3話 その3
「訊きたいことがある!」
登校した海咲に福寿が言った。
「なんとなく言いたいことはわかるけど、長くなると思うから放課後でいいか?」
割と強めの剣幕で言われたのだが、海咲は軽く流すように返した。
「まあそれでもいいが・・・
一昨日から気になってるのだからちゃんと答えろよ!」
ということで放課後。第2生徒会室では楓を除く全員が集まっていた。
今日もなにか用事があるとかで授業が終わるとすぐに帰宅したらしい。
「それで、訊きたいこととは?」
全員が座ったところを確認した海咲が口を開いた。
「この間、綾香が使っていた結晶のことだけど。あれってなんなんだ?」
福寿が質問した。
紫苑や水樹も気になっていたようで、興味深々と言った様子で海咲を見ている。
「文字通り、能力を結晶化させたもの」
海咲は答えながらポーチの中から結晶をひとつ取り出した。
見た目は500円玉くらいの大きさで、透き通った乳白色をした石だった。
「能力者であれば石に込められた能力を誰でも使えるようにしたもので、これに込められている能力は修復」
「修復、って言うとこの間壊れた教室を元に戻してた」
「そう」
「触ってもいいか?」
「どうぞ」
許可を貰った福寿がその石を手に取った。
「見た目は水晶みたいだな」
石を透かして見ながら言った。
海咲はポーチからまた石をいくつか取り出した。
乳白色のものだけでなくほかの色のものもあった。
「きいたところ、生徒会のメンバーには攻撃系能力持ってる人がいないみたいだったから渡しておこうと思って持ってきた」
海咲はそう言いながら各人に石を渡した。
「紫苑には防御系、水樹と藤は攻撃系かな。
会長は・・・身体強化が使いやすいと思う。
ただ、自前の能力を使うこと前提だから結晶は補助的に使って欲しい」
「これ、どうやって使うんですか?」
訊いたのは水樹だった。
「手に持って「発動」と言うのが簡単な使い方。
生徒会で能力使っても大丈夫な部屋があるって聞いてるけど」
後半は福寿に向けられていた。
「ああ、確か奥に戦闘用の部屋があるけどなんで知ってるんだ?」
「ここ出身の先輩に知り合いがいる。
生徒会に入れられたって言ったら色々教えてくれた」
「そうか、まあいいや。こっちだ」
福寿は立ち上がり、部屋を出た。