2話 ヒーロー街へ入る
まずいことになったな。
本当に異世界にきちゃったのかな。
でも草や木は俺の住んでたとことあまり変わらないっぽい。
太陽も1つだし。
まさか魔法とかあるのかな。
文明レベルってどうなんだろう。
銃とかはどうだろうか。しまった、銃の装備はヒーロースーツケースの中だった。今日は剣装備で来ちゃったんだよね。
まずは食べ物探さなきゃいけないね。それと着替え。
スマホがないのは痛い。
あ、ゴブリンどうしよ。ゲーム知識だと討伐証明とか素材があるんだけど。
俺がいた世界ではヒーロー組合に所属してたんでね、そこへ捕まえた怪人や戦闘員を連れて行けば報奨金が貰えたんだけど。
その報奨金で生活していたんだが、俺みたいな低級ヒーローだとヒーロースーツのローン返済を差し引くと、手取りで月収15~18万円と結構ギリギリの生活でしたね。
あ、ローンはどうなるんだろ。
そんなことより目の前の問題だ。
車もないのにこいつら5匹とか持ってけないよな。
ゲーム知識だとゴブリンはたいした物も持ってないようだけど一応ね、探ってみましょうか。
出てきたものはやはりガラクタばかり。あ、でも貨幣みたいなの持っていた。見たこともないデザインで形も不揃い。銅貨と銀貨っぽいのが1枚づつだ。
それを見てやっぱり異世界だと思う。
だけどおろおろするとか不安でたまらないとかじゃない。はっきり言ってウキウキのドッキドキのウッホウッホだ。
小説やアニメのような展開を期待してます、はい。
とりあえず人がいるところに行かないとな。
娘達が逃げて行った方向行けば街があるんじゃねえかと予想して、そちらの方向に向かって歩くことにする。
しばらく行くと道に出た。これはラッキーだな。道に沿っていけばいずれ街にでるだろうからね。
歩く、歩く、ひたすら歩く。
森が見えてきて分かれ道となった。
まあ、右行ってみるか。
森に入りしばらく行くと、いっぱい何やら出てきましたよ。
2足歩行の豚ですね。確かオークとかいうんだったかな。
狩りの帰りなのか、荷物をたくさんもっているね。
その一団が道を横切っている。4人、4匹?。
さっきのゴブリンとは違って身長は人間と変わらないくらいある。持っている武器も錆びた剣や棍棒とかじゃなく、まともな剣っぽい。
なんか勝てる気はしませんね。
とりあえず気づかれる前に隠れる。
気づかれずになんとかやり過ごし後をつける。なんとしても食い物と着替えと飲み水を確保したい。
1時間ほど追跡すると森の中で止まり野宿を始めるらしい。
火打ち石みたいな物で火を起こし焚火を作りだした。そして荷物から肉を取り出して焼き始めましたね。隠れている俺のところまで美味しそうな肉の焼ける匂いが漂ってきましたよ。
これはたまりません!
そういえば何も食べてないし、何も飲んでいない。
食べ終わったのか、そのうち見張り1人を残して眠り始める。
しかも見張りらしいオークも居眠りを始めた。
これは願ってもないチャンスだ。
そおっと近づいて行く。慎重にゆっくりと。
オークまで手が届くとこまで来て、近くにあった荷物に手を伸ばし、それをゆっくりと引き寄せる。
よし! 手に入れた。あとはこっそり気が付かれない様に逃げるだけだ。
ヒーローが盗みをだって?
いやいや、ヒーローだって人間だ。喰わなきゃ死ぬ。
悪い怪人を懲らしめただけだから。
暗い夜の森をなんとか道まで引き返してきた。
よかった。
安全を確認した後、持って来た荷物を開けてみる。
やった、あたりじゃん!
中身は服や日常雑貨や装飾品が入っていた。なんだか高そうな物ばかりはいっているな。いかにも盗賊してきました的な気がするんだが。
服はなんだか中世に出てきそうな服だ。やはり文明レベルはあまり高くはないようだ。
ラッキーなことに巾着袋も入っていて、中にはお金らしい金貨や銀貨に銅貨がたくさん入っていた。
金貨3枚、銀貨8枚、銅貨20枚だ。
どうのくらいの価値があるのだろうか。残念ながら食べ物はありません。その代りワインが入った瓶があったので、今日はそれで我慢だね。
夜は怖いのでヒーロースーツのまま丸まって寝ました。毛布がほしい。
翌朝
お腹が空いて目を覚ます。
空腹はワインでごまかしながら道を進む。
そしてやっと街を発見!
とりあえずオークの荷物のなかの服に着替えてヒーロースーツはバックにしまっておく。
街が見えてから結構歩いたが、なんとか到着しました。
木の柵で囲まれてるんだね。高さ4m位あるかな。
門のところには槍を持った門番が何人かいた。
何食わぬ顔をして通り過ぎようとしたんだが、案の定その内の1人に呼び止められた。
「おい、そこ。通行証を見せてもらえるか」
あ、言葉が解る、なにこの世界。
「え、通行証ですか。すいません、もってないんですけど……」
うは、俺しゃべれるし。
「じゃあ、作るか? 銀貨7枚かかるけど払えるか」
「はい、払えますよ。どうぞ」
金貨1枚を払うとおつりで銀貨3枚が返って来た。
金貨1枚は銀貨10枚の価値なんだと理解。
「街へ入るんならさらに入街税で銀貨3枚だ」
最初に言えよ!
しょうがなくおつりでもらった銀貨3枚を渡し門をくぐり抜けた。
ちなみに通行証の名前の欄には『カイト』と名前だけ記入だ。
中に入るとそこは映画やアミューズメントパークに出てくるような、中世の街並みが広がっていた。
「うわ~すげーよ、本物だよ」
でも想像してた物よりも汚いな。道のあちこち糞みたいのが落ちているし、それが発する臭いも結構強烈だ。
荷馬を引いたり馬車が走ってるんで馬糞なんだろうけどね。
建物もなんか汚いし。
街を歩く人も泥やほこりで汚れたままでも平気で歩いている。
ま、とりあえず食うものがほしい。
キョロキョロすると広場で露店があるのを発見する。
食べ物を売っている露店も多数あるようだ。その中ですぐに食べられるものを売っている店を探す。
定番の串焼肉……はなかった。
でも俺でも食えそうな物発見。リンゴっぽい、いや見た目リンゴにしか見えない。ただスイカくらいでかい。
「すいません、これすぐ食べれます?」
「ああ、もちろん食べれるよ。1個銅貨5枚だよ」
「それじゃあ1個ください」
銀貨1枚渡すと銅貨5枚のおつりが来た。
銀貨1枚=銅貨10枚が判明
早速リンゴっぽいの食べてみましょうか。
シャリシャリ、シャリシャリ。
リンゴだねこれ。
ああでもやっと腹が満たされた。
広場には結構いろんなものが売っている。服や剣や盾に野菜に魚、なんでもありそうだ。
ただ相場が解らないんで高いのか安いのかも判断が付かない。
街中も探索してみたところ露店じゃないちゃんとした店構えの武器屋や服屋もあった。風呂屋もあったのは驚きだ。
そして見つけてしまった。
冒険者ギルド。
なんだこの胸の高鳴りは!
ゲームの世界そのまんまじゃねえか。
恐る恐る中へと入ってみると、まるで銀行みたいなつくりだった。
受付カウンターがいくつかあって、待ち椅子が置いてあり、部屋の隅っこにはテーブル。テーブルにはインクと羽ペンが置いてある。
しかし冒険者らしい人はあまりいない。
勇気を振り絞って受付カウンターに行ってみると、ごつい体格の髭を生やしたおっさんが座っている。他の受付を見渡すが、今の時間はそのおっさんだけらしい。
しょうがねえなからごつい髭のおっさんのところへ行く。
「あの、すいませんが冒険者になりたいんですけど、どうしたらいいですか」
めいっぱい下でに出てやった。
「これ記入、登録料金貨1枚」
ぶっきらぼうに返された。
まあ、気にせず羽ペンを使って適当に記入してみる。質の悪い紙かと思ったら紙ではなく、何かの薄い皮のような気がする。
記入した紙のようなものと金貨1枚を差し出す。
少し待たされた後、冒険者証を渡され簡単な説明を聞かされる。もちろん愛想などなく、ぶっきらぼうにだ。
冒険者証がないと依頼を受けられないそうだ。それと討伐賞金が支払われるのは冒険者ギルドだけらしい。冒険者証を見せれば無料で街の出入りはできる等など。
とりあえず依頼というのを見てみようか。
掲示板に依頼表が張ってある。
掲示板を見てびっくり。
依頼は冒険者が出す仕様らしい。ゲーム世界とは逆だ。
自分の冒険者ランクを書いて働ける日取りを記入。その他に条件などあれば記入して貼る。
雇い主は掲示板を見て冒険者ランクなどや条件を吟味して初めて仕事を依頼する。
人気の冒険者はあっという間に依頼が来るが、駆け出しや評判の悪い冒険者はいつまでたっても仕事が貰えず、結局は条件を低くすることになる。
ゲームの世界とは違うことにちょっと戸惑いました。
ごついおっさんが言うには日の出と共に冒険者は出発するから、この時間は仕事が少ないらしい。
つまり今掲示板に張ってある冒険者は、仕事にあぶれた者ってことだ。
掲示板の隣には買い取り表が張ってあった。魔物を倒した部位が一個幾らになるかを張り出している。
ただし日によっては取り消されるとのことだ。つまり被害が増えたらその魔物が討伐対象となるが、減ったらそれが外されるってことだ。
魔物以外にも薬草の値段の相場や、仕事の内容による賃金相場なども書かれている。
買い取り表によるとゴブリンは角らしい。現在討伐対象で1個銅貨5枚となっている。
オークも角で、こちらは1個銀貨2枚となっている。
とりあえず自分の依頼表を張って置く。
冒険者ランクはFランク、はじめたばっかりなんで最低ランクだ。
仕事の条件には「正義の味方」と書いておこう。
これで準備よし。
やることもないので正義の味方としては、街の外の悪者を叩くことにする。
とりあえずゴブリンだな。
街中で安いパンとワインなどを買って街を出た。
読んで頂きありがとうございました。
本日中に3話目も投稿予定です。
よろしくお願いします。