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16話 フィーア・ドラゴンズ


王国ギルド所属冒険者チームである【フィーア・ドラゴンズ】は辺境の街にあるムンタウンに行く事になった。

ムンタウンは東西南北を山や森に囲まれており、山を越えて行かねばならない。


それもこれもつい先日宮廷魔法使いである、ジロンさんがムンタウン付近に魔族の反応を感じたというのだ。


ムンタウンにいる冒険者チームはレベルが低く、強くてもBランクまでしかいない。そのため王国から応援を送る予定ではあった。


Aランクチームの【ヴァジュラ】が向かうことになっていたのだが、ジロンさんによるともしかするとそれでも勝てないというのだ。


そのため王国内の冒険者チーム上位3チームに入る僕たちのチーム【フィーア・ドラゴンズ】が向かうことになった。


「なーだんちょ〜。疲れたわ。俺歩きたくないんだけど、何で馬車使わねーんだよー」

このダラシなく面倒くさがりな男が、俺達のチームの魔法使いアージだ。

魔法使いといっても杖を使って、火などを飛ばす系ではなく魔法を纏い拳や脚で戦う魔法使いだ。


「だらし無いわねぇ。そんなんじゃいい女も寄ってこないわよ?」

「うっせーな!この変態女!お前と一緒にいる時点で、誰も寄ってきやしないよ!」

「あらあら。酷いわねぇ。自分からアタックかけないでいて、彼女ができないのを私の責任にするなんて」

この人をからかうような物言いをする女性が、このチームの司令官ヒューラだ。

変態女とアージが言っていたのは、この人の性格とかが問題だったりする。


「団長。煩い。音遮断していい?」

そして、僕に話しかけてきた女の子。精霊使いのサラ。


それで最後にこの僕リーダーのピュート。

この4人がいちおうはSランク冒険者チームとして派遣された訳だ。


「魔族って言ってもなぁ。ヴァジュラでも倒せるだろうに。何で俺らなんだよぉ〜。Sランクチームだって他にもあるだろ」

「アージは旅が嫌いだもんな。でも行ったことがないだろ?あーそうだ。以前王国のギルドの受付嬢やってシフォンさんは確かムウタウンに転勤になったはずだから出会えるかもしれないぞ?」

「マジか!それは楽しみだな!シフォンちゃんに会いに行こう!」


シフォンさんという人は、元々は王国の冒険者ギルドの受付嬢だったのだが、ムンタウンのギルマスであるシャニィさんから要請を受け、転勤した。

アージはシフォンさんの事が好きだった事もあり、数日引きこもった程だ。


「シフォンはあんたに興味は無いわよ。諦めな、この妄想男」

「ヒューラ酷い。でも正しいと思う。シフォンさんと話してる時。そんな雰囲気無かった。」

「お前らなァ。いつまでも優しいアージさんだとは思うなよぉ」



という具合に僕の仲間は元気が有り余っており、魔族が来なかったらそれはそれで溜まったものを吐き出すところが無くなり大変そうだ。


「静かに。敵よ。数は8。道脇の茂みに潜んでいるわね。此方の様子を伺っているのかしら」

ヒューラの一言でふざけていた仲間達の表情に緊張感が表れる。


「雑魚か?」

「わからないわね。どうする?殺ってく?」

「団長が決めて」


アージ、ヒューラ、サラに問われ僕は躊躇無く答えた。


「倒して行こう。もうすぐ街だしそれにこんな道脇まで魔物が下りてくるなんて明らかに変だ。森で何かあったに違いない」


「「「了解」」」



「猛毒に染まりなさい」

ヒューラが茂みに向かい魔法を発動させる。

魔法の発動により茂みが紫に変色し、茂みから魔物が姿を現わす。


「コボルトナイトか」

アージの言ったとおり、目の前には武装したコボルトがいた。

コボルトナイトと呼ばれるコボルトの上位種だ。

ランクDレベルの強さだが、商人や街の人達からすれば相当な強さだ。

それが8匹も集まれば、Dランク冒険者チームでも勝てるか怪しくなる。


「アージ右から殲滅。サラは精霊に語りかけて守護魔法を。団長はタゲ取り任せたわよ。私は左から始末するわ」

ヒューラの命令に従い、アージは手につけている魔法武器である手袋に魔力を流し、その拳でコボルトナイトを殴る、コボルトナイトは手に持つ剣で受け止めようとしたが剣ごとコボルトナイトの体を粉砕した。


敵を倒したアージに次のコボルトナイトが剣を振り下ろす。しかし剣は何かに弾かれたように空間でその軌道が変わった。


「サンキューチビ!」

「チビ言うな」


サラが魔法でアージを守ったのだ。

まあチビ呼ばわりはいつもの事だが、それに毎度拒否をしているサラは真面目だよな。無視すればアージも言わなくなるのに。


「喰らいなさい毒蛇達よ」

ヒューラが魔法により召喚した毒蛇達は、その小柄さを活かして素早く動き、コボルトナイトの剣を避けその身体に噛み付いた。

噛み付かれたコボルトナイトは忽ち膝を地につけ、そのまま倒れ絶命した。


「グラァ!」

別のコボルトナイトの剣が素早く弧を描きヒューラを襲う。

コボルトナイトは剣のスキルを使用したのだ。

そこに俺が割り込む。


俺の持つ大きな盾がコボルトナイトのスキルによる攻撃を完璧止めた。

「ヒューラ」

「ポイズンブレット」


ヒューラが人差し指をコボルトナイトに突き立て魔法を発動させた。

紫色の塊が高速で発射されコボルトナイトの胸を貫いた。

貫かれた部位から紫色の毒が体全体を侵し、コボルトナイトはもがきながら地に落ちた。


「へい!だんちょー終わったぜ」

「どうする?魔石にする?それともこのまま持ってく?」

「魔石だな。毒に侵された死体は色々と問題を呼ぶからな」

「悪かったわね。毒女で」


ヒューラの二つ名は【毒女】【毒蛇】など毒関連の名前ばかりだ。

本人も別に嫌がってはいない。むしろ私にあってるわねとまで言っているので、今回も自虐ネタの様なものだ。


「毒蛇はちゃんと仕舞っておけよ。そんなもんが街に入ったらコボルトナイトどころの騒ぎじゃねーぞ」

「煩いわね。蛇ちゃん達は私の召喚獣だからすぐに帰るわよ」


召喚された毒蛇は、その後すぐに光の粒となり消えた。


「さて街までは後少しだ。気を抜かずに行くぞ」

「団長が一番楽しんでる?」

「サラはよく人を見ているわね。団長は人助けが好きなのよ」

「そうそう。そいつほどお節介なやつ知らねーからな」

「褒めるなよ。照れるだろ」


「「「褒めてない!」」」



「そもそも今回俺達が行く羽目になったのも......」

「うん?どうしたアージ?」


「なんでもねー!」

「言うだけ無駄。」

「まあ団長ですもの」


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