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楠の大木
御真影を安置してある壕に入った。
深さ三、四間もあっただろうか
そこには 数名の学生と 事務職員が呻吟していた。
私は もうこれまでだと思い
壕の裏山に よぢ登ってみた。
そこは 元楠などの 大木がはえて
私共の憩の場所であった。
その大木は 放射線状に 東南方向に
葉一つ つけず倒れている。
山を登った 十字架の墓場まできた。
そこに 初めて 二、 三十名の
生命の助かった 学内の人々が 座っていた。
墓石は左右に倒れていた。
教務課の方が ここを去りましょうといった。
私は一心に山を登り
小道へと出た。
私は 途端に意識を失ったのである。