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勇者クジャンの恋物語 2日目

次の日の朝、旅路たびじにクジャンは来ていた。しかし・・・朝は来ていない。夜のままだ。

ただ腕の時計はすでに朝の8時を現していた。宿屋の主人に案内されてリズの部屋へ行く。

「リズ!おはようー」と、大声で叫ぶ。

「・・・誰?」と、茶色の扉の向こう側からやる気の無い声が聞こえてくる。

「オレっちだよ。クジャンだよ」と、クジャンは言う。

「ああ、クジャン・・・入って」と、茶色のドアは開いた。

リズは赤い水玉模様のパジャマを着ていた。

「リズ、大変だよ。また朝が来ないよ」と、クジャンは言う。

「ええ、そうね。大変だけど・・・私は理由を知っているの」

「え?」と、クジャンは不思議そうな顔をする。

「同じ町に2人以上の魔王が集まると・・・明けない夜・・・宵闇のカーテンが訪れるのよ」

「え、ええええ」と、クジャンは驚く。

「どうしたの?」と、リズは何事も無かったかのように聞く。リズ1人で5人分なのだ。リズにとっては見慣れた事だし、メフィストフェレスに聞いていて今さらである。

「いや、あのさ。このステアの町に魔王が2人もいるって驚くところだよ」と、クジャンは言う。

「・・・そうね。じゃあ、どこに魔王がいるか探してみる?・・・」と、リズは聞く。

「え?いやいや。そんな怖い事できないよ」と、クジャンは言う。

「でもあなた勇者クジャンでしょ。魔王は倒さないと」と、リズは言う。

「うう、そんな事言うなよ」

「あははは、冗談よ。」と、リズは大声で笑った。自分が魔王の1人だと気づいていないなんてね。そうリズは思い、クジャンを見つめる。

「うわわわ・・・今度は何だよ。そんな怖い顔をして」と、クジャンは言う。

「あら。そう見えた?」

「見えるよ」

「あなたに惚れたのかもしれないわよ」と、リズは微笑む。

「え?」

「それも冗談にしましょうか」

「いや、それはホントであってほしいな」

自分の正体も気づけない。相手がとんでもない魔王だとも分からない・・・しあわせね。うらやましい。妬ましい。許せない・・・。

「・・・勇者クジャン・・・ホントしあわせなのね」と、リズはため息をつく。

「何だよ」と、クジャンは言う。

「でも・・・あなたが勇者クジャンでよかったわ」と、リズは笑う。最後の上位契約もこの町で結ぶ事ができるわ。あなたのおかげで。許せないけど・・・大好きよ、クジャン。

「はは、どういう意味だよ」と、クジャンは言う。

リズはクジャンの手を引っ張って自分に引き寄せる。右頬にキスをする。

「こういう意味よ。じゃあ、またね」と、リズは部屋を出て行った。

クジャンは自分の身に起きた事がよく理解できていない。右頬をさする。

「あはは。すげーオレっちすげー。神様いたよ!」と、クジャンは喜ぶ。

クジャンも遅れてリズの部屋を飛び出す。リズがどこに行ったのか、さっぱりわからないが今はどうでもいいのか、クジャンは駆けて行く。宿屋を出て坂を上がり、昨日の岩場へ行く。夜目が効く。

自分が魔王の1人だから夜目が効くとは知らない。勇者だから夜目が効くとクジャンは思っている。

また魔物がいる。岩を主成分としたゴーレムだ。クジャンの3倍はある大きさだ。

ゴーレムの数は3体。昨日よりも2体多い。

「はっはーお前たち運が無かったなー」と、クジャンは叫ぶ。

「壊れて無くなれー」と、クジャンは上段に振りかぶり、打ち下ろす。

ゴーレムは動かない。防御できないわけでも無い。クジャンのロングソードが強いわけでも無い。

クジャンの魔力はたしかに恐るべきモノだが、今の自分たちの召喚主を考えるとわずかなモノだ。

あるじの言葉にゴーレムたちは従う。

<クジャンというモノが来たら・・・壊れてあげなさい>

ロングソードが当たるか、当たらないかのところでゴーレムは壊れた。いや、岩へ戻った。

クジャンは次から次へとゴーレムを岩へ戻していく。

岩場にゴーレムが1000体以上生成されている事にも気づかずにクジャンは去っていく。

帰り道、リズに出会った。

「よ、よお。リズ」と、クジャンは言う。

「あら、クジャン・・・もしかしてゴーレムを退治してきたの?」と、リズは言う。

「ま。まあな。今日はちょっと嬉しい事があったからさ。3体ほど軽くひねってやったよ」

「・・・そう」と、リズは下を向く。たしか1000体いたはず・・・。魔力索敵・・・1000体のまま、また演技に騙されて帰って来たのね。

「何だよ、勇者の活躍を聞いて嬉しくないのかよ」と、クジャンはリズを睨む。

「・・・勇者で調子に乗っているクジャンを好きになったわけじゃないの。勇者として何も知らないで生きられるクジャンを好きになったのよ」と、リズは言う。

「え?ええええ。お前さ、よくそんな恥かしい事を」と、クジャンは後ずさる。

「だって本当の事よ」と、リズはクジャンの顎をさわる。

「あ・・・ちょっと」と、クジャンは目をつぶる。

「・・・バカね」と、リズは左頬にキスをした。簡単に騙されてホントにうらやましい。許せない・・・。

またクジャンはしばらく放心してしまう。

リズはとっくに宿屋、旅路たびじに帰ってしまったというのに。


クジャンはまた果物屋でリンゴを買ってから自宅へ戻って行った。


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