1話 その1
「お前らを偉大なる生徒会役員にしてやろう!」
ここは高校の屋上。時間は放課後。
海咲と綾香の2人は生徒会長、福寿にそんなことを言われていた。
「・・・え?」
綾香は思わず声を漏らし、海咲は怪訝な表情で福寿を見た。
「もう1度言うぞ。お前たち、つまり福島海咲と桜綾香を生徒会に入れてやる」
「お断りします」
「別に、入らなくていいです」
海咲と綾香がほとんど同時に意味は同じ返答を返した。
「な、なんだと・・・。断るというのか・・・っ」
福寿は大げさな動きでのけぞり、少し間を空けてから叫ぶように言った。
「ちなみに反対意見は認めないのさ!さあやれ!下僕どもよ!」
福寿が叫ぶと、どこにいたのか3人の生徒が出てきた。
「誰が下僕だよ」
「まったく、会長は・・・」
「・・・・・・」
3人はぶつぶつ言いながら出てきた。
そのうち1人が海咲と綾香を見ながら何か呟いた、瞬間2人の視界は闇に沈んだ。
気がつくと2人はどこかの部屋に移動していた。
「生徒会へようこそ。フクジュが横暴でごめんなさいね」
声をかけたのはさっきの会長や3人とは違う人だった。
その部屋にはさっきの3人ともう1人がいた。
会長はいなかった。
「ごめんなさい、強引に連れてきてしまって。フクジュ先輩の指示だったんです」
そのメンバーの中で1番しっかりしてそうな男子生徒が言った。
「あれ・・・?同じクラスの・・・河北君?」
綾香が言った。
「はい。河北紫苑です。紫苑でいいですよ」
「タメでいいよ?」
敬語が気になったのか綾香が言った。
「あ、癖なんで気にしないでください」
紫苑が答えた。
「とりあえず自己紹介をするわね。私は峰楓。フクジュと同じ3年よ。
生徒会では書記をやっているわ」
移動して始めに声をかけた女子生徒が言った。
次に今まで黙ってた小柄な男子生徒が続けた。
「僕は神風水樹です。で、こっちが双子の妹の藤乃。1年です。2人で会計をしています。
あ、藤はあんまり喋ろうとしませんけど気にしないでください」
「・・・・・・」
「僕は一応副会長ってことになってます」
紫苑が言った。
「あ、あと屋上に置き去りにしてきた会長の雨流福寿ね。
はっきり言ってテンションが面倒だけどそっとしてあげて?」
楓が福寿の紹介をした。そういえば屋上でもテンションがコロコロ変わっていた気がする。
綾香が自己紹介を終えると、楓が言った。
「2人とも、これからよろしくね?」
「これから?」
綾香が訊いた。
「あれ?フクジュから言われてないの?生徒会に入るようにって」
「それなら、断りましたけど…」
綾香が答えた。
「まあ、もうすぐフクジュ、戻ってくるだろうからもう少し待ってて。きちんと説明させるから」
楓が言い終えて数秒後、勢いよく扉が開いた。