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奴隷商人との戦い

リースは起きて寝巻きを脱いだ。それからブラを外して右手で後ろのベッドへ落とす。パンツは脱いでカーテンのある壁に投げた。裸となってカーテンの右側の壁に立てかけてある全身の映る鏡を見る。ベッドの枕の下に隠していた包丁を左手で握った。「兄さんは私のお腹の中にいる」台詞が終わると同時に包丁を腹部に突き刺していた。包丁は奥へ奥へ押し込まれていく。それを派手に抜き取る。血は流れ無かった。怪我したはずの腹部から蜘蛛とムカデが発生していた。

<フェンリルとの上位契約者は身体損失を受けると虫に変化します>と、魔王メフィストフェレスの声が脳に響く。

「ひっ、いやぁあああああああ」と、さらに腹部を突き刺す。さらに虫は増える。

<何もしなければ虫は元へ戻ります、リズ様>と、メフィストフェレスは言う。

「どこにいるのよ」と、リースは目をつぶった。見なければ怖いという事は・・・だが、肌を動く感触は否応なしに伝わってくる。寒気を感じる。包丁を離して、リースは身体を抱きしめた。悪循環から抜け出そうと気持ちを落ち着かせたいのか、深呼吸を始めた。感触が無くなったのと、目で確認してからリースは包丁を床から拾って、今度は右頭部に突き刺した。

「痛みも感じない・・・いよいよ、おかしいわね」と、リースはつぶやき、包丁を抜いて床に落とす。

<ここに。リズ様自傷行為で死ぬ事は不可能です。リズ様が死ぬにはわれら2人に死を与えてくださらないと・・・そしてそれをするにはあと5人と上位契約を結んでいただかないと>と、メフィストフェレスの声は脳に響く。目と鼻の無い白髪の男は燕尾服を着てリースの前で跪いて、頭を下げていた。

<私の人形が2人ほどこちらに来ています>

「人形?人形って何?」と、リースは聞く。

<下位契約者の事です、リズ様>

「そう・・・どの服も着たく無いの。メフィストフェレス、服とか下着とかになる事はできないの?」

<ご自由にリズ様。下着になれと言われたら下着になりましょう。ローブになれと言われたらローブに>

「じゃあ、下着になって」と、リースはつぶやく。リースは黒い下着を身につけた。

それも自動的に。「色も変えれる?」と、リースは聞く。

<お好きな色に>

「青が好きなの。青になって」下着になったメフィストフェレスは青色の下着に変化する。

「きゃ。何?目が見えないわよ」

<リズ様、私、メフィストフェレスを使用いただくと目をいただきます。先ほども申し上げた通り、身体欠損、身体損失は虫変化の対象となりますのでご心配無く>

「そう・・・」と、目の中に数匹の蜘蛛が入って行くのをリースは動きを止めて耐えた。

「おらぁ。来てやったぞ、それとも逃げたかぁ。げははは」と、玄関から誰かの叫ぶ声が聞こえてくる。

<リズ様、フェンリルを呼ぶにはリズ様が起きてから8時間経過している事が必要です。しかし、リズ様がご自分の身体をフェンリルに食べさせるならフェンリルは今すぐにでもやってくるでしょう>

「食べさせればいいのね」と、リースは右腕を肩のところまで上げて、命じた。「喰らいなさい」と、言葉を言い終えると黒き狼はその巨大な顎を大きく開き、閉じた。右腕が消える。

<8時間後には右腕も元に戻るでしょう。またはもっと簡単な戻し方もありますがおススメはしません>と、メフィストフェレスの声は脳に響く。

赤い目をした黒い狼がリースの膝下に現れる。

「フェンリル、私を包むドレスとなって」と、リースは左手で黒き狼の頭を撫でて言う。

<リズ様、フェンリルを使用すると肉を食べなくてはいけません。食べるまでリズ様は飢えます。渇きます。肉を求める狂人となる事でしょう>

「あなたたちの支配は受けない。」そう、リースは言うと左腕にかみつき、食べた。肉を簡単に引きちぎる顎の力にリースは自分でも驚く。左腕の千切れた部分が、ムカデと蜘蛛によって徐々に満たされ、元へ戻って行く。あり得ない事を続けて体験したせいか、嫌がるという事も無く、リースはただそれを眺めた。

黒き狼は黒いワンピースに変化してリースの身を包んだ。

「赤色」リースのつぶやきにワンピースとなったフェンリルは赤へ変色する。

<慣れて来られましたな>

「まあね」リースはやっと歩き出した。自室を出て台所を素通りして玄関につながるドアの前でドアノブをつかんで目をつぶった。

鳥の声が聞こえてくる。ここはベルナンド、森の中の町。メフィストフェレスへの魔王城に行くための中継地点でもある。魔王城と南東にある港町ベルナトスの両方と交流があるため行商人たちの休息場所でもあり、新しい商売をするための始まりの町でもある。

そこまで考えてリースは笑った。

「始まりの町・・・ええ、始めましょう。兄さんを生き返らせる旅を」

そうつぶやいてリースはドアノブを回してドアを開けて玄関に続く廊下を歩き出す。

「出てこねぇなら勝手に上がらせてもらうぜ」と、金髪の男は土足のまま上がる。

「バル。足音がする・・・逃げてはいないようだ。ただ魔素の量が異常だ。それ以上進むのは待て」と、ターバンを巻いて髭を生やした大男は言う。

「カールさん、最悪俺らも逃げた方がいいかもしれない。」と、緑髪の男は2階を見上げて言う

「おいおい。バヌス、いくら何でも逃げる事はないだろ?たった1人に魔王メフィストフェレスと下位契約を結んだ魔術師が2人もいるのに逃げる?どうかしちまったとしか思えないぜ」と、金髪の男、バルは緑髪の男、バヌスを見て言う。

「バル・・・魔素を読み取れないお前には無理な話かもしれないが。おかしいんだ。左側の廊下から迫って来ている魔素の量がオレたちに危険を知らせている。」と、バヌスは腕を組んで言う。「そう、この魔素量はおかしい」と、カールも言う。

「カールの旦那まで。どうしちまったんです?」と、バルは不思議そうにする。

「バル、魔素量が上の相手にはどんな攻撃も通じない。それは俺と喧嘩したお前ならわかるだろ?なら俺たちの言っている意味がわかるな、バル」カールはバルの肩をつかんで、バルを振り向かせて話しかけた。

「へへ。冗談でしょ」と、バルは言う。

「来るぞ」と、バヌスは構えを取って戦闘体制に入る。

「おいおい、バヌス。大袈裟だろ?ほら、見ろよ。小娘1人じゃねぇか」と、バルはおどけてみせる。それからゆっくりとリースに向かって土足のまま廊下を歩いて近づく。

「何だ、何だ?赤い服なんて着ちゃってよお。どこへお出かけする気なんだよ」と、バルは右腕を大きく振りかぶり、殴る体制を作る。

リースはバルの目を見ながら、そこで立ち止まる。

「おらぁ」と、バルは思い切り殴った。リースは顔を殴られ壁に激突する。

「おっと勢い良すぎて殺しちゃったかぁ」と、バルはリースの頭をつかむ。リースは睨む。

「気に入らねぇな」と、バルは再び壁にリースの頭をぶつけた。

血は出ない。普通なら血が出てもおかしくないダメージを与えているはずだ。バルの手に蜘蛛とムカデが這いよる。「うひぃ」と、バルは右手についた虫を叩き落とす。

「・・・」バルは黙った。(カールさんの時と同じ?いや、それ以上に気味が悪い。たった1日で何をしたんだ、このガキ)

「どうしたの、チンピラさん。もう終わり?それならこっちからいくけどいいの?」と、リースは言う。

<リズ様、我らへの命令は念じるだけでも十分です>リースの脳内に声が響く。

「そう。」と、リースはつぶやく。

「ああ、誰が終わりって言ったぁ。これからだよ」と、バルは腰のベルトに刺していた刃渡り23センチはあるナイフを右手に持った。

「死ねぇええええ」と、バルは左手を前に出して相手との距離を確かめながらリースの心臓目掛けてナイフを突き出す。バルも殺しのプロだ。恐怖で本来の奴隷として連れ帰るという任務は忘れてしまったようだが。

バルは左手を引きながら右手を出して行く。冷静だった。何度も練習してきた事だ。バルにとっては・・・。ナイフは左胸に命中した。だが、砕けたのはナイフの方だった。ついでにバルの右手もあらぬ方向に折れて曲がる。

「ぎぃあああああああ」と、バルは右腕を左手で握って叫ぶ。

(フェンリル、食べなさい)と、リースは念じる。赤のワンピースは黒い狼となって、いや、バルには赤い目をした狼の巨大な顎しか見えなかったかもしれない。

バルは喰われた。何1つ残さずに。(肉は私の肉じゃなきゃダメなの?)

<はい、リズ様>

リースは小指を嚙みちぎる。噛みちぎった小指から数匹の蜘蛛たちがあふれ出す。

「に・逃げろーーーー」と、バヌスは叫ぶ。「おう」と、カールは逃げ出している。

(メフィストフェレス・・・あなたの人形でしょう?停止させなさい)そうリースは念じた。

魔王城に訪れるだけで契約できる下位契約者は血を入れ替えるという儀式を通じて魔族の心臓を持つようになる。その心臓は魔王が魔力供給をやめるだけで止まってしまう。

バヌスとカールは死んだ。リースはまぶたを閉じる。まぶたの下からは蜘蛛が数匹這い出して来る。そしてまた戻って行く。リースは目を開けて見えるのを確認してから

(メフィスト、靴も作れる?2人の魔力と、死体で)と、リースは念じる。

<はい。十分な魔素と生贄です>と、返事が脳内に響く。

(作って)と、リースは念じてから玄関の方を見る。

それから傍に来ていた黒い狼の頭を撫でて戻るように念じる。肩まであるリースの黒髪は揺れた。風が吹いている。靴の色は服と同じ赤色にした。「兄さん、いってきます」玄関のところで振り返ってつぶやく。返事はかえって来ない。枯れたと思っていた涙が頬を伝う。リースは我が家に背を向けて歩き出した。

そこは坂道になっていて、左横を見れば聳え立つ山々が見える。リース以外は誰も歩いていなかった。このまま誰とも出会わないままベルナンドの町を出たい。そう、リースは思ったのか。歩く速度を上げた。

奴隷商人たちの死体は生贄に捧げたり、フェンリルが食べたおかげで処理できた。兄の死体は赤い扉と一緒に消えた。証拠すら無い。ほんとに兄は生き返るのか。そんな不安に対して首を振って考えるのをやめる。

いつの間にか坂を下りて、平な道になり、ベルナンドの終わりを知らせる門が見えて来た。

そこには金髪で短髪のレイブンと呼ばれる魔剣使いの剣士が立っていた。

<リズ様、私の下位契約者です。供給を止めますか?>と、メフィストフェレスの声が脳に響く。

「止めないで」と、リースは答える。

<仰せのままに>と、メフィストフェレスは答えた。

「リース・・・いや、本当にリースなのか?」と、レイブンは5メートルほど離れた場所からリースに話かけていた。そう言われてリースは立ち止まり、首で頷く。

「魔王以上の魔素を感じる。何があった?」と、レイブンは聞く。

「兄を食べました」と、リースは答える。直球だった。

「リルルを食べたのか・・・言葉通りだとしたら、赤い扉を開いて魔王と契約したんだな。」と、レイブンは言う。

「知っているのですか?あの赤い扉を」

「リルルから聞かされたからな。父親が死んだ翌日に現れた赤い扉・・・だが、そこから現れた魔王に喰われた、殺された話ばかりだった。俺が調べた情報ではな。だから決して開けるな!そう伝えていたんだがな。まさか開けて生き残るとはな。その魔素量は異常だ。嫌でも魔王と契約したとわかる」と、レイブンは答える。

「・・・私の身体から溢れる魔素を消す方法は?」と、リースは聞く。

「分からないな。何かアイテムは無いのか?」

「あっ」と、リースは口を押える。

「あるんだな」と、レイブンは聞く。

「うん。家に忘れて来てしまったわ」と、リースは駆け足で戻って行く。

<魔王の書はあと5人と契約できると呼ぶだけで召喚できます>と、メフィストフェレスの声が脳に響く。

「そう」と、短くつぶやきリースは走るのをやめない。家に戻り、自室に置いた魔王の書と床に落ちていた包丁を茶色の手提げカバンに入れてから再び玄関へ。するとそこにはレイブンが来ていた。

「2階にリルルはいるのか?」と、レイブンは聞く。

「・・・赤い扉と一緒に消えました」

「そうか。それでどこへ行くんだ」

「兄さんを生き返らせます」

「食べた人間を生き返らせるのか」と、レイブンはそこで目線をそらした。

「ええ、狂っているのはわかります。それでも私はそれしか選べないんです」それだけ言うとリースはレイブンの横を通って玄関を出た。

(魔素の消し方を教えて)

<魔王の書を開き、手を置けばよいだけです>

「そう」と、つぶやいてリースは立ち止まり、魔王の書をカバンから出して開いてみた。

その上に左手を置く。

黒い渦が魔王の書を中心にできる。黒い渦は次第に魔王の書の中へ消えていった。

<次に解放する事もできます。その時は魔王覇気として使用できます。効果は使用すればわかります>

と、メフィストフェレスの声が脳に響く。

「具体的に教えて」

<力の弱い者だとそれだけで死に至ります。全開で放出するか、13段階で選ぶ事ができます。13段階の中には0(ゼロ)という段階もあります。今がこの段階ですが、今の段階だと一般人の攻撃でも血しぶきが上がり、痛みを感じます。>

「そう。わかったわ」と、リースは魔王の書を手提げカバンに入れて歩き出した。

今度こそ誰にも出会わない。リースはベルナンドの門をくぐって港町ベルナトスに続く街道へ出た。

お読みいただきありがとうございました。

ゆっくりアップロードしていきます。

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