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10話 ちょっと強いコボルト

「セヤァア」

「グルァア」


俺の目の前では、ちょっと強いコボルトとシラメの戦闘が繰り広げられていた。

シラメが刺しそれをちょっと強いコボルトが往なす。

シラメは攻撃の手を止める事なく、攻め続けるもちょっと強いコボルトの防御を突破できずにいた。


それはちょっと強いコボルトも同じようで、攻勢に出たいのだろうが、出ようとするとシラメがその防御と攻撃の入れ替わりのタイミングを狙うので、下手に攻められずちょっと強いコボルトは防戦一方という状態になった。


「マコト!サボんなサポート入って!」

「あー!もうわかったよ!」


一方的に負けるかと思っていたのだが、シラメが戦っているのを見ると意外と弱いのかもしれない。

見た目だけの可能性もあるのか?


俺はちょっと強いコボルトの後方へ、木々の隙間を縫って進みバレないようにちょっと強いコボルトの背後を取った。


「せぁあああ!」


俺はちょっと強いコボルトの背後から飛び出して、剣を抜き一気に振りかざした。


俺の持つ剣はちょっと強いコボルトの首を狙って振り下ろされた。

そしてその剣は見事に空を切り、何もない地面にその切っ先を付けた。


「避けられッヌガッ」


ちょっと強いコボルトは俺の攻撃を見ることもせず、身体を半身にして避けた。


シラメがあのように戦えているからと、俺は油断したのだ。


俺の隙だらけの俺の顔面にちょっと強いコボルトは裏拳を入れた。

そしてコボルトはその剣を振り抜く


六枚刃シックスエッジ


コボルトの斬撃が弧を描き、俺の身体を襲う。

身体に3回、肩に1回、足に1回。そして剣を持っていた俺の腕が空を舞っていた。一瞬にして、6回の斬撃は俺を瀕死に追いやった。


「ウギャアアアアアアアアアアアアア」

俺は腹の底から発狂した。

「腕がァアアァア」


「ナイスサポート。獲物を見つけたからと言って、私からの警戒を解いちゃうのは悪手よ。犬っころ」


しかしそんな事があっても、シラメからすればどうでもいい事だった。


激痛が俺の身体を襲い、意識が薄れるのを必死に耐えている目の前で、俺を斬り捨てたちょっと強いコボルトの首が飛んだ。


「ヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒール」


俺は意識の消えないうちに自分の体にヒールを重ね掛けした。

意識が消えてしまうと、以前ギルドでシラメに刺された時のように、他の人に頼るしか無くなる。

そして今俺がそうなると確実に死ぬ。


「ヌァアアアアアアアアア!ヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒール」

「おお!すごいすごい!腕が戻っていってるわよ!これなら次からも全然大丈夫そうね」


シラメが拍手しながらその光景を見ているのだが、俺はもう必死だ。気絶しそうだし、腕が飛んだ激痛だけで、もうぶっ倒れそう。


俺はありったけのヒールを使い、飛んだ腕が元に戻り、身体の傷や足、肩の傷も全て完治した。

というか腕が付着する瞬間が気持ち悪かった。


「ねえひとついい?敵の後ろから奇襲するのに、せぁあはないわ。今から攻撃しますよって教えているみたいなものじゃない」

「そ、そうだ......な」


ごもっともな事を言われて、俺は返す言葉もなかった。

というより意識が薄れていってないか。視界が半分くらい暗い。

というかあれ......力が入ら、ない。


バタ


俺の身体は何の抵抗もないまま、倒れた。

回復をしたはずなのに、何故倒れたのかはわからない。ただ意識が消える前に願うことは、頼むからここに放置だけはやめてくれシラメさん。という事だった。







目を覚ますと森の中を動いていた。

動いていたというのは視界から見える景色だが。

木々の隙間から見える太陽の光。

それを視界に入れながら、動く景色。


すると突然訪れる、背中や頭からの激痛。

足には変な浮遊感がある。


「シラメさんや......引きずるなよ」

「は?人の運び方はマコトが教えてくれたじゃない」

「あ、そうでしたねぇ」


俺はシラメに森の中を、引きずられていた。俺の剣はシラメが持っており、俺の身軽な状態で地面に身体を打ちながら怪我だらけだが、剣は大切なようだ。


「それで立てそう?」

「無理だ。さっきから何度も動かそうとしているが無理。どうしてだろうか。切られたのを修復した反動かな」

「うーん。どーだろ。前に私がやった時は普通だったから、ゲームとかでいうMP切れってやつなんじゃない?」

「MPって。ああマジックポイントね」


そういえばゲームとかでは魔法を使う際、MPと呼ばれるものを支払って使用していたりする。

つまりこの世界に魔法がありスキルがあるなら、MPがあってもおかしくない。

つまり俺はMP切れの状態。魔法の使い過ぎで、魔力切れといったところだろう。


「まあそのまま運んでくれや。不服だが俺1人では街まで帰れないしな」

「あーはいはい。めんどーだけど引きずるだけだから、楽だしね。あーそうそうあのちょっと強かったコボルトね。魔石にしたら不思議なの。ほら見てよ」


俺の片足を離し、シラメは背中に背負う袋から、魔石を二つ取り出した。

一つは黄色の魔石。ゴブリンとかから落ちたものとほぼ同じサイズで、野球のボールくらいのサイズだ。

そしてもう一つが、色は同じ黄色だがそのサイズが、ひと回りでかい魔石だった。


「あのちょっと強いコボルトから出た魔石がさ、少し大きかったのよね」

「イタタ。わかったから足足片足で引っ張られるのは本当に痛いからやめて」

「ん?あーごめんごめん」


片足だと引っ張る力も一点にかかるわ、地面へと接着面が増えるから、その部分も痛いわで、余計痛かった。


「魔石が違うってことは、別個体だった可能性もあるな。上位個体みたいな。はあやっぱりな。絶対手を出すべきではなかったんだよ。俺死んだかと思ったからな」

「まあ勝てたしいいじゃん。魔石はチルちゃんに聞いてみよ。あーあと。まだ3匹しか倒してないから明日もう2匹倒すわよ」

「絶対同じように強そうな奴が出てきても手を出すなよ」

「わかってるわよ!」




ちょっと強いコボルトの件はクエスト達成時に報告する事にして、俺達は宿に帰った。

引きずられる俺は街でも相当視線を集めた。

たまたま街ですれ違った、チームカスタネットのリーダー。トサカことトロンゴさんに事情を話すと、やはり魔力切れ状態だったようで、青色のポーションを貰った。


青色のポーションは魔力を回復するポーションで、緑が体力を回復するポーションらしい。


そのおかげで俺は立って1人で歩けるようになり、トロンゴさんにお礼を言い、宿へ帰り部屋の前まで行くと、そこには謎の人物が立っていた。



「お!ようやっと帰ったか!のお!お主ら妾をお主らのパーティーに入れてくれぬか!」

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