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習得した魔法を駆使して

 翌朝、俺は宿屋のベッドで目を覚ました。

 カーテンの隙間から差し込む日差しが、昨日程眩しくはない。

 ちょっと曇っているようだ。


 特に理由はないが、昨日と同じ部屋を選んで泊まった。

 まあ、気分だよね。こういうのって。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺は燻製肉と果物を食って、朝から森へと出発した。

 相変わらず素手でリス殺しを続ける。

 いい加減、この作業に慣れ始めてしまっているのが嫌だな。

 早く武器が欲しい。


 そして、その日は朝のうちに300ゴルを稼ぐことが出来た。

 もろもろ合わせて620ゴルが今の俺の所持金である。

 これであればショートソードが買える。

 だがどうせならもっと稼いで、良い武器を買おう。

 それと、昨日宿屋で気付いたのだが、防具も必要になってくるだろう。

 そのために資金は多かった方が良い。



 結局、午前中を全部費やして、所持金は1200ゴルになった。

 これでもかってくらいリスを殺した。

 絶滅していたらごめんなさいだわ。


 町に戻り、武器屋に入る。

 昨日と同じ店員が、俺に気付く。


「おっ、また来たのかい。今度は何か買って帰ってもらうぜ」

「そのつもりだ。ショートソードよりも良い奴で、1000ゴル以内の武器はあるか?」

「稼いできたようだな……それだったらこのシルバーソードだな。ジャスト1000ゴルだ」

「ショートソードよりはリーチが長いようだな……ほかに違いは?」

「強度もこっちの方が上だぜ」


 ふむ。

 武器を扱ったことがないからわからないが、ショートソードを3本買うよりシルバーソードを1本買った方が絶対いいよな。

 武器の使い捨ては、どうも性に合わない。


「よし、じゃあシルバーソードくれ」

「毎度!」


 俺は1000ゴルを払った。

 +300ゴルで、色々付与が付けられるらしいが、今は丁重にお断りした。


「なあおっさん」

「ん?」

「おっさんって魔法使える?」

「基本的なのは使えるが…」

「習得するのにどのくらい掛かったか覚えてるか?」

「俺は脳筋だからなぁ…簡単なやつ一個覚えるのに1か月弱くらいかかったかな」


 おいおい、それはかかりすぎだろう。

 しかしまあ予想通りだ。

 体育教師だって数学は理解できないだろうしな。

 かなり語弊のある言い方だが。


「俺で一か月だ。兄ちゃんなら一週間以内には習得できんじゃねえの?」

「だといいけどな」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺は宿に戻った。

 一応二泊三日で取っているから、まだ部屋は使える。

 俺は部屋で一人、魔法書を開いた。

 

 ここで魔法を覚えてしまおう。

 俺にどの程度魔法の才覚があるのかは未知だが、なぜだか魔法文字とやらは初見で読める。

 だとしたら意外と簡単に習得できるかもしれない。


「なになに?汝、己の魂に刻まれる―――――――」



 俺はしばらくかけて、魔法書を読み切った。

 何やら難しいことが色々と書かれていたが、内容は理解できた。

 勉強は苦手なのだが、こういうのはスッと頭に入っていくようだ。


 読んだ感じ、この本は風系の魔法書らしい。

 魔法書にも色々種類があるようだが、属性ごとに分かれている物もあるんだな。


「えっと、まず手に意識を集中させて―――――――」


 内側から細胞の流動を意識する。

 そしてその意識を、腹から胸へ、胸から肩へ、そして掌に持っていく。

 …ここだ!


「ファース!」


 俺が唱えると、掌から目に見える白い糸のようなものが渦を巻き、部屋中に蠢いた。

 部屋の中の家具や置物が一斉に音を立てて倒れこんだ。

 おおっ!これが風魔法か!


「すげえ、1時間くらいで一個習得出来ちゃったよ」


 あの武器屋、マジで脳筋だな。


 そのあと俺は、部屋に入ってきた宿主のおばさんに、こっぴどく叱られた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 風魔法ファースを俺は完全に使いこなせるようになった。

 町を出て魔物に試してみて気付いたのだが、ファースと言う魔法に攻撃力は無い。

 これは単に、普通の風を巻き起こすという魔法らしい。

 まあ、そんなもんだろうな。


 俺は森の中で座り込み、再び魔法書を読み込む。

 どうせならもっと魔法を習得してしまおう。

 その中に、”ファファース”と呼ばれる魔法が書いてあった。

 掻い摘んでいうなら、ファースの攻撃力有りバージョンみたいな感じだ。

 俺は30分足らずでそれを習得。


「ファファース!」


 木に向かって放つと、木の幹に無数の切り傷が付いた。

 木の皮の破片があたりに飛び散る。

 かまいたち的なあれか。


「これなら…」


 素手でリス殺しをしなくて済むかも!

 俺はさっそく近辺にリスを発見。

 絶滅はしていなかったようで、安心した。


「ファファース!」


 白い風の渦が、リスに襲い掛かる。

 リスは無情にも切り刻まれ、一瞬にして煙と化した。

 儚くも、その場には20ゴルだけが残っていた。


「うっほ!余裕ー!」


 これなら資金は簡単にたまる。

 あとはシルバーソードも試しておきたい。

 俺は腰に携えたシルバソードを抜き、握ってみる。

 宿の部屋で握ったが、外で握るのとではまた全然緊張感が違うな。

 

「よし、俺の腕の見せ所だな」


 別に見せる相手なんていないんだけどな。


 すると、今までずっとスルーしてきた大きな犬を発見。

 ブルドッグが狂暴になったような見た目をしている。

 こちらに気付き、舌なめずりをして見せる。


「ぶっさいくな面だな。斬りおとしてやるよ!」


 ブルドッグは俺目がけて突進して、牙を向ける。

 俺はそれを華麗に躱し、ブルドッグの腹に一撃を浴びせる。

 ブルドッグはいとも簡単に両断され、煙と化した。

 その場には、50ゴルが残った。


「うっわ、余裕だな」


 これはマジで未来が明るく見えてきたな。

 俺は調子に乗って、未踏の森の奥へと足を踏み入れた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ブルドッグとリスを、魔法と剣を駆使して蹴散らしていく中で、短時間で所持金は800ゴルにまでなった。

 明らかに効率が違う。

 やはりしっかり備えをしてきてよかった。


「ウハウハだわ~」


 と、呑気な俺の前に、30センチくらいの巨大な虫が現れた。

 見た目はたぶん、蜂の仲間だろう。

 俺の嫌いな羽音を掻き鳴らして、宙を飛んでいる。


「虫かよ…くっそ気持ち悪ぃ…」


 巨大蜂は俺目がけて尻の針を刺してくる。

 だが動きは遅い。

 俺は針を、剣で弾いた。

 金属音が鳴り響く。


「かってぇ針だな…」


 こうなればやることは決まっている。


「ファファース!」


 魔法を放つが、巨大蜂は風を受けても殆ど無傷だった。

 どうも、羽を上手く使って風の軌道を躱しているようだ。

 昆虫は人間よりも目がいいと言われているから、納得だ。

 最初は狼狽えたが、原因が分かれば怖くない。


「だったら直接剣で勝負だ!」


 俺は自ら巨大蜂に突進。

 そして激しい剣幕を浴びせる。

 傍からどういう風に見えているのか若干気になるが、今はこいつを殺すのが最優先だ。

 そして、やっとのことで羽を一枚斬りおとす。

 バランスを崩したところで、最後の一撃。

 巨大蜂は煙と化した。


「ふぅ~、まあまあ手強かったな」


 手強いと言っても、今までの魔物に比べればの話だ。

 今のところ、戦闘に何ら不自由はない。

 巨大蜂は、銀貨を1枚…すなわち100ゴルを残していった。


「効率的にはまあまあかなぁ」


 その後も俺は次々と魔物を倒し、所持金は3000ゴルにまで達していた。


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