29話 ヒーローがパーティー名を決めた!?
毎度のことながら遅くなりました!
う~む、リリーになんて言ったらいいんだろうか。
ギルドの建物を出て宿へとゆっくりと歩いて行く。その横に何故か一緒に並んで歩くジェシカをチラ見する。
意外と胸はでかいと見た!
ジェシカが俺の視線に気が付きニコっと笑顔を見せる。
俺は慌てて視線を逸らす。
やべ~~、やっぱこの子可愛ぇぇえわ。
ただ折角こんな可愛い子と一緒に歩いているというのに、さっきから会話らしい会話は一切ない。
いや、何度も会話の糸口を見つけようと努力はしてますよ。
でもキャバクラで慣らした俺の下ネタ満載の会話能力では、この世界の話のネタには付いていけないようだ。早い話が2人でずっと無言の状態で歩いている。
気まずい!
すごく気まずい!!
妙な汗を掻きながらもなんとか宿に到着。
すると1階の酒場兼食事処の奥のテーブルにリリーとルミアが座っていた。
リリーが俺に気が付いて直ぐに手を振ってくる。
「カイ――赤色仮面、こっち、こっち!」
横に視線を移すとジェシカは黙って頷くので、俺はゆっくりとリリー達のいるテーブルに近づく。
俺が口を開こうとすると先にリリーが先にしゃべりだした。
「で、その女は誰かしら?」
こ、怖ぇえええ!
ぜってえ怒ってるよ。
俺が何も言えないでいるとジェシカが口を開く。
「初めまして。リリーさんですよね。それにこちらはルミアちゃん。私はジェシカ・ヤングと言います。この街の専属Cランク冒険者です」
2人がキョトンとした表情で言葉が出せないでいると、なおもジェシカは話を続ける。俺が盗賊討伐に参加して大活躍したこと、そしてその功績で冒険者ランクをBの昇格したこと。さらにジェシカがパーティーに同行させてほしいということまで、全く俺の出る幕もなく話をしてくれました。
いや、助かりました。
少しながら死をも覚悟しましたから。
「そんな話、私はよく分からんのじゃ。でも美人局じゃないようなのじゃ」
ルミア! 意味わかってんのか!?
リリーは腕を組んでしばらく考え込んでいる。
それはそうだ。いきなり目の前に知らない女が現れて、今からパーティーに入りますって言うんだから。
しかも言ってみれば冒険者ギルドからの回し者。俺の監視役なんだろうなあ。
そりゃあ俺は突然現れた強者ですから。怪しまれてもしょうがない。
リリーが考えながら俺の方をチラチラ見ているな。
俺はそれを察して「ちょっと3人だけで話し合ってもいいですか?」と言って、一旦ジェシカに席を外してもらう。
丸いテーブルにリリーとルミアと俺が顔を合わせる。
今度は俺が最初に口を開く。
「恐らくジェシカは俺の監視役だと思うんですよ。俺のスーツはやっぱり強力みたいで冒険者ランクはB以上ってギルドマスター言われたんです。そんな冒険者が急に出現したんだからギルドとしては監視下に置いておきたいんだなあって思うんですよね」
ここまで言うとリリーは若干表情を和らげて溜息をつく。
その様子を見て俺はさらに話を進める。
「それでですね、リリーさんとルミアが良いというんならジェシカをパーティーに加えたいと思います。もちろん拒否するならば俺もそれに従います。ただ彼女はCランク冒険者で治癒魔法に精通しているから、パーティーに入れるメリットは大きいと思うですよ。どうでしょうか?」
リリーは悩んでいる様子だ。
そんなリリーの代わりにルミアが質問してきた。
「カイトは胸がでかいのが好きなのじゃな」
は?
何を言ってる!
「ルミア、突然何を言い出すんだよ。そういう話じゃないから」
何故か動揺する俺に対してさらにルミアがものすごい言葉の一撃をたたみ掛けて来た。
「でもなのじゃ。カイトはジェシカのおっぱいばっかり見ていたのじゃ」
その言葉にリリーが鋭く反応して「キッ」と俺に視線を向ける。
「エロ色仮面さん、そういう事ですか……」
いや、待って下さい。
そういうことじゃないですから。
っていうか無意識の内に視線がいってしまうんですよ~~!
「いや、それは勘違いですって、き、気のせいですよ」
「いや、あんた私の胸もチラチラいつも見てんじゃないのよ。勘違いじゃないでしょ」
げげげげ。
バレてたんですね。
こうなったら最終手段。
「すいませんでしたっ!」
テーブルに両手とおでこを付けて渾身の謝罪。
「ば、ばっかじゃないの……」
「なんでルミアのおっぱいは見てくれないのじゃ?」
ルミア、俺は『おまわりさん、この人です!』っていう状況は避けたい。
ここでやっと決断したのかリリーがしゃべり出す。
「ギルドに目を付けられたら冒険者なんてやっていけないわよ。それはもうパーティーに入れるしかないわね。でもパーティー登録名簿の筆頭者は私だからね。それだけは譲れないわよ」
はあ?
もしかしてリリーが悩んでいたのはそこなのか?
ま、そうか。急にリリーのDランクより下っ端だった俺がBランクになって、しかもリリーよりランクが上のCランクのジェシカがパーティーに入ろうってんだからな。
リリーの性格からして耐えられないんだろうな。
「リリーさんは最初からパーティーのリーダーだよ。仕切れるのはリリーさんしかいないですよ」
「そ、そう。それならいいのよ」
リリーは何故か視線を逸らす。
「ルミアもそれでいいのじゃ。リリーが隊長なのじゃ」
「ふん、そうね。ならジェシカを呼んできなさい」
話の決着は意外と簡単についた。
その後、ジェシカを呼んで4人でテーブルを囲んで親睦を深め、翌日に冒険者ギルドに集合ということで解散した。
これでなんとか丸く収まったと言っていいのかな。
リリーがもっとごねるかと思ったんだがそんなのことはなかった。一安心だ。
そういえばルミアの魔法練習はどうだったんだろう。リリーに聞くのを忘れちゃったよ。
寝る前に部屋でルミアに聞いてみた。
「ねえルミア。そういえば魔法の練習はどうだったんだい?」
「初級の風魔法が使えるようになったのじゃ」
「初級っていうとどんな魔法になるの?」
「エアカッターって言う魔法なのじゃ」
あ、だいたい魔法の内容想像できるよ。ゲームに良く出て来るやつじゃん。
「そうか、じゃあ明日見せてよね」
「いいぞ、ルミアの凄い魔法見せてあげるのじゃ。そういえばリリーが魔法書代金あとで請求するって言ってたのじゃ」
やっぱりそうきたか。講習代金銀貨15枚とか安すぎると思ったんだよね。
まあ、これに関してはリリーの直接話し合わないといけないかな。
こうして翌日の朝を迎えるのだった。
翌朝ルミアを連れてヒーロースーツ状態でギルドへ到着。
ギルド内へと入ると仕事を求める冒険者達で一杯だ。
リリーとジェシカを探してギルド内をキョロキョロしていると、ギルド併設のバーの奥のテーブルに2人を発見した。
2人は普通に会話しているようだ。
あれ、ちょっと意外だな。もっと仲悪いのかと思ったのに。
俺とルミアが2人に近づくと直ぐにリリーが俺達を目ざとく見つける。
「2人とも遅いわよ!」
はいはい、リリーさんよりも早く到着してなさいって言うんでしょ。
「あ~、すいませんリリーさん。遅くなりました」
俺とルミアが席に着くとリリーが再び話し出す。
「まずはパーティー名を決めなくちゃいけないのよね。何か考えてる?」
いやいや、そんなん急に言われても考えてる訳ないでしょ。
当然の事ながら誰からも意見がでません。
すると再びリリーが話始めます。
「意見がないなら私が決めるわよ。えっと――」
「リリーさん、ストップ!」
危なく変なネーミングされるところだった。リリーが口にする前になんとかそれを遮った!
「俺達が意見するとまた前みたいに決まらなくなっちゃうからさ、ここは中立なジェシカに何か良い案をいくつか出してもらおうよ」
突然の振りにジェシカは驚いて皆の顔を見回す。
しかし3人の視線はジェシカの意見に興味深々のようだ。
ジェシカは「あ、あの~、それならばごく一般的な名称をいくつか出しますんで……」と前置きをしたうえで案を出し始める。
「例えば、魔物を探すのならば“魔物特捜隊”と言ったりしますね。その他には魔物の討伐するならば“魔物狩人”とかかしら。あとは実際にある凝った名称だと“白い牙”とか決死隊”とか、“ナイトレンジャー”と言う様な○○レンジャーなんかもありますね」
特捜隊ってなんか正義の味方っぽくていいなあ。確か海外ではヒーロー戦隊の事を“パワーレンジャー”って言うらしいからレンジャーが付くのもいいかなあ。
しかしそこでリリーの意見が入る。
「そうね、それならリリーレンジャーにしましょう」
だからっ!
「普通は個人名をチーム名には入れませんよ。個人名を入れると馬鹿にされたりしますけど……」
ジェシカがナイス説明!
「そ、それならマジカルレンジャーでいいわ」
ジェシカの言葉が効いたようで最悪ネームは回避!
マジカルって魔法的とか不思議なっていう意味があるんだったよな。俺は魔法使えないけど不思議というのは当てはまるし。何よりもこれ以上考えるのは面倒くさい。
「はい、俺は不思議戦隊に賛成です!」
すると「不思議戦隊ってなんなのじゃ?」とルミアが聞いてきた。
「ああ、ごめん。マジカルレンジャーだね。俺の生まれたところではそれを不思議戦隊って訳すんだよ」
ひ~ミスったが上手くごまかした!
「ふ~ん、不思議戦隊かっこええのじゃ」
「魔法レンジャーじゃないのね。でもゴロも悪くないしそれにしましょう」
え、えっ、魔法レンジャーかマジカルレンジャーのままでいいから。俺の年でいうのもなんだけどさ、もっと中二病的な名前にしようよ。
その後、俺の意見は完全に無視されてパーティー名は決まっていくのだった。




