11話 ギルマスと神域魔法使い
「はぁ。今月の総会もうまくいかなかった。私の威厳というものはどこに行ってしまったのやら」
シャニィはムンタウンギルドのマスターだ。
マスターの仕事は主に冒険者達の管理やクエストの管理、周辺地域の管理など様々だ。
このムンタウンにおいては、冒険者達の管理が最も難しいのだ。
それもこれも問題児が多すぎる。
眉間を指で押さえて、机に突っ伏する。
「マコト殿は無事だろうか。彼の仲間は近頃問題によく上がるあの狂人だ。服をプレゼントさせたり色々裏から手を回してはいるが、それでも少しはマシ程度でしかないのだから。マコト殿も頑張っているのだ。私も頑張らねば」
自分に言い聞かせ、再び作業に戻ろうとした時だった。
部屋の扉が叩かれた。
コンコンコンと三回ノックされた後「入っても良いかの?」と聞こえてきたので、私は断ることもできず、望んでいない客を招き入れた。
「失礼。久しいのシャニィ。妾またパーティーをクビになってしもうた。次のパーティーを探してくれぬか?」
入ってきたのは女の子だ。名前はルーファス。見た目だけなら10歳前後だが、実年齢は21歳。ジョブは神域魔法使いというレアジョブを取得しているこの街の冒険者だ。
ルーファスの装いは魔法使いの物ではない。神域とはいえ魔法使いなのだ。ローブなり杖なり魔法へ追加効果を付与してくれる装備をしていいのに、この人ときたら。
黒色のフードを被り、その身には白銀の鎧を装備し、腕には爪まで付いている黒を基調とした籠手。その中に紫色の稲妻が描かれている。足は茶色のブーツを履いている。
その背には巨大なハンマーが背負われており、もはや戦士にしか見えない。
というか彼女もまたムンタウンの有名な問題児である。
あだ名は色々とあり【見た目だけルーファス】、【自爆魔法使い】、【ロリババア】など。
一番多いのが【見た目だけルーファス】だ。彼女の装備する装備品は全て一級品だ。もしくはそれ以上。
ただ彼女はそんな装備に神域魔法使いというレアなジョブであるのに、このようにパーティーからクビを言い渡され毎度のように私の元へ来るのだ。
「久しぶりか。1ヶ月前に会ったばかりだがな。それでまた抜けさせられたのか。理由は?」
「妾にはわからぬ。何がいけなかったのかすらのぉ」
「やはり成長は無しか。まずは何がいけなかったのか。それを把握するべきだろう。そうしなければ同じ過ちを犯す事になる」
「妾は気にせんぞ?ほれさっさと良さげなパーティーを見繕ってくれ」
はぁ。この人もいい加減にしてくれないだろうか。
この街で枠の空いている冒険者チームはいくつもある。だがそれでもルーファスのような変な奴を置いてくれるチームなどあるわけがないのだ。
それでも彼女を入れてくれる場所を探しても、ルーファスからすればどうでもいい、抜けてもまた次がある程度しか考えない。そんなんじゃ私だって紹介する気が失せるというものだ。
そんな風に思案を巡らせていると、再び絵やの扉が叩かれた。
コンコンコンと三回軽快な音を鳴らして、失礼しますの一声と共にその人物は中に入ってきた。
外見は美しくもなく、けれど不美人という訳でもない。至って普通なのだ。
亜麻色の髪は二つの三つ編みに纏められており、それも一層普通さを際立たせる。
服装は黄色の服に、茶色のスカート。そして白色のエプロンを身につけている。まさに村娘といった印象しか与えないような人物だ。
「トルナか。どうかしたか?」
「失礼しますシャニィさん。あら。お客様ですか?失礼を」
「気にするな。それでどうかしたか?」
彼女はトルナという名前で、このギルドの従業員の1人だ。
トルナはルーファスを視認すると、部屋を出ようとしたので私はそれを止めた。
「ええとですね。また人が引きずられるという事件が発生しまして」
「はぁ。次から次へと。で、誰だ?」
「はい。それがシラメとマコトです」
「引きずっているのは?」
「シラメです。血を流しながら引きずられているのがマコトです」
あぁなるほど。マコト殿。大変に苦労されているのだな。全く彼が頑張っているのに私が頑張らなくてどうする。ルーファスのパーティー探してやるしかないか。
「ぬ?そうじゃそのシラメとマコトというのはどこのパーティーなんじゃ?」
「はい?シラメとマコトは最近できたチームですので、新人宿に泊まっているかと」
「そうかそうかすまぬな。ではシャニィよ。失礼するぞ」
ルーファスに聞かれるまま答えたトルナはそこで己の失態に気がつく。
情報管理職であり、情報を集めるのがトルナの仕事だ。
そのためこんな地味な服を着て、地味な女を演じているのに、今現在の問題児の事を話してしまった。
そしてこのマコトという男をシャニィさんは気に入っている。
マズイことになったと思い、トルナが弁解を使用と前を向くと、ガタガタと震えるシャニィさんの姿があった。
「す、すまない。マコト殿。わ、わた、私が裏切った訳ではないのだ。決して違う。ぬぁああああああ何でこうなるんだ!」
頭を抱えて声を荒げる、シャニィさんを最近は見る機会が増えたなと感じるトルナであった。




