1話 その4
「ねえ、せっかくだし久しぶりにバトルしない?」
楓が言った。
「バトル?」
「2人の実力を知りたいじゃない」
「そうだな……。あー、でもまたの機会にしよう。今から始めたら下校時間過ぎるぞ」
フクジュがまともな事を言った。楓はちょっと不満そうだったが、大人しく引き下がった。
それからしばらくして。
「お、もうこんな時間か。………そうだ、2人共、生徒手帳持ってるか?今」
「持ってます」
綾香はそう言って生徒手帳を出した。海咲も後ろで出していた。
「ちょっと借りるぞ?」
2人が了承するとフクジュはそれを受け取り、奥の部屋に入って行った。
しばらくすると、フクジュが戻って来た。手には生徒手帳と何かを持っている。
「生徒会室のカギと第2のカードキーだ。オレ達メンバーは生徒手帳に入れている。
ここに来るための道はちょっと複雑だから、帰り道ででも覚えてくれ」
フクジュは少し前、2人を生徒会に誘った時とは打って変わってとても真面目な口調になっていた。
「フクジュ先輩、キャラ変わってません?」
綾香が楓に訊いた。
「フクジュの?あれはね、本人が気付いてない能力よ。
別の人格を作り上げてそれを使いわける……
まあ、外顔と内顔みたいなものね」
楓は本人に聞こえないよう、小声で少しふざけたように言った。
メンバーはフクジュを先頭に第2を出た。
通路は土で、崩れないようにか木の枠がはめてある。
何m置きかにランプがあり、人が通ると自動でつくようになっているらしい。
外から見ると扉には【第2生徒会室】と書かれたプレートが下がっていた。
「来る時はこのプレートを目印にするといいわ。
タイミングを合わせて水樹君と来るのもいいかもしれないわね。
能力で移動するのは基本ここまでで、中までは飛ばないことをルールにしてるわ」
楓が言い終わるとフクジュは歩き出した。
それから少し歩くと壁にくぼみがある所に出た。くぼみは一定の間隔で縦に並んでいる。
「ここを登るんだ」
フクジュを先頭に1人ずつ登った。最後は紫苑だった。
登った所には扉があり、エレベーターになっているらしい。
「このエレベーターは生徒会室の下の教室につながっているんです。
定員は、測った事がないのではっきりとはわかりませんが、4人くらいらしいです」
水樹が言った。
メンバーは2回に分けてエレベーターを使った。
全員が着くと、その教室の壁の1部分を押し、その奥に入った。階段があった。
「この階段は生徒会室につながってるんだよ」
紫苑が言った。
全員が生徒会室に着いた時、フクジュが言った。
「じゃ、今日はここで解散!」
フクジュは言い終わると同時にさっさと帰って行った。
「私たちも帰りましょう。もう暗くなっちゃうわ。
それと、ここや第2にはいつ来てもかまわないわ。
たとえ授業時間中でもね」
楓はいたずらっぽく笑い、言葉を続けた。
「基本は放課後に来ればいいわよ」
そう言って帰って行った。水樹と藤乃はもう既に帰っていたようで姿が見えない。
「海咲、帰ろっか」
綾香が言った。海咲は頷いて、2人は帰路に着いた。