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4話 ヒーローがボコボコ



 う~ん、拾った冒険者証どうしよう。

 届けた方がいいんだろうけど、直接渡すと素顔がばれちゃうかもしれないなあ。あ、そうか、冒険者ギルドに「これ落ちてました」って渡しちゃおう。


 まずは街へと向いましょうか。


 ビックボアを担いで街を目指す。

 ああ、バイクで移動したい。

 

 元の世界では正義の味方仕様のオートバイに乗っていたので、歩いて移動とかはほとんどなかったんですよ。


 街が近いんで、そろそろスーツ脱がないとまずいな。

 

 ビックボアを肩から降ろして普通の服に着替える。


 さてビックボアをと担ごうとしたけどやはり重すぎて無理でしたね。


 しょうがないんでスーツにもう一度着替えてから刀で3等分に分割。これでスーツなしでも持てるはずだ。

 今度解体用のナイフを買っておこう。


 さてとまずは1分割目を運びますか。


 1/3のビックボアを担いで街へ入る、ギルドへ行って一時預かってもらう。

 そしてすぐにまた残り2/3を隠した草むらへ向かう。


 遠くから見て気が付いたんだけど、隠した場所に数人の冒険者風の男が3人いる。


 これはヤバい。

 走ってその場所へ行くと、男2人がそれぞれビックボアを1/3づつ担いでいる。


 もう一人の男はちょっと偉そうにそれを指示している。


 3人とも20代前半くらいの若者だが、顔がちょっと怖そう。


「ちょっと待ってください。その魔物は俺んですよ」


 そういうと偉そうにしている男が俺をジロリと睨みつけてきましたね。

 こいつがリーダーみたい。


「はあ、何を言ってんだてめえ。俺達の獲物を横取りしようってのか」


「いえ、そんなこと言われても。1/3はすでのギルドに運んでいるんですよ。残りも持っていくって言っちゃってますから」


「それとこの俺達の獲物とどう関係あるんだよ、ああ?」


 スーツ着てればボコボコにしてやるんだけど、今は着てないから逆にボコボコにされる場面しか思い浮かばん。


「一応ギルドにはこの事を報告しますんで」


 ははは、言ってやったぜ!


 一瞬「はあ?」って顔をされたあと、いきなり男が殴ってきましたよ。


「がはっ、痛ってぇ。ぼ、暴力はいけませんって……」


 腹を殴られてその場にうずくまる。痛いっていうより苦しい。


「ロンさん、だめですってここは。見られますって」


 ビックボアを担いでいる男が止めに入ったんだが、しっかり名前は聞きました。忘れずに覚えておくよ。


「むかつくんだよ、こいつっ!!」


 そう言いながらさらにうずくまっている俺を足の裏で蹴りまくりやがる。


「ぐっ…や、やめてください…ぐぐ…勘弁して」


「けっ、ああうぜえ! 行くぞ!」


 なんでこんな目に合わなきゃいけないの。

 あれ、目から水がこぼれるよ。

 あれあれ、しょっぱい水が止まらないよ。


 30歳にして20代のクソガキに泣かされちまいました。悔しすぎるよ。


 手ぶらで街に戻り、すぐにギルドに直行。


 早速先ほどの内容をギルドに報告したんだけど、証拠がないと動けないらしい。一応警告はしてくれるそうだが、それ以上はなにもできないと。治安兵に報告してもおそらく同じ対応だと言われた。


 1/3のビックボアのお金を受け取りとぼとぼとギルドを出ました。

 

 街の外では基本自己責任だって言われました。

 街の外まで治安隊の力はなかなか手が及ばないらしい。

 時々近隣や街道は巡回することもあるが、せいぜいその程度だと。


 正義はどこ行った?


 『この世に正義がある限り悪は決して栄えない』


 これが元いた世界のヒーロー組合の言葉だ。

 これによると正義があっても悪は“栄えない”のであって、滅びないともとれる。滅びたらヒーローは職をなくしますからね。


 だけどこの世界はどうやら正義はないらしく、悪が蔓延っているようだ。


 俺がこの世界に来た理由はきっとこれだ。

 正義を守れと。


 恐らくヒーローなんて者はいないんじゃないだろうか。ということは正義の味方が独り占めか、やったモテまくりか!


 まずは身近な正義を執行してやるぜ。


 確か名前はロンとか言っていた。


 絶対に見つけ出して泣かしてやる!


 その前にまずはひとつ、重要な正義を実行しようではないか。


 落し物の冒険者証をギルドに正直に届けましょう。


 再び気を取り直してギルドの受付へ行く。


「すいません、これが街の外で落ちてたんですが」


 拾った冒険者証を受け付けの、いつものごついひげのおっさんに差し出す。


「わかった。預かる」


 ぶっきらぼうに対応された。


 なんだろうか、この腹の底から込み上がってくる得体のしれない感情は。


誰が拾ったとかどこでいつ拾ったとか全然聞かれない。


 まあリリーに素顔で合わなくて済むからいいんだけどね。


 俺はギルドを出た。


 街の安宿に泊まってぬるいエールを喉に流し込んでほろ酔い気分で寝床に入った。


 翌朝になってギルド行ってみると、俺の依頼表に仕事表が掛かっていた。


 キタ―と思ったら求人元の名前に見覚えがある。


 その見覚えのある名前とはリリーだった。





読んで頂きありがとうございます。


ここからは不定期投稿となりますがもうちょっと続きますんでよろしくお願いします。



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