26話 ヒーロー対悪の組織
冒険者を取り囲んで猛烈攻撃中なのはやはりホネホネ団の方だった。冒険者達は防戦で手一杯だ。黒ずくめの戦闘員と怪人が2人、そしてさらにゴブリン10匹近くがホネホネ団に加勢している。
冒険者側は数的にも劣勢の上、それほど高いランクの冒険者もいない。Eランクがほとんどで数人のDランク冒険者が居る程度。一番高ランク冒険者は神官の恰好をした治癒魔法を使える少女だ。
やっぱり無理だったのだ。
ホネホネ団の戦闘員でさえEランク冒険者では歯が立たす、Dランク冒険者でやっと対等ぐらいだろうか。
怪人になるともはや無双ゲーム状態だ。
怪人が2人いるのはちょっときついのだが、この状態で俺だけ逃げるのはさすがに気が引ける。
しょうがないな、格好よく参上しちゃおっかな。
「正義がこの世にある限り、悪は決して栄えない!」
結構な大声で叫んだのだが、戦いの音や声で聞こえないらしい。誰も反応してくれなかった。
くそっ。
俺は強引に皆が見える場所に走り出る。
「赤色仮面ここに参上っ!!!」
やっと聞こえたらしくホネホネ団と冒険者達が一斉にこちらに振り向く。
「「「……」」」
そして静寂が訪れた。
その静寂を毒蜘蛛怪人が打ち破る。
「よ~し、男の冒険者は全員ぶち殺せ。女はロープでふん縛れ」
って俺の事は無視?
無かったことにしようとしてる?
「おぉおい! ごらぁぁあ! 折角格好よく出て来たんだから反応しろい!」
毒蜘蛛怪人が落ち着いた口調でそれに返答する。
「なんだ、赤い恰好の変態野郎じゃねえか。で、散歩かい?」
「ば、ばっきゃろ~! 俺もてめえらの討伐隊の1人なんだよ。全員覚悟しやがれってんだっ」
「ったく、面倒臭い野郎だなあ。おい、クロウ。このヘンタイ仮面をぶちのめしてマスクを剥げ」
毒蜘蛛男の命令にクロウと呼ばれたカラスの恰好をした怪人が、女冒険者から手を離して俺に向き直る。
今さ、ちょっと目に入ったんだけどさ、女冒険者の尻を撫でまわしてたよねこいつ。
カラス怪人から解放された女冒険者はふにゃふにゃとその場にしゃがみ込む。
「赤い変態野郎、俺の邪魔しやがって! ぶっ殺してやるカー」
人の事変態呼ばわりする前にね、今自分でやってたことは何なんですか?
変態はお前だろう?
股間膨らませて何言っちゃってるんだか。
「ヘンタイに変態呼ばわりされたくないね。お仕置きだ!」
俺は一気に加速して刀を振り抜く。
怪人相手なので先手必勝とばかりに全力で攻撃に出た。
手加減なしでスーツとマスクの継ぎ目、つまり首を狙ったのだが寸でのところでカラス野郎は避けやがった。
刀は空を切って鞘に収まる。
カラス怪人は焦った様子で俺との距離をあけると罵声を浴びせてきた。
「て、てっめぇっ。っぶねえじゃねえかよ。もう少しで首に当たるところだったぞカー!」
「何を言ってやがる、首を狙ったんだから当たり前だ。しかしよく避けやがったな……」
この世界へ来てから魔物の首を撥ねるのに慣れてしまったようで、無意識の内に敵の首を撥ねようとしてました。
スーツ着てるけど中身は人間という事を忘れかけてた。
ちょっと自分が怖い。
その間にゴブリン2匹が両脇から俺に接近してくる。
しかしもはや戦い慣れた雑魚モンスターだ。
両手を左右に伸ばして拳を突き出す。それで終わりだ。
それだけで2匹のコブリンは顔面に俺の拳をめり込ませて吹っ飛んでいく。
それを見たゴブリン達はもはや俺には近づいて来なくなった。というより遠ざかっていく。
かわりに戦闘員が2人がかりで俺に電撃ロットで殴りかかって来た。電撃ロットはバチバチと音が鳴るほどの最大パワーのようだ。
さすがにあれを喰らうとかなり痛い。
スーツがあるんでかなりの攻撃も防いでくれるんだが、直撃を喰らうと痛くて一瞬動きが止まってしまう。動きが止まれば一斉に攻撃を掛けられて窮地になるんで、直撃はさけないといけない。
幸いにもビビり気味のカラス怪人は、遠巻きに見ているだけで手を出してこない。
一斉に掛かってこなければ勝機は十分にあるじゃないのか。
1人目の戦闘員が振り下ろした電撃ロットを上半身だけで避けて、2人目の戦闘員の電撃ロットをも避けるのだが、その時に電撃ロットを持った手首を掴んでもう一人の戦闘員にそれを向ける。
「ぎゃぎゃぐへっ」っと叫び声を上げて感電した戦闘員がぶっ倒れる。
見方を感電させてしまった戦闘員が「あ、すまん」と思わず声に出すのだが、「今のお前にそんな余裕はないだろう」とつぶやきながら、そいつの頭にげんこつを落とした。
すると頭を押さえながらその戦闘員はその場に崩れ落ちた。
それをみたカラス怪人がかなり慌てた様子で子分達を呼ぶのだが、他の戦闘員やゴブリンも冒険者達と一応戦闘中である。
呼ばれてすぐに来られるほどの余裕はまだない。
戦闘員の1人がカラス怪人に向かって口を開く。
「クロウ様、すいませんが戦闘中で今は手が離せません!」
「お、俺もっす。そんな余裕ありません!」
1人の戦闘員が無理だと言葉にした途端に、次々に戦闘員達がカラス怪人に返答し始めたのだ。
そうなるとカラス怪人は困った様子でオタオタする。
これはかなりいい流れじゃねえか。
1対1なら何とかなりそうだし。それよりこのカラス怪人「実は弱いんじゃね」疑惑がプンプンしてきたし。
毒蜘蛛男と2人掛かりで攻撃される前に潰しておくか。
俺はスーツのパワーを使って一気にカラス怪人の懐へ入る。
するとカラス怪人はそれに合わせるかのように後退して距離をあける。
こいつの反応速度は俺のスーツと同等かそれ以上なのか?
もしかして動体視力なんかも相当上げってるみたいだな。ちょっとやっかいかもしれない。
でも使いこなしていなければ意味がない。
それが証拠にビビってやがる。
戦い慣れていないっぽい。
1発入りさえすれば何とかなりそうな気がする。
俺はカラス怪人が後退することも見越した上で奴の懐に飛び込んだ。
案の定、自分の懐に入り込まれたカラス怪人はパニックになりながらも、己のくちばしをブンブンと振り回しやがった。
「こいつっ、こいつっ、近寄るんじゃないカー」
「そんな攻撃に当たるはずがない――いでぇっ!」
油断した。
奴のくちばし攻撃が俺の肩口にラッキーヒットしやがった。
「おおお、当たったカー!」
「くっそ!」
俺は繰り出そうとしたアッパーカットを引っ込めると、すぐにカラス怪人から距離を取る。
「カーカッカッカ。どうだ、俺の力を思い知ったカー」
ラッキーヒットだとは思うけど、ちょっと奴の動体視力や反射速度はあなどれない。思った以上に良い怪人スーツを着ているらしい。
ショルダーアーマーの継ぎ目にくちばし攻撃が入った。
結構痛い。
ポーション飲みたいが今は戦闘中だ。
俺こいつに勝てるのか?
ちょっとピンチになって来たかもと考え始める俺だった。
しばらくこんなペースでの投稿になりそうです。
今後ともよろしくお願いします。




