1話 その2
「水樹!なんでオレを残して行ったんだ!」
駆け込んで来たフクジュはいきなり叫んだ。ここまで走って来たのか、息が荒れていた。
「すみません。僕が一度に転送できるのは、僕含めて5人までなんです」
全然悪びれない言い方だった。
「知ってるよ!なんでオレだけだったんだよ⁉」
「考えてみてください」
水樹は間髪入れずに言った。
「藤は仕方ないとして、あと連れて行くための2人で残り1人…で、幻覚使ってる紫苑で……。
オレは足手まといか………」
フクジュはぶつぶつ呟きながら部屋の隅で落ち込み始めた。
「んー、ごめん。もう少し待ってて」
その様子を見た楓が言った。
数分待つと、落ち込んでいたフクジュが復活し、元のテンションに戻った。
「で、君たちは入る気になったんだな?」
「なぜぼく達が能力者集団に入らなければならないんだ?」
海咲が答えた。敬語はなかった。
「能力者?」
綾香が訊いた。
「気づいてなかったのか?」
「うん、全然」
「……ちょっと待て。何で気づいた?」
「気配と今までの会話」
海咲はなんでもないことのように即答した。
「そこがわかっているなら話が早い」
フクジュが少し言葉を切った時に楓が続けた。
「ここはこの学校の能力者が集まってる所なの。
この学校は昔から魔物が出るらしくてね、代々生徒会が守っているのよ。
まあ、まだ出たことはないけれどね」
それを聞いた海咲は小さく呟いた。
「知ってる」
その後、綾香が言葉を継いだ。
「私達が入学してから、もう何度も出てますよ?魔物」
「は?」
「いつ?」
フクジュ、楓が言った。
「今年だと夏休み前。それと、昨日」
海咲が答えた。
「……2人で倒していたのか?」
フクジュが訊いた。
「いえ、海咲が1人で」
少し沈黙があった。
「1人で何回も?」
始めに声を出したのは楓だった。海咲は何でもないような感じで頷いた。
「僕達が気がつかなかったという事は、出てすぐに倒したって事ですよね?」
紫苑が訊いた。
「んー、長い時でも5分くらいだったかな……」
綾香が言った。
「前の代の人は30分くらいかかったって言ってたぞ?」
フクジュが言った。
「30分もかかったら体力持たないんじゃないですか?」
綾香が笑いながら言うと、フクジュが何とも言えない表情で呟いた。
「それはそうかもしれないが」
「5人がかりで30分を1人で5分ね………」
楓が何か考えるように言った。