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13話 ヒーロー助手がデビュー戦




「ルミア!」


 俺は慌ててルミア達のところへと走り寄るのだが、リリーに止められる。


「ルミアも冒険者なんでしょ。だったらこれくらい自分で出来なきゃこの先やっていけないわよ」


 リリーさん、相変わず説得力ありますよね。なにも言い返せませんよ。


「魔物は強さは?」


「大丈夫、グリーンキャタピラーって言うランク外の魔物よ」


 体長50㎝ほどで太さ30㎝の丸々太った芋虫が、時折ルミアに向かって口から糸のような何かを吐き出している。


 それに対してルミアはというと、近づいてはショートスピアを突出し、糸を吐き出されては遠ざかりの繰り返しをしている。つまり攻撃が全然届いていない。

 

「ああ糸吐いてるぞ。ルミアの足に糸が絡まっている……」


 ルミアの足には徐々に吐き出された糸が絡んでいき、歩きにくそうになっていく。


「あの魔物はああやって動けなくして獲物を捕るのよ。特に害はないわ。あとはルミアが動けなくなる前に倒せるかってとこね。まあ、動けなくなってから助けても間に合うわよ」


「ルミア、ダメだったらすぐ言えよ」


 小さな女の子が魔物と戦っている姿というのは、この世界では当たり前かもしれないが、慣れていない俺にしたら見ていて辛いだけだ。


「レッド、だいじょうぶなのじゃ。むうっ、こんな奴、私1人でたおしてみせるのじゃ」


 勇ましい事言ってるけどな、誰がどう見ても形勢不利だと思うんだが。

 だって足、糸だらけじゃねえか。


 両足でぴょんぴょんと跳ねながらショートスピアを突き出す。


 しかしバランスを崩してベタンと前のめりの倒れて顔面を強打する。

 ルミア、鼻血、鼻血!


 そこへグリーンキャタピラーがルミアの頭に糸を吐く。


「んんん~ぐぐぐ、起き上がれないのじゃ」


 こうなったら勝負あったも同然だ。俺が後から芋虫を踏んづけて終わった。


 俺が足に絡みついた糸を解いてやっていると、ルミアは俺に向かって言い訳を言ってくる。


「ちょっとだけ油断したのじゃ。次回はもうゆるさんのじゃ」


「はい、はい、がんばろうな。ルミアには勇気が必要だな。あんな芋虫ちょっと刺せば終わりだぞ」


「レッド、次は本気でやるのじゃ」


 一応リリーに芋虫の素材を聞いたが、そんなもんはないそうだ。

 さすがランク外魔物。


 そして再び俺達は山道を歩き出した。


 少し行くと前方の道の横に馬車が止まっている。よくよく見ると来る時に俺達が乗っていた馬車だ。

 でも止まっているのはその1台だけで、一緒にいた荷馬車と護衛の馬車は見えない。


「リリーさん、なんか様子が変ですよね」


「そうね、こんなところで1台は変よね」


「ちょっと俺が様子を見てきます」


 俺は警戒しながら馬車に接近する。


 間違いなく俺達が乗ってきた馬車だね、見覚えがる。


 血痕の跡が多数あり、馬2頭が見当たらない。


 荷台に載っていた乗客用に荷物はないしどこ行ったんだ?


 そこで草むらにふと目がいった。

 

 人に足の様な物が見える。


 なんかヤバい奴じゃね。うっわ~、見たくねえなあ。


 恐る恐る草むらに近寄ると、そこには想像した通り来る時一緒だった3人、そして馬車の御者ぎょしゃと護衛の合わせて5人が倒れていた。


 5人とも全員惨殺されていた。

 しかも金目の物は一切残ってない。

 盗賊だろうか。でもそれだったら馬車ごと持っていくはず。

 馬だけ持っていったのか?


 とりあえず危険はなさそうなんでリリー達を呼ぶ。


「これは完全に盗賊の仕業ね。この辺で待ち伏せしていたに違いないわ」


「でもリリーさん。護衛の馬車がいたのになんでこんな有様に?」


「荷馬車が一緒だったじゃない。そっちの安全を優先したんじゃないかしら。ああいった荷物の場合わね、運び終わってから料金を支払うのよ。だから盗賊の襲われた時は荷馬車を優先して逃がすのは常套手段じょうとうしゅだんなのよ」


 人の命よりも荷物をとるとは酷い世界だな。


「しかし酷い惨殺の仕方ですよね」


「これはオークの盗賊かもしれないわ。人間ならこのワゴン車も持って行く筈よね。オークは馬車を扱えないのよ」


「オークってどのくらい強いんです?」


 オークは見たことはあるけど戦ったことはないからね。

 見た感じは体格があるんで強そうなんだけど。


「そうね、タイマン張って勝てるようならDランク冒険者の仲間入りってところね」


「リリーさんは倒せるんですか?」


「私は無理よ。オークは私の魔法一発では倒せるとは限らないのよ。次の魔法詠唱までに一撃で倒されちゃうわ」


 それは強い。怪人並みの強さと予想しますよ。

 俺とタイマンだと先に一撃当てた方が勝てるレベルかな。ということはさ、俺はスーツ着てるのにオーク並みの強さくらいしかなく、冒険者ランクでD~Eランクってことかよっ。


 軽くショックなんですけど。


「レッドはオークよりもつおい?」


 ルミアが俺を見てる。あの眼は『俺の方が強い』という答えを待っている眼だ。


「そ、そうだな。正義の味方は最後には必ず悪者には勝つんだよ」


 どうだ、この答え!

 最後には勝つってえのがミソだぞ。


「ひょへぇ~、レッドつおい! 私も正義の味覚なる、正義の味覚!」


 ルミア、食い物じゃねえからな。


「あら、レッド良かったじゃないの。性戯の味覚の助手が出来て」


 リリーさん、なんかすごく悪い意味に聞こえるんですけど。俺を見る目が犯罪者を見る目なんですけど。


「リリーさん、このワゴン車を街に持ってったらお金になりますかね?」


「このクラスだと新品でも金貨250枚はするでしょうから、中古で売っても金貨20~30枚にはなるんじゃないかしら。え、もしかして持って行こうと考えてんの?」

 

 金貨20枚とはすげ~じゃねえか!


「はい、俺が引っ張っていこうと思うんですけど」


「あんたバッカじゃないの。そんなの無理に決まってんじゃないの」


 俺はスーツ着てれば大丈夫だと思うんだけどな。

 ちょっとくらい苦労しても金貨20枚は捨てきれませんよ。こんな機会滅多にないでしょうし。


 俺はリリーがバカにする中、馬の代わりに引っ張ってみる。

 あ、動いた。

 リリーの驚きの表情を見てなんかスッキリ!


「レッドつおい! レッドかちょええのじゃ」


 ルミアは大興奮でワゴンに乗りやがる。ま、いいけどね。


「や、やるじゃないの。そ、そうね4,6でいいわ」


 リリーさんが変な事いってきましたよ。


「はい? 4,6ってなんでしょうか?」


「っく、それなら5,5でいいわよ」


「えっと、これは俺の正当な取得物ですよね?」


「そ、そうとも言うわね。わかったわよ、ふんっ」


 はい、言ってる意味が解りません!





 街が見えてきました。

 いや、街にしてはちょっと小さいね。

 って、いつのまにリリーも荷台に乗ってんの!


「リリーさん、降りてもらってもいいですか。結構重いんですよこれ」


「し、失礼ね! 私そんなに重くないわよっ」


 文句を言いながらも降りてくれましたね。


「あの街が目的地ですよね?」


「違うわよ、あの街の左の方に大きな河が見えるでしょ。あそこよ」


「ってことはこのワゴン車まだ引っ張るんですね……」


「昼食は街でとるわよ。そのときワゴン売りなさいよ。でもちょっと楽でいいわよね。荷物も積めるしね。少し私も考えようかしら」


 馬車とかって高いんだろうな。このボロッちいワゴン車が金貨250枚だからな、馬がついてくるともっと高いんだろうね。

 俺にはそんなの買ってる余裕はねえな。


 異世界来てまでお金に困るとはなあ。ゲームの中みたいにはいかないんだよなあ。リアル異世界苦労するね。



 そうこうしているとやっと湖到着です。


 結構きつかった。ワゴン車は重い。スーツのバッテリーの減り方がやばい。

 1日中スーツ着てるのも結構なエネルギー消費なんで、これは真剣にバッテリーのこと考えないといけないね。

 悪の戦闘員か怪人のスーツからエネルギーパック奪えればいいんだけど、そううまくはいかないよね。この世界に何人飛ばされてるかわからないし。


 湖はこの世界の基準が解らないけど広いんだろうか。対岸まで数百メートルはあると思う。


「リリーさん、ここで何を採取するんです?」


「あ、あれよ、あの傘草かさくさよ」


 リリーが湖のほとりの植物の群生地へ走り寄る。傘状の大きな葉っぱをした背の高い水草がたくさん生えている。


 近くで見ようと俺とルミアがその傘草かさくさに接近すると、一斉にそれらがゆらゆらを動き出す。


「れ、レッド、こいつら動いたのじゃ!」


「その傘草かさくさは攻撃してくるけどちょっと痛いだけよ。ルミアの練習にいいかもね」


 リリーのその言葉にルミアが張り切り出す。


「私が正義の味方を守るのじゃ!」


 いや、それを言うなら「正義を守る」だぞ。

 俺に対しての嫌味にしか聞こえないから。


 ルミアがショートスピアを構えて湖の中をバシャバシャと突進する。


 傘草かさくさの1本が大きくしなって、体を鞭のようにして攻撃してきた。


 それをルミアが姿勢を低くしてかわした――かのように見えたのだが、そうではなかった。

 ルミアはズブズブと湖へと沈んで行った……。


 ルミアの身長では水面まで背が届かなかったのだ。


 俺は急いで駆け寄り、えりを掴んで持ち上げると、口から水をピュ―と吐き出す。漫画か!


「ルミア、俺が肩車するから悪者対峙は任せたぞ」


「コホッ、コホッ、ま、まかせるのじゃ、レッド」


 傘草かさくさの攻撃は俺がうまくける。そしてショートスピアの長さを利用して、ギリギリの距離からルミアが武器を振り回す。

 相手が細い茎と薄い葉っぱなんで、突き刺し攻撃は当たりずらいと思い、ルミアにはショートスピアを振り回せと言ってある。


 そうなると、良く当たること。ルミアの力でも遠心力でこの程度なら2~3度ほどの攻撃で倒せる。ルミアは大喜びだ。なんか俺も嬉しくなってくるな。


 12匹くらい倒したところで魔物は全滅した。


「リリーさん、これの討伐素材はどこです?」


「何言ってるの、討伐対象外よ。魔物ランクとしてはGよ。でも茎と葉っぱは銅貨1枚になるわ。そのかわり根っこは私によこしなさい」


 そういう事ならいいですよ。今回はルミアの練習にもなったしね。


 傘草かさくさを湖から引っこ抜くと、その長さに驚かされる。根っこの長さもあいれると3~4mにも及んだ。

 それが12本となるとワゴン車なかったら持って行けなかったな。


「リリーさん、この根っこっていくらで売れるんです?」


「ど、銅貨1枚よ……」


 あ、絶対嘘だな。目が泳いでるし。


 まあ、今回はしょうがない。

 さあ、もっと採りますか。


 俺は正義の味方助手を連れて湖を巡回するのだった。





読んで頂きありがとうございました。


次回はあたらしい街に入ります。

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