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一瞬の閃光の中で
運命というものが 脳裏を過ぎったのか
胸に締め付けるものがあったのかは
今でも 分からないが
神は 私を自分の持ち場の科教室へと呼び戻した。
外来患者が一名治療に見えておりますと
電話が かかって来た。
明日ともしれぬ日にと 異様な感じがしたが
私は 鉄かぶと巻脚絆のまま
病院に駆け下り
持ち場の助教授室に はいったのである。
鉄かぶとをぬぎ
白い手術衣を 着ようとした時である。
ガラガラガラガラガラ……………… と
奇妙な音が 十秒以上も続いたであろうか
一時耳をすました。
北側の窓である
爆弾が 自分の足元に落ちてきたのであろうか
どうしようかと
しばらく 助教授室を 右往左往した。
北側上空に星光のような閃光が ひらめいた。
途端に グワラ グワラと土壁が落ちてきた
これは全く瞬間の出来事であった。