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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第3章 衒い 放つ 咲き誇る
20/27

1 シドシワルワ、初陣

 ――ミールフス――



 ミールフスの、ある公園。とてものどかで、子供たちの遊ぶ楽しそうな声も聞こえてくる。 

 ミールフスの、ある町。町を行き交う人々には活気があふれ、皆それぞれ今日の予定を順調にこなしている。


 ふと、公園で遊んでいた、ある子供が空を見上げる。子供の視線の先には、複数の、なにかの飛翔体のようなものが映り、こちらへ向かっていた。

「ママー。なぁに? あれー」

 子供は近くにいる母親に、上空にある、よくわからないものについて尋ねた。

「どれー? えっと……宇宙……探査機……? なにかしら……」


「おい、なんだアレ?」

 町を行き交う人々も、誰かのその言葉に反応し、次々と上空を見上げる。

「なにあれ?」

「宇宙探査機じゃねぇの?」

「え、違くね?」

 誰1人、その正体を知るものはいなかった。


 子供に尋ねられ、上空を見ていた母親が、ここで異変に気付く。

「だんだん……早くなって……こっちに近づいてきてる……。え?」

「あ、ママー。あれ近づいてきた」

「ちょっと待って……これって……危ないんじゃ……」

 ぐんぐんと飛翔体が近づいてくる。とても、途中で止まる気配はない。

「こっちに……来る……」

 母親は怯えた顔になり、急いで自分の娘を抱きかかえ、その場から逃げようとする。

「ママー。どうしたのー?」

 だが、いざ走り出そうとした時、親子がいた場所にその飛翔体が落下した。落下した衝撃で辺りの地面は抉れ、赤いものが飛翔体の周りに噴き出した。


「おい、やべぇんじゃねぇのあれ」

「こっち来る!」

「逃げろ! 逃げろぉぉぉぉ!!」

 町の方にも、飛翔体が次々と落下していく。先ほどまで安寧の地だったそこは、今では逃げ惑う人々の悲鳴や慟哭が響く阿鼻叫喚の地へと様変わりした。





「腕……捲ってくんない?」

 マリアにそう言われ、マリアの腕をゆっくり、慎重に捲る。

「さんきゅ」

 マリアは自ら注射を打ち始める。俺はある点が気になり、ずっと、マリアの注射をしている箇所にある、腕の「あざ」を見ている。

「おい……それ……」

「いやんエッチ」

「お前……銃といい……お前って――」


 マリアの核心に触れようとしたが、艦内に流れたアナウンスによってそれを遮られる。

「緊急事態発生、緊急事態発生。船外にて、未知の巨大生物が出現。この巨大生物が、惑星ミールフスに対し攻撃と思われる行為をしているため、エンドレス調査隊、並びに、宇宙探査機を操縦できる者は、直ちに出撃、攻撃し、これを阻止せよ。繰り返す。船外にて――」

「……は?」

 アナウンスの内容が理解できなかった。厳密に言えば、命令が出され、その動きや内容については理解出来たが、それに至った経緯、事象についてが理解出来なかった。

「巨大……生物?」

 俺だけじゃなく、卓ちゃんとマリアもなにがなんだかという感じになっている。

 アナウンスの声が、艦長に変わる。

「各員、船内ではまだWSIの脅威が残っているため十分警戒して格納庫に向かってくれ。そして、チーム1-A、聞こえているか。『シドシワルワ』だ。シドシワルワを出撃させろ。シドシワルワを使い、船外にいる巨大生物を排除しろ。シドシワルワは立ち入り禁止区域の先にある。では頼んだぞ、皆」

 聞きなれない単語が、急に出てきた。しかもそれを、1-Aが? え?

「……シドシワルワってなに?」

「ほら……ボケっとしてないで……早く行ってきなさいよ。あたしも……あとで向かうから……」

「なに言ってんだ! お前は大人しく寝てろ! クソッ、なんだよ次から次へと……」

 頭を抱え、床に倒れこむ。今までの事でも手一杯だったのに、また新たな厄介事が増えてしまった。頭の中がオーバーフローしそうだ。

「大……丈夫……?」

「……大丈夫じゃないけど大丈夫だ卓ちゃん。……行ってくるよ。マリアを頼む。っつーかなんだよ、シドシワルワって……」

「うん……気を付けて……」

 俺はその場を後にし、もう1度あの地獄に足を踏み入れる。……そこには、相変わらず、黒い煙が立ち込めていた。それに、どうやら近くにはWSIの気配はない。確か、立ち入り禁止区域は地下1階にあったはずだ。今のうちに急いで向かうとしよう……。




 ――2階・食堂――



「おい……今の聞いたか……」

「フ……フフフ。キタ……やっと……」

「ミヤカ……?」

 ミヤカが急に走り出す。アナウンスを聞いて呆然としていたユゼは、一歩遅れてミヤカを追う。

「お、おい、待て。まだWSIがいるかも――」

「うっせぇ! だったら引っ込んでろチキン」

「おい! 2人とも……って、行っちゃった……」

「どうする……? あたし達も向かうかい……?」

「行ったところで俺たちには……。いや、でも……。ああもう! とにかく行こう! なんかで助力できるかもしれないしっ!」



 1階に差し掛かる階段を下る途中、ユゼは床に落ちていたあるものを見つける。

「これ、包帯か。こんなところに置いてたら危ないな」

 ユゼは包帯を拾い、再びミヤカの後を追う。すると、ミヤカがなにやら立ち止まっている。

「どうした?」

「見ろよ、アレ」

「あれは……WSI!? 1階のWSIは全て対処したんじゃ……」

 WSIが、地下1階につながっている場所へ向かうために通る必要がある通路上に、銃を構え居座っている。

「どうする? 迂回するか?」

「んな暇あっか? ねぇだろ。強行突破だ」

「でも……」

「お前は警備隊呼んで来い。このままアイツがいたんじゃ後続が通るに通れねぇだろうしな」

「わかった。わかったからお前もここにいろ、な」

 ユゼが2階に戻ろうと振り返った瞬間、後方から走り去る音が聞こえてきた。

「おい! ミヤカ!」

 ミヤカが、WSIが待ち構えているところへ突っ込んでいった。当然、WSIはミヤカを捕捉し、ミヤカに対し銃撃を開始する。ミヤカはそれをものともせず、WSIの横を通りすぎて行く。

「あんのバカ!!」

ユゼはWSIの近くまで走っていき、持っていた包帯をWSIに投げつける。すると、攻撃されたと認識したWSIは、標的をミヤカからユゼに変える。

「いいぞいいぞ。こっちだこっちぃ!」

 銃撃が止んだことに疑問を感じたミヤカは、後方を確認する。すると、そこにはWSIの銃撃を今にも受けそうなユゼがいた。

「チッ」

 ユゼは、こういう荒事には不慣れで、機敏に動けるわけでもなかった。つまり、ユゼは自身がWSIの銃撃を躱せないことには、薄々気づいていた。

「やっべ……」

 WSIを見つめ、死を覚悟する。だが、そんなユゼの視界に、WSIの後方から人が駆け寄ってくるのが見えた。

 WSIの銃撃が始まった。が、ユゼは駆け寄って来た人物によって共に体を倒され、銃撃をすんでのところで躱すことに成功した。

「うっ」

 体を倒してきた人物から苦悶の声が漏れた。その声を漏らしたのは、ミヤカだった。

「ミヤカ……」

「ざけんな足手まとい……」

ミヤカが珍しく苦しそうな表情を浮かべている。

「どうした……お前まさか!?」

 ユゼはすぐさまミヤカの体を見る。すると、ミヤカの足元から血が溢れ出ている。

「お前……撃たれて……!」

「んでもねぇよこんくらい」

 WSIの銃撃が一旦止み、今度は床にいる2人のほうに標準が合わせられる。WSIが、次の銃撃を繰り出そうとした時、遠方からWSIに銃撃が加えられる。ユゼが、その方を向くと、警備隊が銃を構えていた。

「良かった、間に合った……」

 警備隊の後方には、蒼史とルイザがいた。2人は、ミヤカ達を追っている途中で、ミヤカ達の会話が聞こえてきて、すぐさま警備隊を呼びに戻ったのだ。

 WSIが、警備隊に対し銃撃を行う。この隙に、ユゼはミヤカを連れその場を離れ、先程投げつけた包帯を取り、ミヤカの傷口をとりあえず塞ぐ。

「大丈夫か?」

「誰のせいだよ……」

「すまなかった……」

 包帯をある程度巻くと、ミヤカはすぐさま立ち上がり、シドシワルワのところへ向かおうとする。

「おい! 動いて大丈夫なのか?」

「うっせーよ」

 ミヤカは両足を撃たれている。普通なら、歩くことはおろか、立ちあがることすら出来ないはずだ。

「いくぞ」

「お、おう」

 2人は、シドシワルワがある立ち入り禁止区域に急いだ。



 格納庫へ着いたミヤカとユゼ。だが、2人の目的地はここではなく、格納庫にある立ち入り禁止の扉、その扉の向こうに広がっている立ち入り禁止区域だ。

 2人は、状況を完全に把握出来ていないであろうが、急いで出撃準備を進めている調査隊の面々を尻目に、先に進んで行く。

「ここだ」

 ミヤカは、立ち入り禁止区域につながる扉を開け、迷うことなく先に進んで行く。

「流石、行き慣れてるな……」

「ハッ」

 ある程度先に進むと、ある1つの扉が姿を現す。その扉は、ミヤカが前回侵入した時に、1番怪しい、なにかある、と疑っていた扉だ。

「ま、ここだろうな」

 ミヤカは、その扉に手をかける。前回とはうってかわり、扉は難なく開く。

 2人が奥へ進むと、そこには、数十メートルはある建造物のような物が複数存在していた。その異様で圧倒される光景に、ユゼは思わず愕然とした。

「なんだこれ……。これが……シドシワルワなのか?」

「フ……フフ……」

 ミヤカは、複数の「ソレら」が並んでいる中で、ある1つの「ソレ」を見つけ、ソレの目の前に立ち止まる。

「おい、どこへ……って、これまたなんとも不気味な……」

 「ソレ」は、数十メートルもある巨大な立方体のようなものだった。ミヤカは、ソレに近づき手を触れる。すると、その立方体に入り口と思われる穴が開く。

 ミヤカは、なんの躊躇いもなくその穴の中に入る。それを見たユゼは、急いでミヤカの後を追う。

「お、おい! 待てって。こんなわけわかんないもの、そんな勝手に……」

 ミヤカは、ユゼの制止など耳に入れず、どんどんと奥に進んで行く。

「どうやら、中心に向かってるみてぇだな」

 階段をある程度登ると、行き止まりの壁が見えてくる。その壁のもとへ着くと、自動ドアが開くかのように壁が開いた。中には、「ソレ」のコックピットが存在した。

 2人は、中へ入る。すると、ミヤカがユゼに、助言ともとれる言葉を投げかける。

「こっから先はお前の出番はない。とっとと失せろ」

「お、お前だって、コレの動かし方分かんのかよ? 始めてなんだから人数は多いに越したことはないだろ?」

「うるせぇ。テメェは日陰でうずくまってろ。ホラ、早く失せろ」

「行かねぇよ」

 ユゼは、コックピットを色々と弄る。どうやら、退く気はないようだ。その様子を見て、ミヤカがため息をつく。

「えっと……どうやったらこれ点くんだ? えっと……」

「どけ」

 ミヤカは、宇宙探査機を起動させる時と同じように操作する。すると、コックピットのシステムが難なく起動した。

「おお……さすがだな」

「サブリーダーのくせに、んなもんも分かんねぇのかよ」

「俺はデスクワーク寄りなんでな。それなのにルーカスときたら……」


 次々と画面に文字が表示される……。


 <User authentication・・・・ User authentication・・・・>


 <Miyaka Keating・・・・>


 <Authentication complete!!>


 <Unlocking・・・・>


 <Successful!!>


 <I wish you good luck!!>


 文字の表示が終わると、ミヤカとユゼが乗っているコレの下の床が動き出し、この巨大なロボットを宇宙に繋がる出入口の前まで運ぶ。

「いよいよみてぇだな。覚悟決めろ」

「お、おう」

「いくぞ」

「って、操作方法分かんの?」

「知らねぇよっ!」

 ミヤカは直感でパネルを操作する。すると、このロボットの背面からロケットエンジンのようにエネルギーが噴出され、その勢いのまま宇宙空間へと飛び立ってしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「オラオラァ!」

 直径、約40メートルの巨大な立方体が、エンドレスから勢いよく投げ出され、宇宙空間を漂う。エンドレスから投げ出されたそれを見た、先に出撃していた者達は、その異様な光景にもう1度目を奪われる。

「びっくりした……。急にスピード出しやがって……って……」

「……アレか。フフ……フフフ……」

 ユゼは、目の前の異様な光景に目を奪われ、とても強い恐怖心を抱いた。しかし、それとは対照的に、ミヤカは再び口角を吊り上げ、嬉々とした表情を浮かべた。

 2人の目の前には、この巨大な立方体のロボットを更に超える巨大な蕾のようなものと、それが咲き、中から大量の飛翔体を生み出している花のようなものが複数、本体と呼べるものから生えている、数百メートルはある謎のなにかが存在していた。

「さぁ、アイツを、今からぶっ潰すわけだ。で、今動かしてるコレはなんて呼べばいい?」

「シドシワルワ……? ん? よく見たら、ここに名前っぽいものが。えっと……『CUBE』?」

「面白れぇ。初陣だ! 行くぜっ『シドシワルワ-CUBE-』!!」

 ミヤカは、再びパネルを操作し、目の前の化け物がいる方に突っ込んでいった。


そのうち絵入れます。そのうち

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