届くことない気持ち
彼女の好きな人は僕とは全くタイプの違う人だ。年上で背が高く、生徒達からの信頼も厚く、頭もいいのだろう。それに比べて僕は彼女よりも背は低いし成績もよくない。
「先生マジかっこいいんだけど」
「そうかい」
いつも彼女は数学の時間になると、テンプレのように言うセリフに、僕もまたテンプレのように、ふてくされながら返す。
「なんて言うのかな~立ち振る舞いというか、オーラ?もカッコイイのよ~」
「なんだよ、オーラってそんなのどうやったら身に着くんだよ」
こうやって彼女の好きな人について聞かされる時間はあまり好きな時間ではない。が横を見ると彼女はすごく魅力的な笑顔に僕は惹かれてしまう。その視線が僕に向いていないことがわかっていても。
「ねえ、ねえってば!」
彼女が僕を呼ぶ声で、はっと意識がもどる。
「もう授業終わってるわよ?」
彼女の言葉で周りを見回すと、賑やかな他愛ない会話が聞こえてくる。
「大丈夫なの?ぼーっとしちゃって、顔色もどことなく悪いわよ?」
「大丈夫、でも一応、寒気するし保健室行ってくるわ」
「ついて行こうか?」
「いや、一人でいいや」
「うん、わかった。お大事に」
彼女が僕を心配してくれている事がどうしても、友達に対する優しさでしか無いことをしみじみと感じてしまった僕は、少し一人になりたくなって教室を出ていく。
教室を出た瞬間に、目眩がして体の力が抜けていく。
「あ、れ?」
僕が倒れ落ちそうになった時、ふわっと体が誰かに支えられる。消えそうになる意識の中、聞こえてきた声は、彼女の思い人の声だった。
「目は覚めましたか」
僕が意識を取り戻すとそこには、さっきと同じの声が耳に入る。
「はい、その、有難うございます」
先生は、安心したように微笑むとスッと立ち上がる。
「軽い貧血なようです。しばらく安静にして、動けそうになったら、教室に戻って大丈夫ですよ」
「はい、わかりました」
「担任の先生には僕から言っておきますね」
「よろしくお願いします」
僕の顔色が戻ったことを確認すると、先生は保健室から出ていこうとする。
「…先生1つ質問して良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
僕は先生に真剣なまなざしを向けて聞く。
「教師と生徒の恋愛ってどう思いますか?」
「そうですね…やっぱり僕は、駄目だと思いますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「いえいえ、お大事に」
そう言って、先生は保健室を出て行った。
1人になると僕はベットに寝転がると少しの間、悔しさで泣き続けた。
書いててすっごい悔しくなっちゃいました。
好きな人の恋も応援できないとか、どうすればいいのか