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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第1章 始まりのエンドレスライフ
3/27

2 来ちゃったよ……

 見慣れない景色が広がってくる。昔からよく知る空の色が、だんだんと青から暗く、黒っぽく変わっていく。

「気分はどうだ、廻?」

「意外と……普通」

「どうだ? 初めての宇宙は」

「……綺麗よね。実際に目にするとやっぱ違うよな。みんなが惹かれるのも、わからんでもない」

「そうか、ならよかった」

 宇宙探査機は順調に目的地へと進み、やがて目の前に巨大な物体を捉えはじめる。

「ルーカス、なにあれ……って、あれって……」

「あれか? あれが、エンドレスだ」

「うわぁ……でっけぇなぁ……」

 宇宙に広がる、巨大な人類の英知の結晶。いざ目の前にしてみると、その圧倒的な存在感に、畏敬の念すら抱きそうになる。

 

 エンドレスが近づくと、ルーカスがエンドレス内部の人間と通信を始める。

「こちら1-Aのルーカス。只今よりエンドレスに帰還する」

 ルーカスが軽い通信を済ますと、エンドレスの入り口と思われる場所が開き、宇宙探査機はそこから中に入る。中に入り、少し進むと、複数の宇宙探査機が辺りに置かれている、どうやら格納庫のようなところに着いたようだ。

「さ、着いたぞ」

 ルーカスは宇宙探査機を所定の位置に止め、宇宙探査機からカッコよく降りる。

「ここが……エンドレス……」

 ルーカスの後に続き、俺も宇宙探査機から降りる。周りを見ると、宇宙探査機を整備? でもしているのだろうか。そんな人たちがちらほら見える。

初めての場所、なにより、「エンドレス」という場所のどえらい感に気圧されながら、ルーカスの後ろを小動物のようについていく。

「どうした? そんな緊張することないって」

「そうは言っても、やっぱ緊張するって……」

 さっきまで、地球でラーメン食っていたのに、今では流れ流れてエンドレスの中。しかも、エンドレスに来るのに覚悟もクソも無く、のほほんと来てしまった。だから、今になって事の重大さに気づき始めてしまった。

 前を歩いていたルーカスが、あるドアの前に立ち止まる。そして、俺をなにかの装置の前に呼び、そこで待機するように命じる。 

「とりあえず、みんなのところに行こうか。と言っても、ここにいる人全員に会いに行くわけじゃないけど」

 そう言って、ルーカスはなにかの装置を操作し始めた。一体、なんの装置なんだろうか?

「なにしてんの?」

「このままだったら、廻が不正侵入になるから、登録してんのさ。はい、正面向いて」

「こう?」

「はいそのまま」

 目の前を装置をじっと見る。すると、なにをやったのか定かじゃないが、早くももう済んだようだ。

「いいよ。終わり」

「もういいの? ちゃんとなってる?」

「大丈夫だ。多分。それじゃあ、行こうか」

「多分ってなんだよ!」

 ドアを開け、階段を上る。すると、大きな広間のようなところへ出た。

「着いたぞ。エンドレスの1階だ」

「うわ、広ぇな……って、1階? さっきのとこは?」

「地下1階」

「地下!? なんで地下?」

「便宜上そう付けただけだ。気にすんな」

少し進み、辺りを見渡す。広間の真ん中に、なにか流れている巨大なモニターがあったり、少し先には、なにかの店と思われるものが複数並んであったりして、宇宙船の内部というよりは、ショッピングモールにでも来た気分だった。

 その光景に、唖然としていると、奥の方から2人組の女性がこちらへやって来た。

「おーいルーカスー」

 2人組のうちの1人が、少し離れたところから声を上げ、こちらに手を振ってくる。ルーカスの知り合いだろうか。

 女性達が、ルーカスのそばまで近づと、ルーカスが女性達に返事をする。

「ただいま」

「おかえり」

「おかえりー……って、ソチラはドナタ?」

 俺の方を見て、先ほど手を振っていた方の女性がルーカスに尋ねる。

「スカウトしてきた整備士」

「あ、ども。篠前廻です」

「あ、やっと見つけたんだ。よかったじゃん。で、あたし、マリア・カレスティアね。よろしく。マリアでいいーよー」

「あ、私は、月星照花です。よろしくお願いします」

「えっと……篠前……さん? くん? めんどくさいから……シノでいいよね?」

「シノ……?」

「初対面の人に、それはどうだろうマリア……」

 月星と名乗った女性が、半分呆れ、たしなめるようにマリアと名乗った女性に言った。

「廻。この2人は俺と同じ、チーム1-Aのメンバーだ。ちなみに、2人は1-Aの調査隊だ」

「調査隊……? 確か、実際に宇宙に出て、惑星の調査なんかをしたりするアレ?」

「そうでーす」

「はい」

「へぇ……(見えな――)」

「見えない? まーよー言われっわ。ハハハ」

「普段がそんなんだからでしょ!」

「ア、アハハ……(げ。エスパーかよ)」

「まぁ、こんなんでも、仕事はちゃんとしているから、気にしなくていいぞ」

 ルーカスは、俺の肩をポンポンっと叩き、すかさずフォローを入れる。

「こんなんってなによこんなんってぇ」

「それはどうでもいいとして、ルーカス。これから艦長や1-Aのみんなに、篠前さんを紹介するの?」

「一応な」

「だったら今、艦長は会議が始まって用事があるので、先に1-Aのみんなに、篠前さんを紹介したほうがいいと思うよ」

「そうだな、そうする。じゃあ行こうか、廻」

「あ、ちょい待ってルーカス」

 マリアさんが、先程までのふざけた感じとは少し違う、真面目な感じになり、ルーカスを呼び止める。

「ユゼに、ルーカスが帰って来たら直接言っておいてくれって、言われてたことがあってさ。ちょっといい?」

「そうか。悪いな廻。ちょっとそこら辺で待っていてくれ」

「でしたら、私が代わりに案内しましょうか?」

 どうやら月星さんが、ルーカスに変わり案内を務めてくれるようだ。

「そうだな。頼んでいいか?」

「いいよ」

「んじゃ、照花よろしくー」

「うん。それじゃあ行きましょうか、篠前さん」

「あ、はい。お願いします」


  月星さんに案内されてその場を後にする。1-Aのみんな? のところへ向かうらしい。

 移動中、月星さんに、気になった事を色々と訊いてみることにした。

「あの……チーム1-Aってなんすか? それと、自分はどこになるんすか?」

「あれ? ルーカスから聞かされていませんでした?」

「いいえ」

「(また強引に誘ったのだろうか……)あ、えっとですね、チーム1-Aというのは、エンドレスに10あるチームの1つ、『チーム1』の『A』ってことですね。そのままですけど」

「BもCもあるってことですか?」

「そうですね、AからEまであります。各チーム100人ぐらいで構成されていて、そこからさらに、20人ぐらいのチーム5つに分けられます。この5つに、アルファベットが振り分けられる……という感じです。なんとなく分かりました?」

「まぁ、なんとなく……」

「つまり、『チーム1』として動く時は100人規模で、『チーム1-A』として動く時は20人規模で動くということです」

「なるほど」

「それで、篠前さんの配属先ですが、ルーカスがスカウトしたということは、私たちと同じチーム1-Aになるでしょう。よろしくお願いします」

「あ、よろしくお願いします。それで、自分はなにをやるんすかね? やっぱり、整備? でも操縦がどうこうとも言ってたし……」

「両方だと思います。ルーカスが『ああ、整備と操縦が出来る人が欲しいぜ……』的なことを言っていたので」

「そういえばルーカスが、探査機の整備も出来て、動かすことも出来る人を探してるって言ってたっけな……。でも、そんなに人いないもんなんすか? 少なくとも1000人ぐらいはいるんじゃないすか? ここには」

「うちでは原則として、ほかのチームから人をもってくるってことをしないんですよね。基本的には、抜けた穴には新しい人を募集するので」

「なんかそこら辺、ルーカスがめんどくさいって言ってました」

「ええ、そうですね。まぁ、私には関係ないんですけど」

「あの……それで今、チーム1-Aは何人ぐらいいるんすか? 人集めてるんすよね」

「今は……10人です……」

「え!? 半分じゃないっすか」

「そうなんです……」

「え、なんで? なにがあったんすか?」

「ちょっとまぁ……いろいろ……。ですから最近は、ほかのチームのサポートに回ることが多いですね」

「そ、そうなんすか……」

 月星さんに案内され、3階へと着く。少し歩くと、1階にもあった謎の3メートルはありそうな犬のロボット? みたいなオブジェ? みたいなものが3階にも置かれていた。

「あの、さっき歩いてる時もあったんすけど、このでかい犬みたいなのってなんすか?」

「これですか? WSIです」

「WSI? なんすかそれ」

「エンドレスが攻め込まれ、武装集団なんかに私たちが襲われそうになった時、それを排除するためのロボットです。あのわんちゃん、見た目は犬のロボットですが、中身は立派な兵器です」

「へぇ……怖」

「まぁ、動いているところを見たことは無いですけどね。見たいとも思いませんけど。それに、普通の人がいじってどうこう出来る物ではないので、安全面の心配は大丈夫です。……って、着きました。ここです」

 1-Aと書かれた表札が付いている部屋の前に着く。周りには、1-Bや1-Cと書かれた表札が付いている部屋があった。なんだか、学校を思い出す。

「では、行きましょうか」

 月星さんに連れられて中に入る。通路に沿って歩く道中、たくさんの部屋があった。どうやら、各個人の部屋らしい。通路を進んだ先にある広い部屋にでると、会議室のようなところへ着いた。

「あ、ちょうどよかった。みなさん、注目です」

 月星さんがそう言うと、そこに居る5名がこっちを向いた。

「ルーカスが連れて来た、新入りの方です」

「あ、ども。篠前廻です。よろしくお願いします」

 青い服を着ている男性が、驚いた感じの声を出した。

「ルーカスが連れて来た? 急だなぁ本当……」

「でも見つかってよかったじゃない。アイツ、結構探してたし」

「あ、俺は中洞蒼史。下の名前で呼んでくれ」

「どうも。(明るいおっさんって感じだ)」

「あたしはルイザ。ルイザ・グージェルミンよ。よろしくね」

「どうも。(こっちは明るいおばさんって感じだ)」

 2人は、他の3人にも挨拶を促す。

「あ……どうも……奈村です……」

「どうも。(おとなしそうだ)」

「レナードだ。よろしく頼む」

「どうも。(でっけぇな……。ルーカスよりあるな……)」

「アンナよ。宜しくね」

「どうも。(俺よりデカい……。して、かっこいい……)」

「あと2人いるんですけど、今は……ユゼは会議中で、ミヤカは? 誰か知ってる?」

「寝てんじゃない?」

「そっか。あ、ちなみに、この中で、調査隊は、レナード。技術隊が、卓ちゃ……奈村君とルイザ。オペレーターがアンナと蒼史です」

「ちなみに、ルーカスはなんすか?」

「ルーカスは、1-Aのチームリーダーです。ついでに、チーム1のリーダーでもあります」

「チーム1のリーダー!?」

 店長が言っていたことって、そういうことだったのか……。

「まぁルーカスの場合、そっちの仕事はサブリーダーに任せて、自分は好き勝手やっていることが多いですけど」

「そうなんすか……」

 蒼史さんが近くに寄ってきて、こちらの心情を察したかのように声をかけてくる。

「いやぁ、篠前さんも大変だったでしょ。よくわからない男にいろいろ言われて、挙句の果てに急に連れて来られて」

「いやでも、ルーカスとは前から面識あったんで……」

「あ、そうだったの? アイツとどういう関係だったの? 気になる」

「え、いやあの、なんつーか……一緒に昼飯を……食う、仲……?」

「な、なるほど?」


 その後しばらく、1-Aの人たちと会話をしていると、ルーカスがマリアさんと一緒に部屋に戻ってきた。

「やっほー。ただいまー」

「あ、廻。自己紹介は済んだか?」

「まあ、大体」

「みんな、俺の口からも言っておこう。俺が地球でスカウトしてきた篠前廻だ。廻には、基本は調査隊の仕事、そして、技術隊の仕事もやってもらうつもりでいる。よろしく頼む。ま、みんなにもそのうち仕事増やすから、そのつもりで」

「ええー……めんど」

「マリアは、早く機械弄れるようになってもらわないとね」

「そういうルイザも、早く宇宙探査機動かせるようになってもらわないとねっ」

「まあまあ。それで、これからの動きなんだが、俺たちは次のムタヘバの調査から完全に外れることになった」

「いいのか、俺たちが抜けて」

 レナードさんが、怪訝そうな顔でルーカスに言う。するとマリアさんが、経緯を説明し始めた。

「んっとねー。さっきユゼから聞いた話、いくらあたしらがムタヘバの調査チームに加わってたからって、やっぱりこのチーム状況じゃ、そっちを先になんとかしろだって。『アレ』の件もあるしねー。それに、今回はチームの半数ぐらい割くんだって。だからあたしらは、お役御免なさい、だそうです」

「じゃあ、あのめんどくさい準備とかしなくていいのか。ラッキー」

 蒼史さんが、気の抜けた声で喜ぶ。だが、本心から喜んでいる感じではない。

「それで、私たちはこれからどうするのかしら?」

 アンナさんが、ルーカスにこれからの動きを尋ねる。ルーカスは少し考え、答えを出す。

「とりあえず、次の任務まで各自好きに動いて。いつも通り」

 その言葉を聞いた各員は、特になにか反論するわけでもなく、自然とその場から解散していく。

「廻。とりあえず、最初は技術隊の仕事に慣れてくれ。ま、やってることは、沢園技術にいた時と特に変わんないと思うけど」

「ああ、わかった」

「とりあえず、今日は色々あって疲れただろうから、後はゆっくりしてくれ。空いてる部屋、適当に選んでいいから」

「ん、わかった」


 さっきの、部屋がたくさんあった場所に戻り、空いている部屋に入る。中は、生活するには申し分ないぐらい完成されていた。とりあえず中に進み、辺りを見渡すと、気持ちよさそうな布団があった。それを見て、無条件で布団の上に倒れこみ、一息つく。今日一日で、随分と自分の周りの環境が激変してしまった。……全部夢だったかな? ま、そんなことどうでもいいや。……なんだか、急に眠くなってきた。少しだけ目を閉じて、横になっていよう。少しだけ……。


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