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#3 コンビネーション

 その通路を通り過ぎると、俺は少女を下ろし、マントを元に戻した。

「顔、真っ赤ね……痛くないの?」

 珍しくしおらしい少女の言動に、俺は奇妙な気分に陥った。

「らしくない言葉掛けるんじゃないよ。ホント、らしくない……」

 ちょっと照れくさい自分がそこに居た。

 そこから、少し行くと、今度は、通路と呼ぶのか?と言えるような、床が岩のように凸凹したところに出た。

「これを歩くのは大変ね……」

「でも歩くしかないんだろ?キミの持論で行くと?」

 ちょっとジョークのつもりで言ったのだが、少女はプクッと膨れっ面をした。判りづらい奴だと思ったが、ま、気にせず二人とも先を急ぐ。

 と、途中の岩を越えようとした時、踏んではならない場所だったのか、後方から、ゴゴゴーと言う音と共に、土砂崩れのような砂が俺達目掛けて押し寄せてきた。

「逃げるぞ、急げ!」

 先に進んでいる少女のお尻を押した!

「エッチ!」

「ンな事言ってる場合じゃ無いっつーの!良いから急げ!死ぬぞ!」

 少女は後方を見てやっと把握したらしい、一目散に、岩を駆け上り、そして、駆け下りた。俺達はそれを繰り返し、最後の岩を越えた。その岩は、この通路の天井ギリギリまで高さが有り、それを超えるのには背中とお腹が引っ付くかと思ったが、危険が後ろから迫っていたため、苦にはならない。その代わり、その岩を越えた瞬間ドッと疲れが出た。二人して、背後の岩にぶち当たるドーンという音を聴きながら、岩にもたれかかり、ハアハアと息を付いていたのである。

「凄い仕掛けがあったものだな……死ぬかと思った……」

 息継ぎしながら俺は冷汗を拭った。

「まだこんな事が有るの?もう沢山だわ……」

 流石に少女も根を上げかけた。が、スクッと立ち上がると。

「さぁ〜行くわよ!」

 何も懲りてはいないらしい。まあ、どちらにしても、背後がこれじゃ、戻るに戻れない。進むしかないのだ。

 そこから先は、お決まりのような罠が仕掛けられていた。石畳を踏むたび矢が飛んでくるは、水が押し寄せてくるは……しかし俺達は何とかそれを掻い潜り、罠から命からがら逃れることが出来たのである。

 そして進んだ先の通路の突き当たりで終に、地下への階段。というのか……実際にはそこに通じる穴を見つける事が出来た。


「これは、此処を下りろ。と言う事なのだろうか?」

「それしか無いんじゃない?でも、この穴、どうなっているのかしら?」

 そう、底が見えない分、空恐ろしい。でも、声が此処から聴こえて来る事だけは確かだ。

「ロープが有れば良いんだけれど……」

 そう考えてみても、有るはずが無い。

「それじゃあ、先に私が下りてみる。あなたは後から来る?」

 はぁ〜。何故こんなに仕切れるのか?

「いや、俺が先に行く。キミは、俺が良いというまでそこに待機してくれないか?」

 こういうときのレディーファーストは間違いだ。危険を伴うなら、俺が先だろう。そう思う。

「俺が下で呼んだら降りてきて良いから。気をつけろよ!」

「あ〜ら。格好つけちゃって。良いわ。此処はあなたに譲るから」

 そう言って少女はクスッと笑った。それは、心から笑ってくれたように感じられて、不快な気分にはならなかった。

「じゃあ、行くよ!」

 そう言い残して俺はその穴に脚を入れて中に入った。入ったは良いが、足元が滑る。気を付けながら、足を踏ん張ったが、終に滑ってしまった。

「うわっ!」

 ズルっと滑った足は、俺の体重を乗せてそのまま地下へとそのまま落ちていったのである。

「うわ〜〜〜〜〜〜っ!」

 と落ちた先は、真っ暗な何もわからない場所だった。此処が地下?ドシンとお尻から落ちた俺はその痛んだ箇所を擦りながら、回りを観察した。

「ね〜〜〜大丈夫〜〜〜〜!」

 遥か頭上から、少女の問い掛けが聴こえた。

「ああ、着いたよ!キミも降りておいでよ!ちゃんと受け止めるから〜〜〜!」

 頭上の少しだけ明るく見えるところが穴なのだろうと俺は把握し、そう叫んだ。

 すると暫くして、

「きゃ〜〜〜〜〜っ」

 反響する声が穴から近づいてきて、そして、スポンと落ちてきた少女の仄かな光を頼りにタイミングを掴んで抱き留めた。が、少し失敗して、よろけて腰から床に落ちてしまった。情けないことである。

「あら、上手く抱きとめること出来なかったわね?」

 あっけらかんと言ってのけた少女は、その後お腹を抱えて笑っていた。

「どうも。無様で悪かったな!」

「いえいえ。ちゃんと抱きとめて貰えて助かったわよ!」

 それでも少女はケタケタと笑っている。

「もう、そんなに笑うなよ……それより、早く宝石を見つけないといけないんじゃないか?そろそろ夜が明けるぞ?」

「それもそうね。急がないと!」

 夜が明けるのと同時にこのお城は無くなるのだった。それを忘れる所だった。俺達は……

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