンズの一人であろう青髪をオールバックにした男が、此方へ走って来た。
「うえ。アージ君。何んですかその挨拶。馴れ馴れしい」
先程まで、俺達の相手をしてくれていた受付嬢がシフォンさんだったらしい。
シフォンさんと呼ばれて、その男が駆けつけたのがついさっき俺がクエストの達成を報告した人物なのだ。
アージ君ってのが名前かな。
年の頃は同じくらいだろうか。
青色のジャケットを羽織り、手には魔法陣の描かれた青色手袋をつけている。ズボンは大工さんが履いている様なブカブカの黒いズボンを履いている。
「相変わらずだな。元気にしてたか?」
「王国にいた時よりは、大変ですよ」
「え?なんでだ?王国の方がキツそうなのにな」
「この街は別の所で問題があるんです。王国は仕事は多いですが、大して問題を起こす人も少ないですからね」
そう言ってシフォンさんは此方をチラリと見た。
俺はスッと目を逸らし、俺ではない事をアピールした。
したのだが。
「シフォンちゃんに迷惑かけてるってのはお前か?ガキ」
うっわ〜こりゃまたひでぇ。
手をバンバンと打ち合わせながら、此方へ歩いてくるアージ君。
目が完全にブチギレており、Sランクってだけでも喧嘩したくないのに何でこうなるかな。それに俺の周りに問題児二人いるじゃないですか。
ほら隣に......
「ルーファスさん?」
「すまんのぉ。妾とお主知り合いじゃったかの?覚えがない故妾は失礼するぞ」
そう言ってルーファスはフードを被り、その目立つ濃いピンクの髪を隠してそそくさと退散した。
あっの野郎。
んでもう一人の問題児は......こっちも退散してくれれば。
うんダメだ。
この子ったら喧嘩を買おうとしてるよ。それも俺に売られた喧嘩を買う準備だよねそれ。もう俺が少しでも触れられたらヤルつもりだよね。
シラメの手が硬化されており、そして今迄とは違い鋭く尖っていた。
なんだろう。物凄く怖いぞ。
「シフォンちゃんを困らせるんじゃねぇッ!ファイヤ」
アージは叫びながら拳を俺に向けて打ち込んだ。
その瞬間拳から炎が爆発し、俺は爆発に巻き込まれ、その直後顔面を今まで味わったことのない激痛が襲った。
その直後、浮遊感に襲われ、次に背中に激痛が走った。
身体を爆破され、顔面を殴られ、背中は壁に激突し、全ての箇所から激痛が走り起き上がることすらできないでいた。
ギルド内は静寂に包まれた。
この感覚前にもあったな。
俺は目を少しだけ開き、俺の体の惨状を見ると、絶対無事ではないとだけわかった。
俺の着ていた、背中だけオープンのスーツは跡形もなく消え去り、身体が焼け焦げていた。
「ヒールヒールヒールヒールヒール」
俺は必死にヒールを唱えるも、なかなか身体が回復しない。
それ程までに大きなダメージを受けたのだ。
「ザマァねぇな!もう二度とシフォンちゃんを困らせるような真似はすんなよ。ま、生きていたらの話だがな」
「ええと、その人じゃないんですけどね」
「え?いやだってさっきそいつのいる方見たよな?他にいたか?他にそこにいたのはフードの女の子と、美女が一人だっグェバッハッ」
グェバッハッ?耳に入って来ていた内容で、勘違いで殺そうとするやばいやつなのはわかったが、何か最後聞きなれない単語が出たが。
グェバッハっていうモンスターでも出たのか?
俺はヒールを続けた事により、多少は回復したため、身体を少し起こしカウンターの方見た。
すると何時ぞやのように腹から手が突き出て、それを見て驚く男と。
血だらけになる受付嬢、今回はチルさんではなくシフォンさんの姿があった。
これデジャブだ。とギルドの連中は思った事だろう。
だがその中で3人は今起きた出来事に対して口を大きく開け、動けずにおり。
もう一人は何が起きたか理解できず、ただただ呆然と己の体から溢れ出る血と、お腹の辺りから突き出ている腕を眺めて、そして叫んだ。
「なんじゃこりゃあああああああああああ」
はいシラメさん完全にやらかしましたよ。
Sランクって言ってたの聞いてたよね?
俺が怪我したからって貴方いつも気にしていないじゃん。
俺に俺がやられたことに対して怒った訳じゃなくて、別の部署の先輩が来て急に威張り始めたからとかそういう理由だろ絶対。
「私嫌いなのよ。なーんか。別の部署で偉いのか知らないけど、そこと違う場所まで来て威張る奴」
ほらね。やっぱりそうだよな。
そしてアージが床に倒れた途端、時が動き出したかのように、ギルド中が先程までとは別の騒音に包まれた。
固まっていたフィーア・ドラゴンズの連中もやっと動き出して、アージの元へ駆け寄った。
シラメさんグッバイ!Sランクに楯突いたんだ。多分死ぬね!ははは〜次回!シラメ死す!かな!嬉しいなぁ!
「ヒールヒールヒールヒール」
俺は喜びながら、残りのヒールを使った。




