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ムースの女王

今回は短めです。ホラーかなぁ。未熟な作品ですが、よかったらお読みください

 ムースと呼ばれる島がある。世界の北東に位置しており、竜族の住む島として有名だ。トカゲ顔が特徴的でリザードマンと呼ばれる剣士や、小さな翼だが、火炎を吐くワイバーンや大きな翼を持つドラゴン、さらには竜だけが使用できる魔術を操る古代種と呼ばれるドラゴンもいる。そんな島に今、女王と呼ばれる魔女がいる。魔女の名はヴァルス・ウィズ・クライン・・・リスティア・ウィズ・クラインの母親だ。


禁断の書である<魔導の書>を持ち、竜言語を操る。古代種とは不可侵の契約を結び、下位の竜族を力によって支配している。


魔女ヴァルスは朝、起きて魔導の書を開く。手を素早く動かしていちばん後ろのページを見る。


<魔導の書のあるじは魔王の書のあるじより魔力を授かっている>


竜言語の書を手に入れた翌日から使用できるようになった魔導の書。金色に輝き、いちばん後ろのページに赤文字で書かれた文字。今日もヴァルスはそれを眺めている。


魔王の書のあるじがここに来るだろうか。魔王の書のあるじは悪魔との契約通りなら夫のはずだ。夫は私の目の前で死んだ。熊と戦って死んだ。そうだ。何も心配する事など無い。


それにやってきたとしてもワタシには竜族がいる。大丈夫だ。そう、ヴァルスは言い聞かせる。


ノックの音がする。


「起きています」と、竜族の言葉で返事をする。

扉の向こうから

「女王陛下。誠におそれながら・・・あなたの娘様が島に来られました」と、リザードマンの近衛兵の声は告げた。娘?今、娘と言わなかったか?


「もう一度言ってくれ」と、竜族の言葉で返す。

「あなたの娘様が来られました。こちらへ向かわれています。配下の者全員でその両脇に跪き、赤い絨毯をしいて城へ案内しています」

「・・・」バカな!何が起きているのだ。配下の者全員だと?

「陛下・・・久しぶりの親子の会合。どうか起きてくださいませ」と、リザードマンの近衛兵は告げた。

「・・・ワタシの娘である証拠は?」と、ヴァルスは聞く。

「女王陛下が魔法を使用される時、魔力が身体からあふれ出ております」と、リザードマンの近衛兵の声は扉の向こう側から大声で聞こえてくる。

「それとどんな関係がある!?」と、ヴァルスは大声で返す。

「われらは決して読み間違いませぬ。女王陛下と同じ魔力の波動を持つ御方を。尊い御方を!魔力に活かされるわれらであるがゆえに」と、リザードマンの近衛兵はさらに声を張り上げて答えた。

「・・・」あの子がやって来ると言うの?

「陛下。この部屋までお通しする手はずは整っています。」

「何を言っているの!敵かもしれないでしょう!」と、ヴァルスは叫ぶ。

「敵?あの御方が敵?もしもそれが本当ならわれわれは陛下を殺してあの御方に陛下の首を差し出す覚悟にございます」と、リザードマンの近衛兵はゆっくりと低い声で告げた。

「あは。あははは」ヴァルスは寝床から起き上がる。自分には魔導の書がある。そうだ。まだ手はある。

風の魔法を使用して窓ガラスから飛び出せばいい。そうすれば逃げられる。

あの子が。リズがここに来たのだとしたら。それはお茶でも飲みに来た?いいえ。ワタシを殺しに来たのよ。それぐらいわかるわ。


魔導の書を枕の下から取り出して・・・「そうよ。今まで行った事のある場所へ転移する魔法があったわ。たしか146ページに。ラ・ディル・クーレ」と、ヴァルスは唱えた。

魔導の書は反応しない。いつもなら赤く輝き、魔法を発動させる。輝かない。


「嘘よ。うそよーーー。ラ・ディル・クーレ」と、もう一度唱える。

金色に輝く。魔導の書の白紙のページがいちばん後ろに追加される。

また赤い文字で何か言葉が出てくる。


その文字は短かった。


「お母さん、リズです」


「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああ」ヴァルスは声の限り叫んだ。魔導の書を投げ捨て、枕を投げて、シーツをはがして投げて、昨日飲んだコーヒーのティーカップも投げた。ヴァルスは膝を抱えてうずくまる。身体が震えている。涙が止まらない。


風の魔法なら使えるかしら。


「ラ・ヴォレー」そうつぶやいてみる。風が足元から巻き上がる。


使えた。使えたーーーー。ヴァルスは喜び、飛び跳ねる。さあ、これで逃げれるわ。これで逃げれる。


窓を開けて、身体を乗り出して屋根の上に立って、風に身を任せて飛翔する。


城の上空まで来て・・・肩まである黒髪の少女を見つけた。


赤いワンピースを着ている。派手な服だ。


自分と同じ黒髪。今まで何度も見て来た後ろ姿。


少女の周りを囲むように古代種のドラゴンたちが飛んでいる。


竜族の言葉で聞こえてくる。


「われらのあるじに挨拶をしに来たのか。寝巻きとは失礼な奴め・・・それが上位者に対する態度とはな。いや、あるじの母親であるそなたもまた上位者と見るべきなのか」


少女はただ後ろを振り返る。


リズの目は赤く染まっていた。姿は昔のまま。


ほんの少し背が伸びた事以外は。


リズは笑顔で言う。


「お母さん、リズです」


魔導の書と同じ言葉が繰り返される。


もう声も出せない。身動きもできない。いや、させてもらえない。


リズがゆっくりと近づいてくる。リズはヴァルスを抱きしめる。


「お母さん、兄さんのために死んで」抱きしめる腕の力は増していき、ヴァルスの背骨を折った。


<生みの親を殺すという愚かさから、ベルゼブブとの上位契約が成立しました。我が君・・・ベルゼブブは肩甲骨を求めています。ベルゼブブを使用すると背中に黒い翼が生えます。4枚の翼が。あと2体です。我が君>と、メフィストフェレスの声が脳に響く。


「そう。お母さん、さよなら・・・」


血の涙が目から流れる。


私は悲しいのだろうか。わからない




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