たましい。

「魂ってあんじゃん？」

「ん？　うん。どしたの急に」

「いやね、ちょっと魂について考えてみてるんだけどさ。疑問思う所がいくつか出てきてな。あ、ジュースもう一杯貰っていい？」

「うん、どうぞどうぞ。持ってきてくれたお菓子も開けちゃおうか」

「おお、開けて開けて―。そんでさ、魂っていうか、生まれ変わりってあんじゃん？　あれは一つの魂がサイクルしてるんだろ？　それだったらさ、人の数がやたらと増えることってないんしゃないの？　誰かが死んで生まれ変わるんだからプラスマイナスゼロじゃん。なんで人は増えてるんだ？」

「新しい魂とかが地球におりてるんじゃないの」

「でもさ、占い師が『貴方の魂は作られたばかりなので前世はありません』とか言ってるところ聞いたことないぞ」

「んー…。所詮占いだから、１００％的確とは言えないし」

「新しい魂だとしてもどこで作られてるんだろうな。やっぱ天国か？　新しく作る理由は何だ？　作らなくても十分こと足りてるのに。新しいがあるんだったら古いのもあるよな。魂にも使用期限があるのか？　うおお！　分からん！　もしかして本当は魂や生まれ変わりなんてないのか」

「もしかしたら天国で順番待ちしてるんじゃない？　ほらさ、昔は人の数なんて少なかったし医療も発展してなかったらしいし、すぐ死んじゃう人が多かったみたいだから。災害とかにも未だに弱いしね。そういう人たちが天国に沢山いるのかも。生まれたくても生まれられなかった人もいるだろうしね」

「あー、それはあるかもしれないな。てことは結構な数がつかえてるんだろうな」

「このまま順序良く増えていくとも限らないいしね。災害や戦争なんかが起これば大勢が亡くなるだろうし、少子化なんて問題があるらしいよ」

「一回も生まれ変われなかった魂とかいそうだな」

「あー、いそう。にしてもなんでそんな考え事しだしたの？　レポート上手くいってないの？」

「レポートはまあそこそこなんだけどさ。このままじゃちょっと俺の星やばいかもしれないんだよ。そんで、生まれ変わり制度導入するか考え中」

「マジで？　アイデアは良いって先生に褒められてたじゃん。せっかく褒められたんだからさ、そのままにするわけにはいかないの？」

「できればそうしたいんだけどな。俺の星、天国や生まれ変わりとかの宗教的な考えを無くしてるんだけどさ、そういうの無くしたら死に対する恐怖が果てしなくなってな。医療や防災、事故防止なんかの生命に関わる発展がめざましくなったんだ。そしたら人が死ぬことはかなり少なくなんだが、とんでもない数の人が星に溢れちゃって。そしたらどうなったと思う？　上層部の連中が人狩りなんて始めてな。かなりの数んの人を減らしたんだ。凄まじい勢いで医療が発展し続けたから、何百年も生きられるようになって、子供を産むのにも政府の許可が必要になって、死ぬのが怖いからただ生きて…。なーんか陰気な星になっちゃったんだよな。地獄もないから善良である意味も特になくて、割と犯罪も多くてさ」

「そりゃ大変」

「お前の星はどうなの？　確か天国作ってたよな」

「うん、地球のものを真似してるから先生からの評価はあまり良くなかったけど、結構平和な星になったんだ。僕の星だと天国は目に見える場所にあってね、存在を確信できるものにしたんだ。善人の魂だけが入れる楽園。そういうキャッチコピーで売り出したら天国を目指そうと善を積む人が多くてね。犯罪もゼロって訳じゃないけど少なかったよ」

「良い星で来てんじゃん。問題なさそうで羨ましいぜ」

「いや、そうでもないんだよ。善人は増えたけど、死に対する恐怖がかなり薄れてね。何か嫌なことがあったらすぐに死んじゃうようになったんだ。畑を耕したくない死んじゃおう、恋が敵わない死んじゃおう、親に怒られた死んじゃおう、退屈だから死んじゃおう。くだらない理由で天国が満員になっちゃって。慌てて自殺は罪にしたんだけど、今度はあの手この手で死のうとしてくる人が増えちゃったんだ。崖があるとは思いもよりませんでした、毒だと気付かずに食べてしまいました、包丁を持っている時にまさか転ぶとは。あれは自殺ではありません、事故なんです。なーんてね。本当、呆れたよ。おかげでちっとも発展しないよ」

「なにそれやべえじゃん」

「やばいよ。もう一から作り直したいけど提出日に間に合わないしね」

「それな。いくら将来立派な星作るための勉強といえど、ケースの中で星作ってはレポート書いて、作っては書いて作っては書いて…。もう嫌になるぜ。そもそも先人の神が地球の作り方を記録しなかったのがいけなかったんだよ、なんだよ適当に作ったら出来たって。天才かよ」

「天才だろ。まあ地球より優れた星を作れたら問題ないよ」

「んなことできるかねえ。俺昨日、母ちゃんに星もいいけど彼女も作ったらって言われたよ」

「僕それ別の学科のやつに言われた。あいつ神託科だから勉強すること少ないらしくて、遊びまくりだよ。何しに大学通ってるんだか」

「いいねえ。神っぽいこと言ってるだけで良いんだもんな。そういうやつは就活で困るだろうから、その時に見返してやろうぜ」

「ああ、全く、神様も大変だ」